超有名な日産「R34GT-R」が盗難!? 約3週間後に「無事発見!」 輸出間際の「コンテナ」で発見、盗難からの経緯とは

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ハミルトンも運転した「わナンバー」の34GT−Rが野田市内で盗難

 2024年1月31日未明に千葉県野田市で盗難被害にあった日産「スカイラインGT-R(BNR34)」(以下R34GT-R)。
 
 無事発見に至り、3月18日に所有する「おもしろレンタカー」の元へ返還されました。

山手警察署で所有者に引き渡される場面(撮影:加藤博人)

 おもしろレンタカー所有のR34GT-R盗難から約3週間を経た2月20日午後、横浜港の保税区域にあるコンテナ内にて発見されたという連絡が山手警察署から齊藤社長のもとに届きました。

【画像】「えっ…!」これが盗難された「R34 スカイラインGT-R」です(30枚以上)

 山手署によると、輸出関連の書類に不審なところがあり大型X線検査装置に入れたところコンテナ内に2台の車両があることがわかったとのことです。

 大型X線検査装置は平成12年度に横浜港で初めて導入され現在は全国15ヵ所(13港)に配備されている装置です。

 今回のR34GT-Rは海外に密輸される直前の水際検査で奇跡的に発見されたことになります。

 バラバラに解体されることなくほぼ完全なクルマ(以下、丸車)の状態。なお細かく言えば、後ろの窓が割れていたり、ブレーキのキャリパーがなかったり、ローターがなかったりナンバーはもちろんはずされていました。

 そのGT-Rの引き渡しが3月18日、発見されたふ頭とは別の場所で行われ、おもしろレンタカーの齊藤社長の元に戻ってきました。

 今回の盗難被害について、齊藤社長は次のように話しています。

「1月末に車両が盗難されて相当時間が経過しておりましたし、ヤードに入ったら即解体、切り刻まれて部品でバラバラにされるケースが多いと伺っておりましたので、時間の経過とともに、発見されるかもしれないという考えはなくなっていました。

 R34GT-Rは弊社のレンタカーの中でも一番人気であり、たくさんの世界中のお客様を笑顔にしてきたクルマです。

 某F1選手が東京近郊で乗り回したり、イベントで映画グランツーリスモのモデルとなったヤン・マーデンボロー氏に運転していただいたり、色々な思い出のあるクルマでしたから盗難されたときのショックは非常に大きかったですね。

 それがまさかの発見。しかもバラバラにされることなく、ほぼ完ぺきな形で発見され無事に戻ってきたことは大変嬉しく思います。

 しかし、多くの盗難車が悲しい結末を迎えていることを聞いていたのでR34GT-Rが見つかったことに対し手放しで喜ぶことができません。

 発見いただいた税関、警察には感謝の気持ちでいっぱいです。本当に紙一重であったと思います。盗難のなくなる社会になってほしいと切に願います」

大型X線検査装置は平成12年に横浜港で最初に導入された(写真はイメージです)(出典:税関ホームページ)

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 なお、同じコンテナの中からはほかにも同時期に盗まれたスカイラインR34GT-Rが丸車の状態で発見されており、こちらもオーナーに返されました。

 盗難されたクルマが、解体されることなく発見されるのは非常にレアケースですが、さらには車台に刻印された車台番号も判読できたそうです。

 犯人の逮捕にはまだ至っていないようですが、今回はどのような経緯で盗難被害にあったのでしょうか。

独特のRB26サウンドが聞こえてきて、即、追跡開始!

 1月31日の未明に野田市内のホテル駐車場にて盗まれた34GT-Rは前日から海外観光客が利用していました。

 30日夕方からおもしろレンタカー野田本店でレンタルし、東京都内をドライブしたあとホテルに戻ってきたのが31日午前0時40分頃。

 翌朝8時半頃、部屋を出て駐車場に止めていたはずのR34GT-Rがなくなっていることに気づいたといいます。

 おもしろレンタカーではすぐに野田警察署に被害届を出すとともに、SNSで盗難されたことを拡散し目撃情報を募ります。

 そして、その日の夜10時頃、最初の目撃者「くーさん」が現れます。

 くーさんは「34」→「38」にナンバープレートの数字が変えられていたR34GT-Rを目撃し、追跡し、撮影した写真をSNSにあげました。

 その後も茨城県土浦近辺で数件の目撃報告があったそうですが、写真や動画などが撮られたものはなく、曖昧な情報が多かったといいます。また、中には完全に愉快犯と考えられるニセの目撃情報もあったとのこと。

 筆者は目撃者である茨城県坂東市在住のくーさんと共に数キロにわたって犯人を追跡したルートをたどりながらRB26のサウンドで気づいた時からの話を伺いました。

レンタカーのR34GT-R盗難されたことは、SNSで拡散されていたので知っていました。

 うちの近所だったことでもあり注意していたのですが、盗まれた日の夜、自宅にいたときにRB26独特のサウンドが聞こえてきたんです。

『え?もしかして!』と思って、やはりクルマ好きの母と一緒に急いで外に出てみたところ、なんと目の前を白いR34GT-Rが通り過ぎていきました。

 うちの前の道は舗装されている道と砂利の細い道があるんですが、そのクルマは砂利の道をかなりのスピードで走っていきました。

『これは絶対にSNSに出ていた盗難車だ!』と思って無我夢中でミラターボに乗って追いかけました。

 もう1台別のクルマ(レクサスのセダン)がR34GT-Rの後ろを走っていたので2台1組で行動していたと思います」

R34GT-Rが山手警察署で引き渡された(撮影:加藤博人)

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 くーさんは5、6km追いかけたものの、野田市目吹の交差点で犯人が乗るR34GT-Rが赤信号を突破したためそこで見失いました。

「地元の人しか通らないような細い道を何のためらいもなく、ウィンカーも出さずに曲がっていったので普段からこのあたり(野田周辺)を走っているのだろうと思いました。

 USS東京(国内最大級の業者オークション会場)方面に走っていきました」(くーさん)

 自動車盗難の認知件数はピークだった2000年初めから2021年まで減り続けていましたが、2022年以降は毎年増え続けており、2023年には全国で5762台が盗難被害にあっています。

 2023年の全国ワースト1位は千葉県(746台)で検挙率はわずか25.5%(全国平均42.7%)。

 それらの多くはコンテナにて不正輸出されていると考えられますが、税関での摘発は2022年で1台、2023年で5台、パーツも同じく11件と21件とわずかな台数です。※パーツは点数でカウント

 これまで取材してきた自動車盗難の被害者からは「警察がまともに捜査してくれなかった」という声が多く上がっています。

 しかも税関でのコンテナX線検査も全数が受けるわけではないため水際での摘発件数も悲惨な数字となっています。

 このような状況でR34GT-Rがコンテナの中から見つかったのはまさに奇跡としか言いようがありません。