子どもにスマートフォンやiPadなどを持たせることも多くなった昨今。使いすぎやルール決めに悩んでいる人も多いのではないでしょうか?

ここでは、スウェーデン人の夫と2人の子ども、家族4人で長野県松本市に暮らすライター・エッセイストの桑原さやかさんが、北欧のひとたちの暮らしから学び、実践していることを綴った『北欧の日常、自分の暮らし』(ワニブックス)より、北欧の人たちのスマートフォンとのつき合い方を抜粋してご紹介します。

【写真】iPadは週に2回、1時間と決めたペルニッレさん

北欧では歩きスマホを見かけない?上手につき合うルール

信号待ちの時間。料理をつくっている時間。公園にいる時間。なにか用があるわけでもないのに、ちょっと手持ちぶさたになると、するするとスマートフォンに手が伸びていく。そんな自分にも、ちょっとした罪悪感を感じているのに、やめられない。最近、ぼーっとなにも考えずに過ごす時間って、ほとんどないかもしれません。

そんなことを考えていたら、東京に住んでいる友人からメッセージが届きました。

「ひさしぶりにストックホルムに行ったら、歩きスマホしているひとがほとんどいなくてびっくり! 子どもといっしょに公園に行ったんだけど、スマホをずっと見ている親もやっぱり少ない気がするんだよねぇ。なんか人間らしいというか、自然だなぁと思ったよ」

人間らしいという言葉にドキッとします。友人の話を聞いて、まず、頭に浮かんだのは北欧の家では食事中にテレビをつけているのを見たことがないこと。もちろん、北欧のひとたちもテレビを見るのが好きなのですが、食事の時間とおやつの時間は「会話を楽しむ時間」と捉えていて、テレビは消している家庭がほとんど。そんな彼らの暮らしぶりを思い出すと、ちょっとしたことで、時間の使い方が変わるような気がしてきます。

●小さなことだけれど、意識するとしないでは大きく違う

家族の時間、会話の時間をなによりも大事にしている北欧のひとたちは、彼らなりの上手なスマホとのつき合い方があるのかもしれない。

そんな期待を持ちながら、リーネさんに聞いてみると、「わたしも毎日スマートフォン見過ぎているわよ〜」とあっさり言われてしまい、安心するやら、がっかりするやら。日常から切っても切れないものになっているのは、やはりどこの国でも同じようです。

でもよくよく話を聞いてみると、以前からずっと危機感は持っているそう。リーネさんはサイドビジネスをしていることもあり、インスタグラムやブログなどのプライベートな投稿も「仕事」と捉えて、極力仕事時間内に投稿をすませていたり。子どもといっしょにいる時間はスマートフォンは見ないと決めていたり。また、毎日少なくとも1時間は「スマートフォンを見ない」という時間をつくり、棚の上に置いておくのだそう。「小さなことだけれど、意識するとしないでは大きくちがう」と、リーネさん。

●会話をしたり映画を見たり、家族で同じ時間を過ごしたい

「子どもがiPadを使う日と、使わない日をつくってみたら、iPadを見ている日はすごく怒りっぽくなることがわかった」と話すのはペルニッレさん。

一時期はiPadはしばらくお休みにしていたものの、子どもたちの気持ちを尊重したいとの思いもあり、今は週に2回、1時間だけと決めているのだとか。時間になると画面にロックがかかるように設定しているそう。「家族いっしょにいる時間は、会話をしたり映画を見たり、家族で同じ時間を過ごしたいなと思って。子どもの成長とともにいろいろ試しているところなの」。

「これをしたら画期的に変わる」という方法はないのかもしれません。でも、危機感の意識が高いというのはみんなに共通しているように感じます。

●自分が本来必要だった時間が、少しずつ戻ってきた

さっそく、わが家でも、デジタル生活のルールをつくってみることにしました。まずは、インスタグラムやフェイスブックなどの緊急性が低いものの通知はオフにすること。また、夜の6時半から朝の8時までは通知が来ないように、おやすみタイマーの時間を見直しました。この時間は完全に見ないというわけではないのですが、「意識をして見ないようにする時間」としています。また、テレビをつけるのは本当に見たいものがあるときだけ。暇だから、なんとなく見るのはやめました。

あらためてルールを書いてみると、どれもこれも基本的なことばかり。まるで、子どものルールみたいだなぁと自分でも思います。でも、今までは情報を受け取るばかりだった時間で、夫とゆっくり話をしたり、読みたかった本を読めたり。自分が本来必要だった時間が、少しずつ戻ってきています。

意識をして、自分なりのルールを決める。たったこれだけのことなのに、わが家に小さな革命が起きています。

くわ原の「くわ」は、正しくは十に草冠に木

『北欧の日常、自分の暮らし』(ワニブックス)では、こちらで紹介した以外にも、家事や子育て、毎日の暮らしのことなど、著者が北欧で小さい子どもの子育てをしている3家族を取材して学んだ、豊かな暮らしのエッセンスがつまっています。遠い国のすてきな暮らしの中に、わたしたちの暮らしのヒントとなる知恵が満載です。