部下のやる気を高めるためにはどんな声かけをするべきか。クロスリバー代表の越川慎司さんは「多くの上司が『最近どう?』という声かけをしているが、調査によるとむしろモチベーションを下げてしまう。『調子どう?』という声かけも悪くないが、一流のビジネスマンはさらに踏み込んだ声かけをしている」という――。(第5回)

※本稿は、越川慎司『時短の一流、二流、三流』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

■「1on1」の業務報告は部下のモチベーションを下げる

1on1の時間は、多くのマネージャーとリーダーにとって、「時間がかかるけど重要なコミュニケーション手段」ととらえられがちです。しかし、本当に効果的な1on1の進め方、そしてその「時短」について考えたことはありますか? 本稿では、1on1の際にありがちな失敗と、その解決策をご紹介します。

1on1の際に、一方的に話すリーダーがいます。しかし、管理職が新人との1on1で、ほとんど自分が話して終わってしまっては、新人には何も伝わりません。具体的な指示、プロジェクトの方針などを伝えても、新人はただ聞くばかりで当事者意識を持てません。管理職は「しっかりと伝えた」と安堵(あんど)するかもしれませんが、新人は自分の声が届かないと感じ、徐々にモチベーションを失っていきます。

「自分が話す時間と聞く時間はほぼ半々」というバランスを保つ人もいます。あるリーダーは若手メンバーとの1on1で、自分も話しつつ、相手にも話をさせようと心がけていました。ただし、リーダーが話す内容は、主に業績やKPIに関することがほとんどです。メンバー個人の成長や問題点にはあまり触れなければ、個々の成長が見込めません。

218社6785名を対象にした調査により、1on1で業務報告だけをすると、メンバーのモチベーションが大幅に下がることが分かっています(*1)。

(*1)クロスリバー社調査、2021年5月〜2023年3月

■部下に7割話させた方が時短になる

一流は、相手に話す主導権を与えます。会話の7割は、部下や後輩に譲るのです。相手が話している間は、高い集中力で相手の言葉をしっかりとキャッチし、短い質問や確認で会話を深めていきます。このプロセスを通じて、リーダーはメンバーや後輩が持つ問題意識や思考パターン、そして感情まで理解することができます。

特筆すべきことは、相手に7割話をさせた方が、時短につながるということです。部下や後輩自身が自分で考え、自分で話すことで、内省を促し課題が明らかになります。そしてその課題に対する解決策も、部下や後輩が自ら考え実行することが多くなるのです。こうして自律型メンバーが増えていけば、自走するチームとなります。

詳細な指示や細かいチェックを行わなくても、メンバーたちが自発的に行動実験を繰り返し、成功に近づいていくため、管理負荷が減るのです。その結果、リーダーは具体的な行動計画を練る時間を大幅に短縮できます。この方法は、1on1だけでなく、普段の会話でももちろん有効です。相手に話をしてもらうことで、部下や後輩の成長、組織の効率向上、そして上司・リーダー自身の管理能力を高めることができます。

一流は、相手に7割話をさせて、内省を促す
自分で考え自分で行動するチームを作れば管理負荷が減る

■「最近どう?」と聞くのはNG

気軽なコミュニケーションにおいても、言葉選び一つで、部下や後輩のモチベーションは変わります。ただ、部下や後輩のモチベーションを上げるのは容易ではありません。よかれと思ってかけた言葉でガッカリさせてしまうこともあります。

また、パワハラと言われないように、上司側が気を遣いすぎて会話が減ることもあります。どうしたら、双方が気持ちよくなるコミュニケーションを取ることができるのでしょうか。

「最近どう?」、この言葉は日常的に多く使われる一方で、実は効率の悪い声かけであることが1.9万人の調査結果で明らかになりました。この声かけで、部下のモチベーションが下がってしまうのです。また、これだけでは部下や後輩の具体的な状態はまったく分かりません。例えば、プロジェクトが破綻寸前であるとしたら、この質問に対する答えは改善にはつながらないでしょう。

相手の体調に気遣って「調子はどう?」と声をかけることは多いでしょう。部下や後輩が、自分の状態について考えるきっかけを与えられるかもしれません。しかし、まだまだ表面的な情報しか得られない可能性が高いです。

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■一流は「具体的な感謝」を伝える

一流は、「先週水曜はサポートしてくれてありがとう」と声をかけます。このように、具体的な日時と出来事に言及するのです。この方法は非常に効率的であり、部下や後輩も具体的な状況や行動に対するフィードバックが得られるため、次に何をすればよいのか、どのように改善すればよいのかが明確になります。

