【現代ビジネス編集部】「これから大会は協会が主催します」...女子プロゴルフ界を揺るがす「大騒動」にスポンサー企業は激怒、選手は大困惑

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女子ゴルフ界を揺るがす大騒動

「めちゃめちゃしんどい4日間でした。正直、自分ではビックリしています。ここからまたスタート。すごく前向きな気持ちです」

ホールアウト後に行われたインタビューでそう笑顔を弾ませたのが渋野日向子(25)だ。

6月2日に行われた全米女子オープンで堂々の2位でフィニッシュした渋野。今季は9試合中6度の予選落ちを経験。昨年の世界ランキングでは前年の40位から98位に急落するなど長期の不調に襲われていただけに、その喜びもひとしおだった。

かつてのシンデレラ・スマイルで復活劇をアピールした渋野だが、ところ変わって日本の女子プロゴルフ界ではそんな彼女も他人事では済まされない問題がくすぶっているという。ゴルフ協会関係者が語る。

「発端となったのは3年前に日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の小林浩美会長(61)が出した日本国内大会に関する指針です。これまで国内でのゴルフツアーはスポンサーである各企業が大会の主催者となり、運営を担ってきました。

一方の協会は主催者側から一定の公認料を受け取ってスタッフを会場に派遣するなど、いわば大会を手助けする立場に過ぎなかった。しかし2025年を目途にこのパワーバランスを一新。協会は自らが大会の主催者権を持つと宣言。スポンサー企業に主催者権を返上するように通達したんです」

つまり今後は企業ではなく、協会が主催者となり、すべての大会を取り仕切るというわけである。関係者が続ける。

スポンサーは大激怒

「構想では、これまで主催者となっていたスポンサーを特別協賛会社に変更。企業は協賛金として3億5000万円を主催者側に支払う計算になります」

これに激怒したのがこれまで主催者として大会を開いてきた各スポンサーだった。

「主催者権を返上しても企業が出すカネはこれまで通り数億円規模にのぼると見られる。この協会の方針には『デメリットの方が大きい』と猛反発。実際、15大会のスポンサーが『主催者権の返上は認められない』と協会側に抗議文を送っています。

国内の女子プロの1年間での大会数は約30ですから、およそ半数が明確に反対姿勢を打ち出している。あまりの逆風に協会側も2年後となる27年まで結論を先伸ばしにしたが、延期の理由についても詳しい説明はなし。スポンサーも協会に対して不信感しか持たなくなっており、両者の溝は深まる一方です」(ゴルフ協会関係者)

もちろん大会に参加するプロ選手、そしてゴルフファンたちにとっても対岸の火事ではない。別の協会関係者もこの状況について危機感を募らせる。

「協会が問題を先送りにしても状況は同じです。企業の中には『特別協賛になるならゴルフは降りる』とすでに腹を決めているところもある。もし、このまま協会が主催者権の返上を強行すれば、急激なスポンサー離れが起きてしまい、ほとんどの大会が開けないという緊急事態に陥ってしまう。

そうなると辛いのは選手たちです。彼女らの活躍の場がなくなってしまっては元も子もない。渋野だっていずれはまた日本ツアーに参戦するはずですから、決して他人事ではないです」

浮上する「大企業の名前」

そんな関係者の心配をよそに現在、業界で囁かれているのが協会と日本を代表する巨大企業によるタッグプランだ。この関係者が内情を明かす。

「協会はそんなスポンサー各社の反応を横目に、大規模ボイコットが起きても耐えられるよう代替えとなる企業探しに奔走。いわば改革の土壌づくりに着手していると言われている。2年後の猶予を持ったのもそのせいです。今、最も交渉に熱を入れているのがソニーグループ。協会内でも新体制の筆頭スポンサーとして噂されています」

ソニーグループの前身となる「東京通信工業株式会社」が創業したのは終戦翌年の1946年(昭和21年)。その後は音楽、ゲーム事業を中心に成長を遂げた、いわずと知れた巨大グループである。

現在では金融、保険、半導体といった幅広いビジネスを展開し、グループでの売上総額は過去最高となる13兆円を記録している。そんな天下のソニーグループと協会が急接近したのは昨年のことだった。

小林会長が描く皮算用

「去年12月、ソニーグループは協会が主催する日本女子プロゴルフ選手権大会の特別協賛企業として契約を結ぶことを発表。55年の歴史を誇る同大会は協会が主催する4大公式大会の1つです。大会の名称も『ソニー 日本女子プロゴルフ選手権大会』に変更。契約期間は24年度〜26年度までです。

契約についてソニーグループの十時裕樹社長(59)は『日本女子プロゴルフの発展を支えている歴史ある大会への特別協賛の機会を得られたことを、大変光栄に感じています。本特別協賛をあらたな場として、今後もスポーツの発展に貢献していきたいと考えています』と協力体制を強調。

一方の協会の小林会長は『ソニー様からの支援により、さらに進化するメジャー大会として発展を目指してまいります』とコメントを発表しています」(ゴルフライター)

この契約を皮切りに協会側はソニーグループの本格参入の絵を描くようになったという。

「協会は、仮に企業各社が一斉にスポンサーを降りたとしても関連会社の多いソニーグループを掴んでいれば、その反動に耐えられると睨んでいる。関連会社を動員すれば複数のツアーの特別協賛企業が穴埋め可能という皮算用です。

当初はこのプランにソニーも前向きな姿勢を示していたようですが、反対する企業の数や問題の余波が想像以上に広がっており、雲行きは怪しくなっているのが実情。しかし、協会側も諦めてはおらず、より強度な関係性を構築していくつもりだそう」(前出・ゴルフライター)

協会の回答は…

果たしてソニーグループの本格参入は実現するのか。日本女子プロゴルフ協会に取材をを申し込むと文書で以下のように回答があった。

「弊協会は、女子プロゴルフ界の永続的な成長と発展を目指すため、JLPGAツアーの全体統括を目指しており、現在、各大会主催者様と継続的に全体説明会及び個別協議を行っているところです。各大会主催者様とのJLPGAツアーの全体統括に関する交渉内容については、秘密にわたるので、回答を控えさせていただきます」

辛くもフェアウェイをキープする協会の思惑。最終ホールはチップインか、はたまたOBか。交渉の行方が注目される。

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