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 中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。
 ジューンブライドの季節を迎えました。ヨーロッパでは6月に結婚した花嫁は幸せになると信じられています。日本のブライダル業界は、爽やかな気候の春と秋に繁忙期を迎えます。

 コロナ禍で数多くのブライダル企業が大打撃を受けましたが、収益力を高めるチャンスともなりました。業界を取り巻く環境が大きく変化したためです。

◆コロナ禍で営業利益率を高めた会社は?

 大前提として、ブライダル企業の多くはコロナ前の売上水準まで戻っていません。最大手のテイクアンドギヴ・ニーズの2024年3月期の売上高は470億円。2020年3月期は636億円でした。ツカダ・グローバルホールディングは2019年度と2023年度で5.9%、エスクリは15.3%のマイナスの売上差が生じています。

 テイクアンドギヴ・ニーズの売上高は3割近く減少していますが、これはコロナ禍に海外の婚礼事業を売却した影響が大きく出ています。

 エスクリは不採算店の切り離しを進めました。ツカダ・グローバルホールディングは海外事業が回復していません。

 ブラスのように店舗数が多くはない一部の会社は、売上高がコロナ前を上回っています。これは、コロナで延期となっていたカップルの結婚式を施行したことや、退店よりも出店余地が大きかったことが背景にあります。

 つまり、売上成長率やコロナ禍からの回復力で、ブライダル企業を語ることが難しくなりました。

◆「営業利益率」が大きく変化している?

 興味深い数字が本業で稼ぐ力を見る営業利益率。コロナ禍を迎える前と後とで、大きく変化している会社が多いのです。

 テイクアンドギヴ・ニーズは5.6%から9.0%、ブラスは5.4%から8.9%に飛躍的に高まりました。ツカダ・グローバルホールディング、アイ・ケイ・ケイは10%から9%程度で大きな変化はありません。

 苦戦しているのがエスクリ。ブライダル事業の営業利益率は8.8%から6.4%に低下しているのです。

◆ゲストの数は減少するもののカップルの負担は重く…

 営業利益率の変化には原価率が大きく関係しているのですが、その説明の前にコロナ後のブライダル業界を取り巻く環境を見てみましょう。

 大きく変化したのが招待客の人数です。「ゼクシィ結婚トレンド調査2023」によると、2023年の平均招待客人数は49.8人。2020年は62.8人でした。若干の回復傾向にはあるものの、人数はコロナ前の8割の水準にも届いていません。

 ブライダル業界において、婚礼単価を引き上げるキーファクターになっていたのがゲストの数。人数の減少は婚礼単価を引き下げることになります。2023年の結婚式の費用の平均額は356.3万円。2020年は382.6万円でした。30万円近く下がっています。

 ここで注意したいのが減少率。人数は20%近く減少しましたが、婚礼単価の平均額は6.9%の減少に留まっているのです。ゲスト1人当たりの単価に換算すると、2023年は1人当たり7.2万円かかっているのに対し、2020年は6.1万円しかかかっていませんでした。つまり、婚礼単価は下がっているものの、カップルのゲスト1人当たりに対する負担額は増えているのです。
 
◆カップルの要望に寄り添う提案を行うチャンス

 同調査では、結婚式の見積もりよりも実際の金額が上がった理由を調査しています。それによると、「衣裳を追加またはランクアップしたから」が68.9%でトップ。次いで「料理を追加またはランクアップしたから」が68.4%と続きます(複数回答)。

 リクルートは経済産業省に「ブライダル産業の構造転換に向けた調査・分析」という報告書を提出しています。その中で結婚式の多様化が進んだとし、定番型披露宴が下火になってカップルの要望にカスタマイズしたパーティーが増加すると予想しました。