この一言はただの感謝の言葉ではありません。それは一つの短いフレーズで多くの情報を伝え、状況を確認し、そして最も重要なのは、相手に対する評価と感謝を行っていることです。日常的にこのようなコミュニケーションを繰り返すことで、部下や後輩との信頼関係を築き上げることができます。

信頼関係を築くことができれば、それがさらなる時短につながります。信頼された部下や後輩は自分から積極的に行動し、リーダーが求める結果をより早く、より高い水準で達成するからです。一流のリーダーが「時短」に成功しているのは、その優れたコミュニケーション能力と深い洞察力に起因します。自分のことばかり考えず、相手に興味関心を持って接していれば、不要な声かけはなくなります。

写真=iStock.com/AmnajKhetsamtip
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相手のどういった点を具体的に褒めるべきかを明確にしてから、対話をしてみてください。具体的な「ありがとう」によって、良好な関係を築いて共創パートナーとして課題を解決していくことができます。ぜひ明日から具体的な感謝で会話を始めてみてください。

一流は、具体的な感謝を伝える
すべてのコミュニケーションは相手に興味関心を持つことからスタートする

■「ダ行」をよく使う人は非効率

実は、話す言葉を変えるだけで、時短を叶えることができます。

我々クロスリバーでは、39社のクライアント企業に協力してもらい、2.1万人の発言の履歴を調査・分析しました。会議室にカメラを置いて録画したり、オンライン会議の録画データ2.8万時間を解析したり、メールやチャットの文章を解析したりと、あらゆる情報を人間の力とAIを使って分析しました。

ダ行に多い「だけど」「でも」「どうしても」といった否定語ばかり使っていると、議論が進まなかったり、ときには人の反感を買ってしまったりして、物事がうまく進みません。「お疲れ様です」、「ありがとう」、「いつも」といった言葉で話を始めるのが一般的でしょう。2.1万人の調査でも、こうした「ア行」で話し始める人が多かったです。

こういった、礼儀としての「お疲れ様」や「ありがとう」はもちろん重要です。しかし、残念ながらそれだけでは圧倒的な成果を残すことはできません。

605社を調査すると、タスクの7割以上が同僚からの協力が必要であることが分かりました。限られた時間で突出した成果を出すためには、挨拶以上の何かをしないと他人を気持ちよく巻き込むことができません。

■一流は「サ行」を使う

一流の人が、話し始めによく使うのは「サ行」です。具体的には、「そうだね、さらに、そもそも、素敵だね、素晴らしい」といった言葉です。サ行で始まる言葉は、多くの場合深みを持っています。

越川慎司『時短の一流、二流、三流』(明日香出版社)

例えば、「そもそも、このプロジェクトの目的は何でしょう?」と問いかけることで、会議の全体像を見つめ直すいいきっかけを作ることができます。実際、評価上位のリーダーが仕切る社内会議では、前半に「そもそも」という発言が入る確率が他のリーダーより高いです。また、アイディア出しの会議、いわゆるブレーンストーミングでは、「さらに」が使われるといい案が出やすいことが分かりました。

18社で行われた新規商品に関するブレーンストーミングを記録し分析すると、のちにヒットする商品の企画は、誰かの「乗っかりアイディア」であることが多いことに気づきました。「これまでの半分の大きさに……」というアイディアに乗っかって、「さらに小さくして一口で食べられるようにしてもいいのでは」と発言したものが具現化されてヒット商品になったという感じです。

■最初のひと言は「そうだね」で始めるべき

試しに218社で、課題解決会議の前半では「そもそも」を使い、ブレーンストーミングでは「さらに」を使うのがいいとアドバイスしたところ、実際に発言した人の71%が何かしらの効果があったと答えました。「そうだね」で始める会話は、相手の意見や感情に対する共感を示す素晴らしい手法です。これによって相手は自分が理解されていると感じ、心を開きます。

「そうだね」は意見を出してくれてありがとうという意味の反応であり、それを採用するかどうかは別と考えるのが一流です。「そうだね」でまず反応して、その後に評価軸を決めて決断するのです。「そうだね」のファーストリアクションによって、結果的に多くの意見を引き出すことができます。

言葉はただのツールではありません。一言目の印象が、その後に与える影響は計り知れないほど大きいのです。

一流は、サ行で話し始める
相手のことを考えて、協力を得るための言葉を選ぶ

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。
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(株式会社クロスリバー代表 越川 慎司)