(写真:Kazpon/PIXTA)

筆者が主宰する研究会には多様な結婚応援団体の方が参加しています。しっかりと令和時代の結婚のカタチを統計的に確認していただきつつ、そのうえで、たくさんの現場からの発表、意見交換がされています。

ある地方の結婚応援団体からこんな悩みが出ました。「女性会員に比べて男性会員の登録が遅く、年齢が高い。それなのに『ご自分より学歴の低い女性がいい』とおっしゃるのです。登録者のデータを確認してみましたが、当てはまる女性がほとんどいないのです」。

この団体の会員の登録状況が、偶然そうなっているからなのでしょうか。実は多くの人の想像以上に「世代間の学歴格差」が広がっています。

高学歴化は男女ともに急進している


この表は、年齢別の大学進学率を示したものです。2023年に40歳を迎える男女は、2001年に大学進学年齢を迎えた人々です。男性の46.9%、女性の32.7%が4年制大学に進学しており、男女で進学差は14.2%ありました。男性の約半分は4年制大学卒ですが、女性は約3分の1といったところです。

ところが10年後の2011年になると、男性56.0%、女性45.8%が4年制大学へ進学しており、男女ともに一気に進学率が上昇し、男女差も10.2%に縮小します。

婚活で考えるならば、これは何を意味しているでしょうか。

40代の男性にとっては、彼らが大学に進学した当時の統計情報から、一般的な印象として「女性は男性より学歴が低くて当たり前、しかも4年制大卒は男性でも半数いないのだから、まあ高学歴だ。女性の4年制大卒なんてものすごく高学歴だ」になると思います。

しかし、アラサー女性にとっては「4年制大卒なんて男性の半分以上。私たちだって半数弱はいるから、まあ普通かな?」というイメージです。これが20歳の女性ともなると、「4年制大卒男性なんて珍しくもない。むしろ高卒男性のほうが少ないし」となります。

つまり、若い世代ではもはや、男女ともに珍しくもなんともなくなった4年制大学卒が、中高年にとっては「高学歴で、ある程度はリスペクトされる学歴かも」という感覚があり、学歴に対する価値観がかみ合わないのです。

したがって「下方婚」を希望する男性が、若い女性との結婚を希望すればするほど、学歴でリードできるお相手は統計的に見つかりにくい、ということになります。アラフォー男性においては、ある程度高学歴なはずの学歴も、アラサー女性から見れば「普通」と見られる可能性が高いために、リード要件になりにくいことは覚えておきたいところです。

先の表からもわかるように、学歴的にも下方婚を目指す男性は、同世代か上の世代の女性を目指したほうが、リスペクトされる確率が高くなる、ということになります。

親が「下方婚が当たり前」と考えるケースも

アラサーくらいで子どもを持つとすると、30代の方のご両親は60代、40代の方のご両親は70代です。婚活男性本人が下方婚を希望していなくても、その両親がそうではないケースも出てきます。

60代以上の親世代は、男女の学歴格差が2割を超えた時代の男女であり、さらに4年制大学卒など、男性でも約3割、女性などは2割もいない時代のため、「男性から見て下方婚が当たり前」と、なるわけです。

困ったことにこのような世代間格差からくる現状を無視した価値観のズレは、特に地方の結婚支援現場において、いまだに見られる光景です。20代の女性を希望する40歳男性に対して、結婚支援者が「どんどん申し込んだらいいよ」と助言して、当然ながらまったく成婚につながらず、男性もその親も「別におかしくないし、いつかは結婚できるはず」と思い込み、年齢だけが上がっていく、という弊害も見られています。

また、年の差のある男性からの申し込みの繰り返しに20代女性からクレームが出る、若い女性がイベントに参加しなくなる、といったことも見られています。結婚に関しては当事者だけではなく、その親や支援者もしっかり現実の状況を正しく認知することが大切です。

失敗なくして成長なし

そうはいっても「ワンチャンいけるかも!」という未婚男性が多いのも事実です。しかし、このように脳内婚活シミュレーションの中で「うまくいくのではないか」と思ってしまうことは、災害時などに「自分だけは例外と思い込む」正常性バイアスに陥っているとも言えます。

ある地方で、最近人気を博しつつある、列車を用いた「トレイン婚活」が実施されました。主催者側は年齢の近い男女の方が圧倒的にマッチングすることを理解していたので、1両目は20歳から35歳、2両目は30歳以上の男女が乗車可能、としたそうです。

34歳の男性が参加しており、これまでの肌感覚からイベント担当者は彼に2両目への乗車をおすすめしたのですが、(予想通り)その男性は若い女性と出会いたいとのことで、1両目に参加しました。結果は、彼に関心を示す20代女性はなく、女性に年齢が近い20代の男性がどんどん選ばれ、さらには女性のほうが年上というマッチングも多発したのです。

さすがに現実を見たのか、その男性は同じ日の午後に開催された同様のイベントに再チャレンジし、今度は1両目ではなく2両目に乗車したそうです。そして、36歳の女性と意気投合し、満面の笑顔で会場を去っていったとのことでした。

この男性のすばらしいところは、午前中の失敗を糧に、短時間で成長されたところでした。「脳内婚活」や、失敗した方法を何度も繰り返す人は、残念ながら成婚につながりにくい傾向にあります。なぜなら、結婚後の生活を考えるなら、相手の気持ちに寄り添わず、常に自分の希望の結果を期待する、もしくは、相手がNGなこと、共感しないことを何度も繰り返す可能性が高い人、とも見られるからです。

自分の好みを押し付けるのではなく、結婚後の生活においてこの人とはどういう暮らしになりそうか、年齢差よりもそちらを重視して、互いに寄り添いあえる相手にたどり着いてほしいものです。

(天野 馨南子 : ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー)