作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセイ。夏の災害が多い昨今、備えについてつづってくれました。

第102回「自然災害への備えどうしてる?」

西日本豪雨からこの7月で5年が経った。現在、二拠点生活をしている地元の愛媛県も、南予地方が大きな被害を受けた。私の住む東予は被害が少なかったので、宇和島の友人の栽培するみかん山などへお手伝いに行ったのだが、バスから見える山々は地すべりが何十か所も起き、みかんの木々がなぎ倒され、本当につらい光景だった。

●自分の家は大丈夫…ではない

ここ数年、夏になるとどこかの地域が必ずといっていいほど災害を受けるようになった。「まさか自分の家が…」ニュースでよく耳にする言葉だ。まるでくじ引きを引くように、毎年どこかの地域が災害をうける。でも、なぜか自分は大丈夫と思ってしまう。正常性バイアスってやつなのでしょうか。

「災害になにか備えている?」と母に聞くと

「うーん。あまりしてないなあ」

「あー、やっぱりそうなんやなあ」

「でも土嚢はたくさん用意しているよ」

15年くらい前になるけれど、実家周辺も水害を受けたときがあった。すんでのところで浸水を防いでくれたのが土嚢だったのだそうだ。

地すべりや洪水が起こりそうなときは、とにかく逃げるしかないけれど、最近のゲリラ豪雨とてあなどれない。私も一昨年の夏に、東京の家で浸水をやっちまってるんです(書籍『暮らしっく』参照)。

母の話だと、そのときわが家も凄まじい豪雨にあい、家の前の小さな水路は泥水で埋まってグレーチングがぷかぷか浮かびはじめ、辺りは川のようになっていたのだそうだ。もう少しで家の中まで水が入ってきそうと思ったそのとき、父が用意していた土嚢が駐車場にたくさんあるのを思い出し、妹とどんどんと庭の前に積み上げたのだそう。すると庭に入る水の勢いが減速し(家の周りに外壁があったので入り口にだけ積めば良かったのも利点だったと思う)なんとか浸水せずにすんだのだそうだ。

このときの豪雨で、田畑は被害を受け、みかんの木もたくさん枯れてしまったけれど、家はなんとか無事だった。

「土嚢は買ったの?」

と父に聞く。

「いや、街がくれるときがあるんよ」

災害に備えて、市役所が砂を準備してくれているとか。

「袋を持っていけば、役場の人が砂を入れてくれる日があるんよ」

おお、そんなシステムがあったとは、知らなかったなあ。(実家の街の場合)HPとか、広報でもお知らせしているようなので、広報は毎月チェックすることが大切だなと思った。

●これから備えておきたいこと

東京でも、私の地域は回覧板があって、災害の避難所のことも書かれていたりするので、この頃はよく読むようになった。

ゲリラ雨とか、線状降水帯による被害は、県単位でなくかなり限られたエリアだけだったりするので、新聞とかテレビよりも、もっと小さなコミュニティでの情報が必要だ。

コミュニティーラジオやケーブルテレビ、回覧板や広報、ご近所さんと普段から親睦を深めておくことも大切になってくることなんじゃないかな。もし電気がなくなりスマホが使えなくなったら…最後に助けあえるのはご近所同士のネットワークではないだろうか。

これからお引越しを考えている人は、ハザードマップをよく見て、災害に強い土地に住むことをお勧めしたい。地盤の強さや、川の氾濫の危険性、土地の高さ低さもあなどれない。昔の地名に「氵」のつく土地は水気が多いとも言いますね。案外、そういう迷信のようなことも当たっていたりする。都会には川や海を埋め立ててできている場所もたくさんあるので、引っ越しのときには古地図も見ているという方もいる。

備えあれば患いなしと言うけれど、一番の備えが地域や家を選ぶときかもしれない。

私は、東京の家の近くの川が氾濫し、浸水一歩手前という経験をしてから、パソコンのサーバーやアルバムなどの大切なものは2階で保管するようになりましたよ。

これからが、夏本番。今からでもできることをやってみましょう。取り越し苦労だったねと、笑って次の季節を迎えられたらそれが一番だよね。

 

本連載をまとめた書籍『暮らしっく』(扶桑社刊)が発売中。