F1角田裕毅「不得意なコースはないんで大丈夫」 まだ入賞がないマイアミGP、3度目の正直なるか
NFLマイアミ・ドルフィンズの本拠地「ハードロック・スタジアム」には、フロリダの太陽の光が燦々と降り注いでいる。シーズン序盤の中東ラウンドが肌寒いくらいの気候だっただけに、今シーズン初めて体感する暑さだ。
オーストラリアGPから中国GPまで1カ月近くヨーロッパを離れて過ごしてきた角田裕毅は、一度イタリアの自宅に戻ってチームとともにシミュレーター作業にも勤しんできたが、時差とコンディションの違いに身体を慣らすべく、マイアミにも早めにやってきた。
「時差ボケ対策として早めにマイアミ入りして、友だちも何人かいるのでリラックスしたり、ここはカニが美味しいレストランがあるので、カニを食べたりしてゆっくり過ごしました。部屋でもできるだけエアコンはつけないようにしていますし、こういう暑さ対策もサウナなどでやってきたので、そんなに心配はないですね」
角田裕毅は本来の力強い走りと取り戻せるか photo by BOOZY
ハードロック・スタジアム周辺敷地内に整備されたマイアミ・インターナショナル・オートドロームは、長いストレート2本と中低速コーナーを中心としたサーキット。
しかし、どんなレイアウトであろうと今年のRBは中団トップを争う力があるはずだと、角田は自信を見せている。さらに中団グループの熾烈な争いについていくために、RBもマシンにアップデートを投入する。
「過去5戦を見てもそれぞれ違うキャラクターでしたけど、どこでもコンスタントにパフォーマンスを発揮しているので、ここでも心配はしていません。アップデートは高速・低速含めて全体的に効くはずですけど、特に高速域のほうが効果を発揮するのかなと感じています。ものすごく大きいわけではないですけど、ドラッグは増えていないので、単純にマシン全体としてのパフォーマンスが少し上がっていると思います」
気温は30度、路面温度は50度を超える暑さも、トレーニングを徹底している角田にとっては問題にならない。そして、マシンにとってはアドバンテージになる可能性もある。
【ホンダが貢献しているのはパワーだけじゃない】レッドブルとRBにパワーユニットを供給するホンダ(HRC)の今季型は、従来よりも作動温度領域を高くしており、高温にも耐えられる。それはつまり、車体側に求める冷却容量が少ないということであり、こうした暑いコンディションでもマシンに大きな吸気口・排熱口を開けなくてもいいということになる。
大きな穴を開ければ開けるほど空力性能は失われ、なおかつドラッグ(空気抵抗)になる。だが、ホンダのパワーユニットを搭載する2チームは、その点で大きな優位性を持っていると見られている。
ホンダの現場運営を統括する折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネジャーは、次のように語る。
「今年はこれまでけっこう涼しいイベントが続いていたんですが、気温は29〜30度くらいで今シーズンで一番高いですし、湿度も高めです。今年初めてクーリング的に厳しいレースになるかなと思いますし、今年に向けてやってきたことがここで問われると思っています」
ホンダのパワーユニットが、パワーではなく空力に貢献する。その貢献はなかなか見えづらく、ともすれば"車体性能"と捉えられかねないが、ホンダとしては開発凍結下においてもチームと一体となってマシンパッケージ全体のパフォーマンスを少しでも向上させるべく、やれることをすべてやりきっている証でもある。
「なかなか外からは見えづらいところに効果が出てくるんですけど(苦笑)、たとえばクルマのルーバーの開いている数やボディカウルの開き具合が他チームより少なかったりすると、『ホンダが貢献している』と見ていただければいいかなと思います」
前戦の中国GPではリアのグリップ不足に苦しみ低迷してしまった角田だが、チームとともにマシンの徹底的な調査を行ない、おおよその原因は推測できる状態になったという。
原因は何かひとつ大きな問題があったわけではなく、セットアップ面やドライビング面、アプローチの仕方などさまざまな要素が絡み合った結果、陥ってしまった状況だったようだ。
【中国GPは負のスパイラルに陥ってしまった】角田はこう説明する。
「中国GPからここまでの間に、チームはかなり時間をかけてデータを分析して調査をしてくれたんですが、上海でそれまでと同じようなパフォーマンスを発揮できなかった原因は、まだ完全に究明できてはいません。
でも、いくつか(問題が)見つかっていますし、自分としても改善できるところがあったと思います。要素はひとつだけではなくて、いくつかの要素が重なっての結果だということは確認しています」
中国GPはスプリント週末という走行時間が限られるなかで、FP1がうまくいかなかったことで負のスパイラルに陥ってしまった。その反省点は自分自身にもあり、同じくスプリント週末のマイアミでは同じミスは犯さないと角田は言う。
「最初にうまくリズムを掴めないと負のスパイラルに入ってしまうので、今週も(中国GPと)同じ状況に陥りたくはないですし、どんなふうに(スプリントの)レース週末が流れるかリズムは掴めたので、それをさらにクオリティよくまとめていきたいなと思います」
今の中団グループでは、0.1秒でポジションがいくつも違ってくる。それがコンマ数秒ともなれば、中団トップ争いから最下位争いまで落ちてしまう。それが中国GPの予選19位という結果だった。
モノコックは開幕から交換していないため、チームメイトのダニエル・リカルドのようにそれが問題の原因とは考えていない。決勝でのマシン回収時にマーシャルが落下させてしまったことによる影響も、車体側・PU側ともに関係なかったことが確認できているという。
「気持ちをリセットして、マシンのことはエンジニアに任せて、僕はメンタル的にいつもどおりの状態で、マシンではなく自分自身のことに集中して戦えるようにできればと思っています。今週は間違いなく上海よりもいい仕事ができると自信を持っています」
初開催の2022年は12位、2023年は11位。まだ入賞がないマイアミでの戦いだが、角田の自信に揺るぎはない。
「僕は、不得意なコースはないんで大丈夫です(笑)」
気持ちをリセットし、伸び伸びと角田本来の走りで、上海の流れを払拭してもらいたい。