サモアを破りファンの祝福に応える日本代表(写真:AP/アフロ)

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ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会1次リーグD組第3戦が2023年9月29日(日本時間)、トゥールーズで行われ、世界ランク13位・日本が同12位サモアを28−22で下した。日本は2勝1敗とし、自力での決勝トーナメント進出の可能性を残した。

フィジカルの強さを誇るサモアを破りベスト8へ夢をつないだ日本。接戦を制した要因はどこにあったのか。元日本代表で15年W杯イングランド大会に出場した経験を持つ藤田慶和氏(三重ホンダヒート、30)は、J-CASTニュースの取材にサモア戦勝利の要因と、10月8日のアルゼンチン戦に向けての課題を挙げた。

「サモアはやりたいことが全くできなかった」

試合は日本が前半13分にFLピーター・ラブスカフニのトライで先制し、SO松田力也が冷静にゴールキックを決め7点を先制。前半25分にペナルティゴール(PG)を許し4点差とされるもその後PGとトライで突き放し前半を17−8で折り返した。

後半9分にはラインアウトからモールで押し込みNO8姫野和樹がトライ。同16分には松田がPGを決め25−8と突き放した。10点差に詰められた後半35分に再び松田がPGを決め、後半38分にトライを奪われるも6点差をつけて勝利した。

藤田氏はサモア戦勝利の最大の要因としてディフェンス力の高さを挙げた。

「日本はディフェンスが良く、規律をしっかり守れたのが1番大きかったと思います。前半サモアは中盤でボールを回してきました。サモアの選手はフィジカルが強いが、それに対して日本は地面に倒れている選手が少なく15人が常に立っているような状態でした。しっかりと面を作り、ディフェンスラインを壁のような形で守れたのが良かったと思います。特にスクラムからのバックスのアタックはチームを勢いづけ、サモアよりも点数の重ね方が良かったと思います」

さらに「サモアはフィジカルが強かったが日本がやりたいことを全てできたと思います」とし、次のように持論を展開した。

「サモアはやりたいことが全くできなかったような戦いでした。いつもはキックを多用しながらフィジカルを生かしたディフェンスでボールを奪い、そこからアタックするイメージでしたが、前半はポゼッションという形でボールを持ってラグビーをしたいというゲームプランが伝わってきました。走って相手を圧倒したいというイメージです。日本はそれを素晴らしいディフェンスで許さず、まったく走らせませんでした。日本のディフェンスが減らないのでサモアのアタックが手詰まりだったように感じました」

「最後の3点はすごく大きかった」

藤田氏はもうひとつの勝因として松田の正確なキックを挙げた。

「松田(力也)選手とサモアの選手のキック精度が勝負の明暗を分けたと思います。松田選手があれだけ正確に決めてくれると負けられない。接戦になればなるほどあの3点の重みが最終スコアに響いてくる。逆にサモアは前半の最初のPGを決めることができませんでした。あれが決まっていたら試合の流れが変わったかもしれません。決める時に決める。キックの精度が高ければ高いほど勝率は上がります」

そして「トライを狙うところとPGを狙うところの判断はすごく良かったと思います」とし、後半35分に日本がトライを狙わずにPGを選択した場面に言及した。25−15の状況でペナルティーを獲得した日本は、トライを奪えば4本目となりボーナスポイントを獲得できたがPGを選んだ。

藤田氏は「負けないためには良かったと思います。トライを狙いに行って奪えなかった場合、最終的なスコアに照らすと3点差、つまりPG1つの差だったので、最後の3点はすごく大きかった。勝利を引き寄せた得点でした。何としても勝たなくてはいけない試合だったので点数のマネジメントは大切でした」と解説した。

次戦は世界ランク9位のアルゼンチンが相手となる。サモアと同様にフィジカルが強く、過去のW杯では2度のベスト8を経験している強豪だ。

藤田氏は「松田選手のキックがすごく大事になってきます。試合は僅差になると思うので、松田選手のキックが決まるか決まらないかが大きなカギを握ると思います」とし、アルゼンチン戦のポイントを解説した。

「サモアのフォワードも強かったが、アルゼンチンは強さの上にスキルがあります。それをどれだけ止めることができるか。アルゼンチンは世界の強豪の中でここ数年しっかりもまれて準備してきたチーム。今大会あまり調子が良くないとはいえ強豪国のひとつであることは間違いありません。日本は粘って食らいつき、最後の20分で走り勝つ。そうすれば勝利が見えてくると思います」

日本は2大会連続の8強を目指しアルゼンチンに挑む。