アメリカ作家協会やアメリカ書籍業協会、オープン・マーケット・インスティテュートは連邦取引委員会(FTC)に対し、Amazonの「書籍販売市場における独占」を調査するように求めています。一方でAmazonは、商品の販売者が自社の倉庫から直接プライム商品を発送できる「セラー・フルフィルド・プライム」プログラムに登録している出品者に対し、1販売当たり2%の手数料を課すことを発表しました。

Open Markets, the Authors Guild & American Booksellers Urge FTC and DOJ to Target Amazon’s Books Monopoly - Open Markets Institute

https://www.openmarketsinstitute.org/publications/open-markets-the-authors-guild-american-booksellers-urge-ftc-and-doj-to-target-amazons-books-monopoly



OMI+LTR+re+Amazon++Books+(Final) - OMI+LTR+re+Amazon++Books+

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Authors call on FTC to investigate Amazon’s alleged monopoly in the bookselling industry - The Verge

https://www.theverge.com/2023/8/16/23834223/amazon-authors-booksellers-monopoly-publishing-industry

Independent sellers keep choosing Amazon for the value we provide

https://www.aboutamazon.com/news/small-business/independent-sellers-keep-choosing-amazon-for-the-value-we-provide

1995年にオンライン書店としてのサービスを開始したAmazonは、その後成長を重ね、世界的な小売大手へと発展しました。アメリカの調査会社・WordsRatedによる2023年の調査では、アメリカで販売された物理的な本のうち、Amazonで販売されたものは約40%を占めるだけでなく、電子書籍の販売は80%以上を占めていることが明らかになり、書籍販売が企業の一部門へと変化した現在でも、Amazonでの書籍販売は依然として大きな影響力を持っていることが報告されています。

一方で、アメリカ作家協会などのグループは、Amazonによる書籍販売の影響は深刻で、アメリカにおける書店の店舗数が急激に減少しているのはAmazonが原因だと主張。また、Amazonのウェブサイトでは本が売れる可能性の高い著名な作家や人気の作品が目立つように取り上げられ、あまり知られていない作家の作品に触れる機会が少なくなっていることが指摘されています。

そこで、アメリカ作家協会などはFTCと司法省に対し、「Amazonによる書籍販売の独占」を是正するように求めました。また、書店としてのAmazonの規模だけでなく、書籍市場に対する影響力や、書籍の宣伝方法に問題がないか調査するように要求しています。オープン・マーケット・インスティテュートのエグゼクティブディレクターを務めるバリー・リン氏は「私たちが抱えている問題は、Amazonという単一の支配的な企業の戦略によって、私たちが読んでいる本の種類がゆがめられているという現状です」と述べ、「民主主義の時代では、このような権力集中は認められません」と批判しています。





一方で、一部の法律専門家はAmazonによる書籍販売の独占に対して、政府が調査を行うかについては疑問を抱いています。ミシガン大学で独占禁止法の研究を行うエリック・ゴードン氏は「書籍市場におけるAmazonの優位性はたしかに独占禁止法の要素かもしれませんが、すでに調査中のAmazonによるビジネスの他の側面と比べて、出版業界に対する影響は小さいものです」と述べています。

また、ゴードン氏は「Amazonによる書籍販売の方法についてこれまで独占禁止法による訴訟はありませんでした。しかし、Amazonの登場によって、多くの出版社や作家がAmazonがなかった時代よりも多くのお金を稼いでいます」と指摘しています。

この一件を報じたニューヨーク・タイムズはAmazonにコメントを求めましたが、Amazonからの返答はありませんでした。

一方でAmazonでは、2023年10月から同社の物流サービスを利用しないサードパーティーの販売業者に対して新たな手数料を課すことを発表しました。



Amazonの保有するフルフィルメントセンターに負担をかけずに、製品の在庫を増やすことを目的に2015年に開始された「セラー・フルフィルド・プライム」と呼ばれるプログラムは、Amazonによる物流サービスを経由せずに販売業者が「プライム製品」として自社の倉庫から消費者に発送を行うシステムでした。しかし、販売業者による配送がAmazonの配送基準を満たしていなかったため、2017年にサービスの新規受付が停止。その後2023年6月に再開されました。

2023年10月以降、Amazonはセラー・フルフィルド・プライム・プログラムを利用する販売業者に対し、通常支払っている15%の手数料に加え、1販売ごとに2%の手数料を課すことを発表しました。一部の販売業者は「Amazonの物流サービスを使用するように圧力をかけている」と批判。また、セラー・フルフィルド・プライム・プログラムを利用するオフィス家具業者は「今回の手数料改定によって、手数料だけで年間約100万ドル(約1億4000万円)もの費用がかかると推算されます。そのため、商品価格を引き上げざるをえなくなります」と述べています。



一方でAmazonは手数料の改定について「得られた手数料は、別のインフラストラクチャの運営と、その有効性を測定するためのコストに役立てられます」と報告しています。

企業のAmazonを利用したオンライン販売を支援するAvenue7Mediaのジェイソン・ボイス氏は「Amazonは数々の独占禁止法に関する問題を抱えていますが、今回の手数料改定はAmazonがこれらの問題をまったく問題視していないことが考えられます」と述べています。