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◆熱狂的なファンが多いことで知られる阪神タイガース
 ペナントレースも中盤に入り、連日熱戦が続くプロ野球。なかでも今シーズンの主催試合の観客動員数がもっと多いのが阪神タイガース。日米プロ野球チームの23年における1試合あたりの平均観客数は、ロサンゼルス・ドジャースに次ぐ2位というから驚きだ。

 そんな阪神は熱狂的なファンが多いことで有名だが、そのボルテージが最高潮に達したのが本拠地・甲子園でリーグ優勝を決めた昨年9月14日。相手は宿敵・巨人とあって虎党の方には歓喜の夜となったのは言うまでもない。

 ただし、野球自体に興味のない人にとっては、言い方は悪いがどうでもいいこと。この日、東京から泊まりの出張で大阪を訪れていた菊田雅紀さん(仮名・37歳)はスポーツ全般への関心が薄く、野球も興味の対象外。優勝が決まる大一番なんてことはまったく知らず、兵庫県西宮市内に住む友人夫婦に招かれ、夕食を共にしていたそうだ。

◆朝の通勤ラッシュのような混雑にうんざり

「2人は大学の同期で会うのは約5年ぶり。食事中、『阪神が今晩優勝するかもしれない』という話を聞きましたが、この時はそうなんだ、って聞き流していました。でも、友人夫婦と別れて21時半頃に最寄りの甲子園駅に着いた時、駅構内も電車の中も阪神ファンだらけ。いつも通勤で利用している朝の新宿駅のような混み具合でとにかくスゴかったですね」

 それでも駅や周辺は警備スタッフが数多く配置されており、混雑している割には大騒ぎするファンはあまりいなかったようだ。また、当日は大阪や神戸方面への臨時列車も運行しており、ホームでほとんど待たずに梅田行きの電車に乗車。ところが、その車内で思わぬ光景を目の当たりにすることに。

◆阪神ファンたちが車内で『六甲おろし』を大合唱

「一部の阪神ファンたちが突然歌い始めたんです。しかも、すぐにほかの乗客たちも歌いだして大合唱。その時、目の前で歌っていた大学生くらいの若者と目が合い、『一緒に歌いましょう!』みたいな視線を送ってきたんです。

 でも、私は野球に興味がないので当然歌詞なんて知りません。かといって周りは阪神ファンだらけの完全アウェイな状況です」

◆口パクで誤魔化すしかなかった

「個人的にはこういう同調圧力的なノリが苦手でしたが、変に絡まれるのも嫌だったので口を開けて歌うフリをして場をやり過ごしました。視線を向けてきた大学生はその様子に満足したのか違う場所に顔を向けた隙に背を向けました。ちょうどドア横に立っていたこともあり、それからは外を眺めながら頼むから早く梅田に着いてくれとひたすら願ってました」

 おそらく、車内で彼が聞いたのは阪神の応援歌である『六甲おろし』。同じ車両だったかは不明だが、大合唱する様子を動画付きで投稿したXも確認できた。甲子園発梅田行きの臨時列車であれば、乗客はほぼ全員が阪神ファンだったはずだ。

◆ホテル周辺でも阪神ファンの若者が大騒ぎ

 菊田さんにとってはツイてないとしか言いようがないが、彼の不幸は大阪に戻ってからも続く。なぜなら宿泊先のホテルがあったのは、大阪屈指の繁華街なんば。85年や03年など過去に阪神が優勝した際、一部のファンが“道頓堀ダイブ”を行ったことで知られる戎橋(えびすばし)の近くにあったからだ。

 橋周辺の商店街も人で溢れ、しかも先程の阪神電車のように路上で歌い始め、大騒ぎする若者たちが至るところにいたという。

「人混みをかきわけないとホテルに戻れなかったので、それが大変でしたね。輩っぽいイカつい見た目の若者もチラホラいたため、身体がぶつかって因縁をつけられたりしないように注意しました」

◆眠れないほど騒がしい、阪神ファンの宴

 ホテルの部屋に戻り、ようやく一息つくも客室は低層階だったこともあって外からは窓越しからは深夜まで騒がしい声が。取引先のオフィスから近いことからこの場所にホテルを取ったが、激しく後悔したのは言うまでもない。

「耳栓があればよかったですが、持っていなかったので部屋にあったティッシュを耳に詰めてベッドに潜りました。後日、阪神ファンの上司からは『いい時期に大阪に行けてよかったなぁ』と羨ましがられましたが、その気持ちが理解できませんでした(苦笑)」

 いかにも阪神ならではのエピソードといえばそれまでだが、彼のように野球や阪神に興味のない人間にとっては確かに災難だったのかも。応援していたチームが優勝し、テンションが高くなる気持ちは理解できるが、もう少し周囲に配慮してほしいものだ。

<TEXT/トシタカマサ>

―[乗り物で腹が立った話]―

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。