「声帯ポリープ」は“カラオケ好きな人”も発症しやすいって本当なの？ 耳鼻咽喉科の専門医に聞いてみた結果
歌手や声優など、喉や声を使う職業に多いイメージがある「声帯ポリープ」。芸能人のニュースでよく聞かれることから、「自分には関係ない」という人が多いのではないでしょうか。しかし実は、「カラオケが好きな人も発症しやすい」といわれているようで、“カラオケ好き”がどのくらい影響するのかを気にする人も少なからず見受けられます。
そこで、実際のところ、“カラオケが好きな人”も声帯ポリープを発症する可能性があるのかどうか、もたい耳鼻咽喉科（愛知県東海市）院長で耳鼻咽喉科専門医の甕久人（もたい・ひさと）さんに聞きました。
発声法が悪いとリスク上昇
Q.「声帯ポリープ」とはどのような病気ですか。
甕さん「声帯ポリープという病名を耳にしたことのある人は多いと思いますが、一般には『声帯ポリープ』と『声帯結節（せいたいけっせつ）』という疾患を、区別せずに声帯ポリープと総称することが多いようです。
声の使い過ぎや喫煙、風邪などで声帯の炎症・充血が続いている状態のときに、さらに大きな声を出すなどして声帯を傷つけてしまうと、声帯が内出血し、血腫（血豆）となることがあります。その状態でさらに声を使い続けることにより、ポリープに変化してしまいます。これが声帯ポリープで、いわば、血豆が治らなくなったような状態です。声は『しわがれ声』になります。
声帯結節は、左右の声帯が常に擦れ合うことによりその部分が固くなり、プツッとしたイボになってしまう病気です。いわば“ペンだこ”ができる理由と似ており、声の酷使が続いている人にできます。ハスキーな声になってしまいますが、発声を控えることにより、改善に向かいます」
Q.声帯ポリープができやすいのはどんな人ですか。
甕さん「声の酷使が声帯ポリープの原因です。歌手、教員、保育士など、声を使う仕事をしている人は発症頻度が上がります。
この『仕事で声を使っている』点がポイントで、仕事に必要であるがゆえに、声が枯れても声を出し続けなくてはいけないため、声帯ポリープの発生につながります。声のトラブルが出た際に発声を控え、声帯を休ませれば、ほとんどの場合は声帯ポリープまでには至らないのですが、仕事となるとそれがなかなか難しいようです」
Q.「カラオケが好き」な人も、発症リスクが高いといえるのでしょうか。
甕さん「はい。趣味で声を使うことも、ポリープ発生の要因となります。カラオケ好きの人は、発声法が悪いとさらにリスクが上がります。正しい発声を身に付けるにはボイストレーニングが必要ですが、趣味で歌う人にはなかなかハードルが高いでしょう」
Q.声帯ポリープを放置すると、どうなることが考えられますか。
甕さん「声帯ポリープと診断を受けた後に、発声習慣を見直して発声を控えることができれば進行は防げるかもしれませんが、現実的には声を出さずに生活することができないと思われるので、おのずと放置の状態となってしまいやすいでしょう。そうして声帯ポリープが大きくなり、声がだんだんと出なくなることが多いです。
声帯ポリープの症状は、発声の問題だけではありません。ポリープは『声門（せいもん）』と呼ばれる左右の声帯の隙間、すなわち呼吸の通り道に向かって育つため、巨大化すれば呼吸も苦しくなることがあります。発声に不安のある人は、放置せず、まずは耳鼻咽喉科の専門医の診断を受けてください」
Q.声帯ポリープの治療方法とは。
甕さん「声を安静にしていても声帯ポリープが改善しない場合は、手術でポリープを切除します。『ラリンゴマイクロサージェリー』と呼ばれる手術で、全身麻酔下で口から喉へ金属のパイプ状の器具を挿入し、顕微鏡で拡大観察しながら、ポリープの部分のみを正確に切除します。手術後は発声禁止期間があります。頸部（けいぶ）をメスで切り開いて行うような手術ではなく、痛みや出血もほとんどないので、1泊2日で済む場合が多いでしょう。
ただ、まずは予防が第一です。声が出しにくいとき、声が枯れるときは声帯に異常が起きています。それに気付いたときから発声を控え、自分の声帯を守ってください。自分の声は、声帯からのメッセージです。『仕事で声をよく使う』『しゃべり過ぎて声が枯れたことがある』『カラオケで声が枯れる』という経験のある人は特に、自分の声質に注意を払いましょう」
