中国ドラマで「韓流ブーム」に対抗する北朝鮮政府
3年7カ月にわたって閉じられていた北朝鮮の門戸が先月開かれ、中国との人の行き来が可能になった。それに伴って、北朝鮮に続々と入っているのは、中国映画やドラマなどのコンテンツだ。
中国のデイリーNK情報筋は、中国映画やドラマの保存されたUSBメモリを輸入したいと中国の貿易業者に要求する北朝鮮の業者が増加しつつあると伝えた。輸入されたものは新義州(シニジュ)、平壌、咸興(ハムン)、元山(ウォンサン)などの大都市でコピーされて、全国の市場に出荷される。
北朝鮮当局はこのような状況をもちろん把握しているが、比較的寛容な対応をしている。中朝関係の状況によってはこれらに対する取り締まりを行ってきた北朝鮮当局だが、今は、取り締まっても取り締まっても根絶が非常に難しい韓流コンテンツの代用品として、中国コンテンツの輸入を黙認しているというのが、情報筋の見方だ。
過去4年近く、日干し状態となっていた中朝両国の貿易業者だが、中国コンテンツならOKという北朝鮮当局のやり方をここぞとばかりに利用して、手段を問わずにどんどん輸入して儲けているようだ。安定的に儲けたい北朝鮮の業者が次から次へとこの市場に進出しているとのことだ。
しかし、北朝鮮当局の思惑通りに事が進んでいるわけではない。中国コンテンツのメイン消費者層は、中年層以上だ。10代から30代に人気の韓流コンテンツとは棲み分けされてしまっており、これでは韓流の代用品にはならない。具体的にどのようなものが輸入されているかは不明だが、中国の若者は自国のテレビ番組に見向きもせず、テレビ局のメインターゲットは中年層以上だ。
(参考記事:K−POPとデジタルデバイスが北朝鮮の若者に与えた「個人の領域」)
業者も最初から、北朝鮮の若者に中国コンテンツが韓流の代用品にならないことをわかりつつも、そんなことはどうでもよく、ともかく安定的に稼げたらそれでいいと考えているようだ。
北朝鮮当局は、文化コンテンツがすでに国境を越えたものになっており、中国コンテンツが韓国風味になっていたり、韓国が紹介されたりすることにまで気づいていないのあろうか。