トカマク(国際熱核実験炉)の3Dレンダリングイメージ
Image: Shutterstock

20年越しです。

ついに国際熱核融合エネルギープロジェクトの巨大なトロイダル磁石の設計と納品が完了しました。

ITER(イーター)とは、核融合がエネルギー源として実現可能かどうかをテストするためのトカマク(国際熱核実験炉)を建設するための35カ国の共同プロジェクトですが、そのITERのリリースによると、19個のコイルは現在南フランスにあり、この巨大な核融合プロジェクトが、最初のプラズマを生成するための準備が整いました。トカマクは、核融合の反応によって燃料供給される燃焼プラズマを保持するためにトーラス型(ドーナツ型)形状をしています。

トカマクってなに?

核融合は2つ以上の原子の軽い原子核が結合して単一の原子核を形成し、その過程で大量のエネルギーを放出する反応です。重い原子核を分裂させることで、エネルギーと放射性廃棄物を生成する核分裂とは違うものです。核融合は自然界で発生し、星をも動かす反応ですが、地球上では自然には起こりません。

しかし、現在の物理学者やエンジニアたちはトカマクやレーザーを設計して、ラボの中で核融合の実験を行なうことができます。難しいのは触媒作用に必要なエネルギーよりも、多くのエネルギーを生成する核融合反応を促進することですが、理論上はこれにより無限のエネルギーを生み出すことが可能です。

トカマクは、ドーナツ型真空容器の周りに配置された超伝導コイルによる磁場と、プラズマ中に流れる電流との作用によりプラズマを閉じ込めます。ITERのトロイダルフィールドコイル(実験用の磁石)は、摂氏-269度まで冷却され、超電導状態になります。この高さ17mのコイルでは、プラズマがドーナツ型の容器の周りに巻き付けられ、真空容器内の核融合を制御できるようになります。

Illustration: ITER

ITERでは、最大規模のトカマクで、110トンの6つの磁石モジュールから成る中心ソレノイドコイルを備えています。トカマク全体の重さは2万3000トンにもなり、その磁石は地球全体が生成する磁場の約30万倍の強力な磁場を生成します。

プラズマは摂氏1億5000万度、太陽中心部の10倍もの暑さになります。ITERは、来年に初のプラズマ生成を予定していて、初の核融合反応は2035年を予定しています。

ITERは40年前から始まっているが

遡ること1985年、ゴルバチョフとロナルド・レーガンによって提唱されたITERプロジェクトは、2005年に初めて正式に設置場所が決定。そこから約20年が経ちますが、未だにトカマクでの実験は行なわれていません。Scientific Americanによれば、ITERのコストは当初の予算の4倍に膨れ上がり、プロジェクトの総費用は推定で220億ドル(約3兆5300億円)を超えるとか。これには技術的な欠陥やコロナも影響しています。

不都合な真実として、核融合をエネルギー源として利用できるようになるのは、50年先のことだと言われています。それは常に今日の技術を超えたところにあり、まるで手に入れられない元恋人のように「今回も違った」といつも言われ続けています。ITERは核融合の技術的実現可能性を証明することを目的としていますが、経済的な実現可能性は含まれていません。これは別の大きな課題で、核融合を実現可能なエネルギー源にするだけでなく、電力網にとって経済的に実行可能であることが必要です。

核融合はエネルギー物理学の聖杯と言われています。化石燃料への依存の脱却できる手段として大きな期待を背負っていますが、今すぐ気候変動の特効薬になるものではありません。もちろん核融合に期待すべきですし、悲観的になる必要はありませんが、まだまだ時間を要するものですね。

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