日本では6割の夫婦が陥ると言われるセックスレス。「夫とじゃれ合うことはあっても、もうそこまでの行為に至らなくなっています」と話すのは、夫婦共働きで二人の子どもを育てた主婦の直子さん(仮名・55歳)。42歳のときにくも膜下出血と脳梗塞を患い、右半身麻痺に。50代になった現在の夫婦生活の様子を赤裸々に語ってくださいました。

くも膜下出血、脳梗塞、右半身麻痺…。それでもレスが解消できたワケ

くも膜下出血を発症し、会社の個室トイレで倒れてしまった私。救急搬送された病院で7時間を超える大手術の末、一命を取りとめました。
術後は脳梗塞を発症し、右半身に麻痺が…。

●過酷なリハビリ生活を終えて、元の日常に

術後、いちばん大変だったのはリハビリです。当初、「リハビリは3か月くらいみておいてください」と言われていたのですが、夫が積極的にリハビリの先生に頼んだので、かなりスパルタなスケジュールが組まれました。

リハビリ生活は過酷でしたが、仕事の合間を縫ってできる限りのサポートを続けてくれる夫を見ていたら、私も早くもとの体に戻りたいという気持ちがどんどん強まって、パワーが湧いてきました。

結果的に周りの医師や看護師も驚くほどの回復力で、1か月半で普通の生活ができるようになったのです。予定よりもだいぶ早く退院することがかないました。

●自然な流れで夫婦生活が復活

急な入院生活を経て得たものはほかにもあります。私だけでなく、夫も子どもたちも、家族全員が元気に自宅で暮らせることのありがたさを感じられるようになりました。家族の絆が一層深まった気がします。

とくに手術中からリハビリまでずっと寄り添ってくれていた夫に対しては、私の人生に欠かすことのできない尊い存在だと確信。

退院してしばらくは、体のこともあるのでしばらく夫婦生活はありませんでしたが、体のつながりがなくても心がしっかり結ばれていることを感じられたくらいです。だんだんと触れ合いたいという気持ちが出てきたのは術後1年半を過ぎた頃。自然な流れで、また夫婦生活が以前のように戻りました。

けれど50代に入ってから、また私の体に異変が…。

イライラし、急に汗が噴き出す。これが更年期?

仕事中にほんの些細なことで、自分の感情が抑えられなくなってしまうようなことが続きました。今までも多少はバイオリズム的なアップダウンがありましたが、涙が出そうになったり大きな声を出してしまったりするほど酷くはなかったのに。急にイライラし出すと、もう止まらなくなってしまうのです。

ときにはワーっと体が熱くなって汗が噴き出すように出ることも。自分でもこれはおかしいと思いました。

●病院で血液検査を受けて判明したのは…

この頃、生理も不順になっていたので、婦人科を受診してみたのですが、そこで受けた血液検査の結果から、医師に「もうすぐ閉経しそうだね。おそらく更年期障害でしょう」と言われました。年齢的にもそうかなと思ってはいたのですが、実際になってみると想像していた以上の辛さがありました。止まらない苛立ちとホットフラッシュと言われる急な発汗が大きなストレスになってしまって…。

「あ〜! もうやってられない!」と、勢いで長年勤めていた会社を辞めてしまったほどです。ちょうど子どもたちの学費もひと段落した時期だったのでよかったですが、完全に自分を見失っているかのような行動でした。

●更年期の症状が強まるにつれ、したくなくなった

婦人科を受診した際には、「ポリープができている」という指摘も受けました。とくに悪性が疑われるものではないらしいのですが、このポリープのせいなのか、更年期の影響なのか、病院へ行った直後から、急に私の方が行為をしたくなくなってしまったのです。
夫は少し戸惑った様子で、「ポリープは手術して取った方がいいんじゃない?」と言ってきたのですが、それも怖くて。問題ないならいいかなと、今も先延ばしになっています。
一度、しようという雰囲気のときに断ってしまってから、この2〜3年くらい、夫婦生活は完全に消滅しています。

●ホルモン剤が使えず、漢方で治療することに

私の場合は、くも膜下出血と脳梗塞になった経緯もあり、血栓ができやすいため、ホルモン剤による治療は見送られることになりました。代わりに処方された漢方薬がよく効いていて、最近は症状も徐々に緩和されています。

「当帰芍薬散」という漢方を朝昼晩で飲まねばならないのですが、私のうっかりな性格上、お昼はけっこう忘れてしまうことも多くて…。そういうときはやはりイライラやホットフラッシュが出てしまうんですよね。

けれど漢方自体は、即効性というより、長く飲んで調えていくものなので、1日3回ちゃんと飲むということを自分の生活にちゃんと組み込みながら、つき合っていきたいと思っています。

●もう夫としなくても平気

もう夫との行為はありませんが、一度死にかけた私にとっては、命があるだけで十分すぎるくらい幸せです。ピンチのときに励まし続けてくれた夫への愛は今もどんどん深まるばかり。あの経験があったからこそ、夫へも子どもたちへも、「いてくれるだけでありがとう」と日々、感謝の気持ちをもって過ごせています。

最近、夫とは「子どもが小さかったときは、ふたりとも寝不足で大変だったよね」と古い写真を見てしみじみ語り合うことが増えました。すっかり成長して大きくなった今となっては、「もっと丁寧に育てればよかったね」なんて笑い合うことも。

子どもが欲しいと願うカップルがレスになったら、悩みはもっと深刻なのかもしれませんが、私たちの場合は、もう年齢的にもしないことが悪いわけもないし、特別なことでもありません。そういうフェーズに入ったんだなと思って受け入れています。

若い頃は夫から求められてという方が多かったので、今更、自分からなにかアクションを起こしたり、話し合いをする予定もありません。今後そういうことがもうなかったとしても、夫とはこのままずっと仲よく手をつないでいられるような、おじいちゃんとおばあちゃんになれたらいいなと思っています。