『夏の新ドラマ大集合 THE BET』でMCを務める池田美優と麒麟・川島明(番組公式サイトより)

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“かくれんぼ”といえば、誰しも子供の頃よくやった遊びの1つ。それがテレビ番組でにわかに盛り上がりを見せている。相次いで番組の企画になっているのだ。その背景とは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 24日19時からゴールデン特番『夏の新ドラマ大集合 THE BET』(フジテレビ系)が放送されます。同特番のコンセプトは「7月スタートの夏ドラマやバラエティの出演者が一堂に介し、さまざまな対決の結果を予想して競い合う」。目黒蓮さん、有村架純さん、小池栄子さん、仲野太賀さん、松岡茉優さん、田中みな実さん、山田涼介さんら人気者が集結するため、SNSが盛り上がりそうなムードを感じさせられます。

 なかでも目玉コーナーは“幼稚園かくれんぼ”。「幼稚園に隠れた芸人たちを園児が制限時間内に何人見つけられるか」を当てるコーナーであり、『新しいカギ』で人気の「学校かくれんぼ」のコラボ企画として放送されるようです。

 その「学校かくれんぼ」は15日の放送で初めて中学校で開催されたばかり(過去に中高一貫校はあり)。また、小学校も今年1月13日と5月11日に放送されており、いよいよ学校の枠を越えて幼稚園まで下りてきたことになります。その他でも7月20・21日放送の『FNS27時間テレビ』で“超学校かくれんぼ”という企画が決定。フジテレビ全体で「かくれんぼをフィーチャーしよう」というスタンスが伝わってきます。

 さらに他局でも、テレビ東京が21日夜にゴールデン特番『田舎くれんぼ』を放送しました。こちらは「田舎の村や島を舞台に“ウソ村人”に変装した有名人を制限時間以内に見つけられるか」という企画。田舎ならではの風景や人情、村や島の全体を巻き込むスケールの大きさが見どころとなっていました。

 なぜ令和の今、これほど「かくれんぼ」企画が放送されるのでしょうか。

「鬼ごっこ」の『逃走中』に続く企画

「学校かくれんぼ」が支持を獲得した理由は、主に「あらゆる層になじみがある遊び」「コロナ禍」「SNSでの拡散」の3点。

 まず「学校かくれんぼ」の前に、同じフジテレビで「鬼ごっこ」をフィーチャーした『逃走中』が若年層を中心に人気を得ていました。「かくれんぼ」はそれに次ぐ子どもの遊びをフィーチャーした企画。子どもの遊びながら、誰もがなじみがあり、わかりやすいルールである上に「どちらが勝つか」のハラハラドキドキが味わえる構成・演出が可能です。さらにそれを学校という若者が集まる場所で行い、笑顔や生き生きとした姿を引き出したことで『逃走中』を上回る反響を得た感があります。

 なじみのある遊びであるほか、若者の楽しそうな姿は年代を超えて人を引きつけ、特に親世代からの支持も獲得。結果として民放各局が最も求めるコア層(主に13〜49歳)の全体をカバーできるような企画になりました。

 次に「コロナ禍」は、2020年の春から学生たちは窮屈な学園生活を強いられたほか、学校行事や部活動の大会などが延期・中止になるなどの辛い日々を経験しました。だからこそ友人たちと盛り上がり、思い出作りになる上に、芸人やアイドルなどに会える「学校かくれんぼ」の価値は高いのでしょう。

 また、これは裏を返せば、テレビの作り手たちが「辛い思いをした学生たちを笑顔にしたい」という思いが込もった企画であるということ。テレビ局も営利企業である以上、収益を上げることは前提ではあるものの、それだけではなく社会的な意義も考えて企画を立てるのは当然のことなのです。

「SNSでの拡散」は、利用が活発な若者の支持を得たことによるメリット。「どちらが勝つか」に加えて「どう隠れたか」「どんな学校でどんな生徒か」、さらに「ウチの学校にも来て欲しい」などとつぶやかれるなど、ネット上で拡散されることでヒットにつながりました。

「かくれんぼ」番組の歴史と難しさ

 前述したように「鬼ごっこ」の『逃走中』が一定のヒット企画となり、全体の視聴率以上に若年層の反応がよかったことで、実はフジテレビだけでなく民放各局が年齢を問わずに楽しめる遊びをベースにした企画を考え、放送してきました。

 ドッジボールの『戦闘中』(フジテレビ系)、水上のアスレチック系ゲーム『超水上サバイバル オチルナ』(フジテレビ系)、しっぽ取りゲームの『モノノケハント』(フジテレビ系)、シューティングサバイバルゲームの『THE 鬼タイジ』(TBS系)、さまざまな音楽ゲームを集めた『オトラクション』(TBS系)、実際に移動するすごろく『リアルボードゲーム24』(TBS系)、音を出さないようにミッションをクリアする『音が出たら負け』(日本テレビ系)、壊すことを競うゲームの『クラッシュパーク』(日本テレビ系)などが放送されましたが、いずれも『逃走中』や「学校かくれんぼ」ほど定着していません。

 それ以前でも、昭和時代の『風雲たけし城』(TBS系)、平成時代の『関口宏の東京フレンドパーク』(TBS系)や『VS嵐』(フジテレビ系)などアトラクション型の番組は多く、民放各局にとっては若年層やファミリー層に見てもらう上で重要なジャンルである様子がうかがえます。

 さらに現在も「かくれんぼ」がヒットしたことで、「鬼ごっこ」から続く3つ目の遊びを民放各局のスタッフが探しているという状態。また、単に芸能人がゲームを楽しむだけの構成・演出では難しく、「一般人をどう巻き込んでいくか」が問われているようです。

 実は「かくれんぼ」という企画は今回の『新しいカギ』がはじめてではありません。これまで、家族が家のどこかに隠れる『ココリコミリオン家族』(テレビ東京系)「家族かくれんぼ」、懐かしい有名人を探す『クイズ☆タレント名鑑』(TBS系)「ギリギリ有名人が逃走中」、変装した有名人を探す『変装かくれんぼ 〜ハイド&シーク〜』(TBS系)などが放送されてきました。

「学校かくれんぼ」はグループアイドルや若手芸人の数が増え、若年層に人気がある割に出演費が安く済むなどのメリットがある一方、隠れる技術・美術や、校内の至るところにカメラを仕掛け、人員を配置するなど、相当な労力と予算が必要であり、簡単に模倣できる内容ではありません。「現在も全国の学校から応募が相次いでいる」こともあって、まだまだ快進撃は続くのではないでしょうか。

【プロフィール】
木村隆志(きむら・たかし)/コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。