ESSEonlineで2023年6月に公開されたなかから、ランキングTOP5の記事を紹介します。

 日本とフランスの夕食事情はどう違う? レストランのようなフルコースを毎日食べている? フランス生活文化研究・翻訳者のペレ信子さんが教えてくれました。

記事の初出は2023年6月。内容は取材時の状況です。

グルメの国、フランスの毎日のおかずの数は何種類?

フランス人の毎日のごはんはフルコースなのか? いいえ、じつは意外に質素なのです。
一汁三菜が和食の基本と言われますが、毎日たくさんのおかずを考えるのもつくるのも大変なもの。最近では土井善晴さんの「一汁一菜」という提案で救われた気持ちになった人も多いはず。

グルメな国、フランスの人たちは、レストランのようなフルコースを毎日食べているのでしょうか? フランスのおかず事情を紹介します。

●次の週の平日ごはんは「土曜日の買い出し」にかかっている!

家庭を持つ女性の多くが、フルタイムの仕事をもつフランス。さぞかし毎日の献立に頭を悩ませているのではと想像します。ところが、忙しい人ほど悩んでいないというのが、周りのフランス人の友達を見ていて私が感じること。毎日の家事、育児と仕事を両立させるには、迷っている時間などないのです。

彼女たちの多くは仕事が終わる金曜日の夜か土曜日に1週間分の買い物を済ませてしまいます。(パリなど大都市で大型スーパーが近くになく、車もない人は別です)スーパーで大きなカートに生鮮食料品、日用品、などをどんどん詰め込み、これで終わりかと思ったら、その足で冷凍食料品専門スーパーに立ち寄ります。

オーブンで温めるだけなどの出来合いの食品を惜しげもなく買っていきます。毎週買うもののラインナップはほとんど変わりません。

●平日はワンプレート、ごちそうは週末

日本では今日は和食、明日は中華、そしてその次の日は洋食、などとバラエティに富んだ食生活をしていますが、フランスは少し違います。基本的には平日は変わり映えしない料理が毎日並び、ごちそうは週末に、というスタンスです。なので、基本ワンプレート。

平日の平均的な夜ごはんは、伝統的な家庭の場合は野菜スープにチーズとハムやサラミ。もう少し若い家庭なら、ソーセージや肉を焼いたものに野菜のつけ合わせやエスニックな一皿。もしくは、冷凍食品を利用したキッシュにサラダ、魚料理に野菜を添えて、という感じ。

冷凍食品に対する後ろめたさはまったくありません。つけ合わせの野菜だって1種類! インゲン豆の季節だったら、インゲン豆をこれでもか、というほど食べるのです。1週間を通していろんなものを食べればOKという考え。かつて日本で1日30品目と推奨されていましたが、それも今はなるべくいろんな種類を食べようというところで落ち着いたみたいですね。

●フランス人は「つくり置き」することは少ない

大きさの揃った保存容器にきれいに並べられた常備菜を週末にまとめてつくる。というのは今や日本のお家芸といっても過言ではないと思います。その芸術品のような細やかさに、フランス人は感嘆の声を上げます。しかしグルメの国、フランスの毎日のおかずはシンプルな手抜き。週末に時間をかけてつくり置きすることは少ないと思います。

それでも週末にフランス人がつくり置きをするとしたら、それは野菜スープ。冷蔵庫の残り野菜をまとめて大鍋で煮て、ミキサーにかけておきます。大きめの保存容器に入れて、初日はそのままで、翌日はチーズをおろして、他の日はタピオカなどの浮き実を加えて、など変化させます。スープは冷凍することもできます。

●毎日の食卓のバラエティよりも夜の時間を楽しくが大切

私もフランスに住んでいるときは、月〜木は同じものを食べていました。そして金曜日の夜から少しがんばっておいしいものをつくりました。献立に頭を悩まして、消耗するよりも、毎日変わり映えしない食事でも夜の時間をゆったりと過ごす方に重きをおく。こんな考え方を今日のおかずに悩む人に贈ります。