止まらない物価上昇に、節約はどの家庭でも課題のひとつになっている昨今。物価の高い国の人々は、どんな工夫をしているのでしょうか。

ここでは、スウェーデン人の夫と2人の子ども、家族4人で長野県松本市に暮らすライター・エッセイストの桑原さやかさんが、北欧のひとたちの暮らしから学び、実践していることを綴った『北欧の日常、自分の暮らし』(ワニブックス)より、デンマークに住む主婦たちの節約の工夫を抜粋してご紹介します。

【写真】リーネさんさんが外出の際に持っていくセット

北欧の主婦たちに学ぶ、シンプルな節約術

北欧にいると、日常のあちこちで物価の高さを感じます。スーパーに行くと、500mlのペットボトルの水が300円くらいしたり、トイレットペーパーも4ロールで500円くらいすることもしばしば。たいしたものを買っていないつもりでも、お会計がすぐに1万円を超えてしまうこともよくあります。

また、高いのはスーパーだけではありません。テイクアウトのコーヒーでも1杯600円くらいしますし、1000円ほどでランチをしようとすると選択肢もかなり限られてしまいます。

安くおいしいごはんとして、若者を中心に人気なのが中東料理のファラフェル。ひよこ豆とスパイスを混ぜて揚げたものを、サラダなどといっしょにピタパンでくるんで食べます。値段を気にせず気軽に食べられるので、北欧ではかなり貴重なお店です。日本に住んでいると、安くておいしいもの、便利なものがあちこちで見つかりますが、北欧で楽しもうと思うと「事前の計画と準備」が必要だと感じます。

●出かけるときは、マイボトルやお弁当を持参

リーネさんは出かけるときは、コーヒーや水をボトルに入れて持参するそう。飲み物以外にも、クッキーやスナックも持って出かけます。また、ちょっと遠出をするときは、ソースを混ぜたらでき上がる、トマトパスタなどをササッと仕込んでお弁当箱につめて持って行くことも。「何気なく過ごしていたら、デンマークではお金がすぐになくなっちゃうのよ」とリーネさん。

出かけるときに持つものといえば、北欧ではスーパーのレジ袋も定番。レジで買うと1枚100円くらいするので、エコはもちろん、節約の観点からもレジ袋を持参して買い物をするのはあたりまえのようです。

●5日分の献立を考えて、まとめて買い出し

また、リーネさんは節約のために5日分の献立を考えて、まとめて買い出しをするのが習慣。計画して買うことで、余計なものを買わずにすむと言います。

さらなる節約のために、リーネさんは「毎日の小さなぜいたく品」を買うのをやめたこともあったのだとか。家に飾るお花、お気に入りのパン屋Brød(ブロード)のチーズパン、大好きなAnker(アンカー)のアイスクリーム…。どれもなくても過ごせるけれど、毎日のささやかな楽しみもいっしょになくなってしまい、自分には必要なものだとわかったと言います。そのかわり、洋服や雑貨の予算を減らしてみたら、こちらは無理なく続いているそう。

「洋服もインテリアも好きなのできっと難しいだろうと思っていたんだけど、そんなこともなくて。あらためて意識してみたら、必要なものはそんなに多くないとわかった」とリーネさん。

節約と聞くと、どうやって金額を抑えようか、どこで買い物したら安いかなど、方法論にばかり目がいきがちです。でも大事なのは、自分には何が必要なのか、また必要ではないのかと考えること。節約って、そういう、もっと根源的でシンプルなものなのかもしれません。

●自分たちの気持ちと向き合うと、どこを節約するべきか見えてくる

私たちも、家を買うかどうか迷っていたとき、「自分たちはこれからどうやって過ごしたいのか」を何度も何度も夫と話しました。こんなに将来のことを話したのははじめてだったかもしれません。

どんな家に住むか、どこに住むのかも大事だけれど、なによりも、生活する上で気持ちにも金銭的にも余裕があること。これが私たちには大事だということがわかりました。そこで、予算内で買える中古物件を探し、自分たちでリフォームすることを決意。今も直すべきところはたくさんありますし、家を買ってから目まぐるしい毎日ですが、「家」という大きな買い物で「自分たちの答え」が見つかったことに、誇らしい気持ちさえしています。

これからどうやって過ごしたいのか。じっくり自分たちの気持ちと向き合うと、自然とどこを節約するべきか見えてくるのかもしれません。

くわ原の「くわ」は、正しくは十に草冠に木

『北欧の日常、自分の暮らし』(ワニブックス)では、こちらで紹介した以外にも、家事や子育て、毎日の暮らしのことなど、著者が北欧で小さい子どもの子育てをしている3家族を取材して学んだ、豊かな暮らしのエッセンスがつまっています。遠い国のすてきな暮らしの中に、私たちの暮らしのヒントとなる知恵が満載です。