NiziU

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新人グループ・VCHAが不振

 日本で放送された夏の大型歌謡特番にK-POPアイドルが多数出演するなど韓国エンタメの勢いが増す一方で、それとは逆に韓国の大手芸能事務所の株価は大幅な下落傾向にあるという。特に日本人メンバーを含む9人組多国籍ガールズグループ・TWICE(トゥワイス)や全員日本人の9人組・NiziU(ニジユー)、8人組ボーイズグループ・Stray Kids(ストレイキッズ)ら売れっ子を擁するJYPエンターテインメントは深刻で、1年前の最高値に比べると6割も下落したという。いったい何が起きているのか。

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 韓国の芸能事務所に詳しい音楽ライターがこう話す。

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「韓国の4大芸能事務所に数えられるHYBE、SMエンタテインメント、JYPエンターテインメント、YGエンターテインメント、この4社とも株価が下がっていますが、JYPは突出して悪化していて、年初来、約45%減となっています。昨年11月、JYPの顔である“JYパーク”ことパク・ジニョンCOOが人気YouTubeチャンネルに出演し『3年後、5年後のJYPに投資してください』と呼びかけましたが、株価はさらに下落をたどり、投資家の間からは『パク・ジニョンを信じていたのに』と悲嘆にくれる声が続出していました」

 申し訳なく思ったのか、パクCOOは今年1月に約6億円を投じて自社株を購入したが、株価は下落の一途で、昨年第4四半期と今年第1四半期の営業利益はそれぞれ379億ウォン(約44億円)、336億ウォン(約39億円)と証券業界の予想を20%以上も下回ってしまった。

「原因の1つは、1月にデビューした新人ガールズグループ・VCHA(ヴィーチャ)の不振です。米リパブリック・レコードと協業し北米で開催したグローバルオーディションプロジェクト・A2Kから選ばれた北米出身のレクサス、KG、カミラ、サバンナ、ケイリー、ケンダルの計6人で結成されたガールズグループですが、早くも活動の先行きが危ぶまれています。プレデビュー曲『Y.O.Universe』のYouTubeミュージックビデオの再生回数は現在1645万回と好調でしたが、今年1月リリースの初シングル『Girls of the Year』は同878万回、3月リリースの2枚目のシングル『Only One』は同610万と低調傾向。spotifyの月間リスナー数も約38万人という現状では期待外れとしか言えません」(前出の音楽ライター)

 パク・ジニョンCOOは過去に「K-POP3.0時代」を提唱した。国内育成のK-POPグループの海外進出が1.0時代、多国籍グループの結成が2.0時代、メンバー全員を海外出身者で構成し現地のエンタメ企業と協業するのが3.0時代という。

Stray Kidsは「魔の7年」に

 音楽はK-POPのスタイルだが、歌詞は英語や現地語で歌うというのが特徴だ。NiziUはこの「3.0」の方針によって日本人だけで結成したグループであり、VCHAは北米のマーケットを狙って結成されたグループとなる。しかし、オーディション当時の熱気が冷めてしまうと急激に注目度が下降するケースもあり、VCHAでは今年3月に14歳の韓国系アメリカ人・ケイリーが、健康上の問題でしばらく活動を中止するという事態に陥った。

 スポーツ紙文化部記者がこう指摘する。

「TWICEが今年2月から行った世界ツアーのメキシコ、ブラジル、アメリカ公演ではオープニングアクトとして、同じJYP第3本部に所属するVCHAがステージに出演するなど期待の大きさが感じられました。ただ、ウォン安ドル高に加えて販売管理費など巨額の経費負担が発生したため、経営を圧迫しているようです。Nizi Project Season 2から誕生した7人組のNEXZ(ネクスジ)もボーイズグループ乱立の中で今一歩、飛び出せていません。TWICE同様、巨大なグローバルファンダムを持つStray Kidsのカムバックに期待がかかりますが、JYPの中で売上比重が大きいTWICE、Stray Kids以降、次世代を担う大物グローバルスターがいないところが気になります」

 そのStray Kidsもデビュー7年目に入り、再契約をめぐる「魔の7年」を迎える。「魔の7年」とは、韓国ではアーティストと所属事務所が7年間の契約を結んでいることが多く、最終年にあたる7年目に移籍や解散などが多く発生する“ジンクス”をいう。Stray Kidsが仮に再契約したとしても、収益配分の側面でJYPが不利になるとみられている。韓国の証券業界からは「Stray Kidsは下半期に超大型のワールドツアーを計画しておりJYPの収益は回復するだろうが、株価の急落で損失を抱えている投資家は多い。少し株価が上がったところでは戻り待ちの売りに押されるのでは」という予想も出ている。

 JYPは昨年10月、新社屋建設のためにソウル江東区高徳洞の用地を約84億円でソウル住宅都市公社から落札。今年5月に地下5階、地上22階建てとなる新社屋のデザインを発表した。1階には公園まで整備されており、完成すれば世界中のK-POPファンが聖地巡礼に訪れるだろうが、株価の動向次第では“砂上の楼閣”となりかねない。

「TWICEは7月に大阪・ヤンマースタジアム長居、東京・味の素スタジアム、神奈川・日産スタジアムで世界ツアーの日本公演を行います。NiziUも夏の東阪ファンミーティングに加え、8月31日に新潟で開催される夏フェス『音楽と髭達2024-END OF SUMMER-』に出演後、翌9月1日には東京・味の素スタジアムで開催されるエイベックス主催のフェス『a-nation』に出演するというハードスケジュールが組まれています。ファンからは『働かせ過ぎ』という声が上がるほどですよ」(前出のスポーツ紙記者)

 K-POPの世界戦略は見直す時期にきているのかもしれない。

デイリー新潮編集部