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 今夏、パリ五輪が開催されるフランスのコンビニエンス・ストアでは日本発祥の「おにぎり」がポピュラーな商品として販売されているが、1個の値段が約850円もするという。日本では100-200円台が相場の〝コンビニおにぎり〟が、これだけの価格になっているということ。それは円安によって、日本から海外に渡航する者たちの負担が増えている現状を象徴している。5月に渡仏したジャーナリストの深月ユリア氏がその実情を紹介する。

【写真】フランスのコンビニでも販売されている「おにぎり」 具は「鮭」など日本と変わらない

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 筆者はカンヌ国際映画祭で日本舞踊を披露するため、5月18-23日にトルコのイスタンブール経由でフランスのカンヌとニースに渡航したが、あまりの物価高に衝撃を受けた。

 トランジット(※飛行機の乗り継ぎ)が14時間ほどあったので、イスタンブール空港内にあるホテルに宿泊しようとしたが、1泊4万円近く(約230ユーロ)ということで断念(※本記事では1ユーロ170円で換算)。日本の相場なら1-2万円だろう。空港内のカプセルホテルに宿泊したが、料金1時間2000円ほど(約12ユーロ)。成田空港に直結しているカプセルホテルなら1時間1500円(以降、毎時間500円)で利用できる。

 カンヌ・ニースではレストランやスーパーの食料品の物価は日本の2-3倍だった。コンビニのミネラルウォーターは500円近く(2.7ユーロ)、サンドイッチは1000円近く(5.5-6ユーロほど)、キャベツやキュウリに卵やチキンも入ったミックスサラダも1000円くらい(5-6ユーロ弱)。平均的なグレードのレストランでも、コーヒーは700円近く(4ユーロ)、ワインやカクテルは1杯約1500円(8-10ユーロ)、メインディッシュやサラダは2000円以上(14ユーロ以上)。コンビニのおにぎりは1個が約850円(4.9ユーロ)もした。レストランの寿司も1貫1000円近い(6ユーロ弱)。

 安いのは果物くらいで、リンゴやバナナはニース中心部にあるスーパーで50-100円(1ユーロ未満)で販売されていた。筆者はニースで最安値となる大人2人で1泊15000円ほどのホテルを見つけたが、それ以外は同条件で1泊2万円以上かかり、カンヌでは1泊10万円以上だった。

 円安の影響だけでなく、EU全体で物価が上昇していることも背景にある。都内の外資系企業に勤務しているスイス人の会社員は「スイスではファストフード店でのハンバーガーセットが2000円くらい、レストランの食事は6000円くらいします。チューリヒのアパートの家賃は30-40万円。しかし、平均手取り収入も120万円近いです」と説明した。

 経済・政治研究家で「世界を騙し続けた詐欺経済学原論」などの著者・天野統康氏は「2022年から始まるユーロやドルに対する円安は継続することになると思います。日銀の量的緩和は続いていますし、政府が推進する新NISAなどによって海外投資が活発化しているのも円安圧力を強めている」との見解を示した。日本で生活する人たちが気楽に海外旅行に行ける日は戻ってくるのか。

(ジャーナリスト・深月ユリア)