2023年4月4日に新発売し、同月末までの累計販売数量が125万ケース(大ビン換算)と大ヒットしている「サントリー生ビール」。この販売数量は年間計画の約4割にあたるそうで、2023年を代表するヒット商品といっていいでしょう。では、なぜこんなに売れているのか? そしてそもそも、どのような味わいをもったビールなのかを、比較やペアリングを試しながら解説していきます。

↑↑「サントリー生ビール」。350mlは207円(税込)、500mlは274円(税込)で、アルコール度数はともに5%。※価格はどちらも筆者調べ

 

原材料の大胆刷新に着目すべし!

「サントリー生ビール」の味に関する特徴を生み出しているのが、パッケージにも記載されている「トリプル生」。これは、糖化工程において仕込釜で麦汁を煮出す「デコクション」を3回実施する「トリプルデコクション製法」のことです。

 

1回、2回が一般的であり、デコクションを3回行うビール(発泡酒ビールも含む)はそう多くありません。そこには手間が増えるなどいくつかの理由があると思いますが、デコクションを3回行うことで甘みやコク深さ、まろやかさがより豊かになるといわれています。

↑パッケージにおいて赤字で目立つ「トリプル生」の表記。とはいえ、筆者は原材料にも着目すべきだと考えています

 

ただ、筆者としては「ウリはトリプルデコクションだけじゃない」と感じます。むしろ着目すべきは「味わいの方向性を大きく変えるために原材料も大胆に刷新した」こと。

 

「サントリー生ビール」とバトンタッチする形で缶が終売(業務用の瓶や樽は継続販売)となった「ザ・モルツ」と対比させると、違いや狙いが明らかにわかります。さらにいえば、サントリーを代表するビール「ザ・プレミアム・モルツ(以下、プレモル)」と比べれば一目瞭然です。

 

簡単にいえば、「ザ・モルツ」と「プレモル」は麦芽、ホップ、水、酵母のみで造る、ビール大国・ドイツの「ビール純粋令」にのっとったビールですが、新しい「サントリー生ビール」はコーンと糖類も用いる仕様になったということです。

↑「サントリー生ビール」には、原材料にホップとコーンの記載がある

 

ちなみに、こうした副原料を使うビールは珍しくなく、むしろ日本では王道。「アサヒスーパードライ」と「サッポロ生ビール黒ラベル」には、米、コーン、スターチなどが使われていますし、「キリン一番搾り生ビール」も2009年までは副原料を使っていました。

 

では、なぜ副原料を使うのでしょうか。一般的に、米、コーン、スターチなどを使うとすっきりした味になりやすいといわれています。日本で最も飲まれているビール「アサヒスーパードライ」でも採用されていることから、いわば日本人好みの味を作りやすいともいえるでしょう。

 

「プレモル」は華やかな香りやリッチなコク、そして神泡がウリ。そして「ザ・モルツ」はうまみが特徴のビールです。一方で「サントリー生ビール」はゴクゴク楽しめる軽快さを優先し、ひと口目の飲みごたえや飲みやすい爽快感を前面に出しています。そのうえで、甘みやまろやかさなどを増強するために採用したのが「トリプルデコクション製法」だといえるでしょう。

 

サントリーの代表銘柄と飲み比べ! 味わいの違いは?

それでは「サントリー生ビール」の味わいにおける特徴にも迫っていきましょう。違いをわかりやすく紹介するため、「プレモル」と糖質ゼロの「パーフェクトサントリービール(以下、PSB)」を用意しました。なお、「トリプルデコクション製法」はこの「PSB」や、「プレモル」のさらに上位ブランド「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム」でも採用されています。

↑アルコール度数は左から、5.5%、5%、5.5%。ちなみに「PSB」は糖質ゼロビールであるものの、副原料には糖類が使われています

 

●「ザ・プレミアム・モルツ」

味わいは、それぞれのキャラクターが明確に違っています。「プレモル」はどっしりとしたリッチな濃さで、余韻までしっかり続くフルーティな香りも特徴。

↑ひと口目でわかる贅沢な味わいは、さすがプレミアムビールの雄。泡もグッドでありゴッドです

 

●「サントリー生ビール」

一方で「サントリー生ビール」はキレが強めで、そのぶんアタックが刺激的。苦みや香りもシャープで、爽快感がパワフルです。派手さはないものの、ド直球なビールらしさがあり、それが売れている理由なのかもしれません。

↑スカッとクリアな味わいや、ノドを鳴らすような爽快感が印象的

 

●「パーフェクトサントリービール」

そして「PSB」は、味の濃さこそ「プレモル」と「サントリー生ビール」に劣るものの、薄い印象は皆無。糖質ゼロながらキリッとした十分な飲みごたえと苦みで、ビールらしい麦のうまみやホップの香りもしっかり楽しめます。

↑味わいのトーンダウンはややあるものの、糖質ゼロなら十分なレベルのおいしさ。ボディ感や泡もちもよく、完成度の高さを感じます

 

それぞれにオススメのペアリングを提案

味わいは三者三様であるものの、どのビールもジャンルを問わず様々な料理と幅広くマッチすると思います。それを前提としながら、想定できるシーンとペアリングを考えてみました。ジャンルは、昨今、“街”や“ガチ”など存在感が増している中華から。「プレモル」は、やはり料理も少々手の込んだおつまみがマッチ。ご馳走にプレミアムビールを合わせることで、贅沢な気分も倍増します。

↑海老チリや黒酢酢豚などを提案。コンビニでも「金の○○」など、手軽にプレミアムな中華総菜が買えるので、ホームパーティーでもお試しを

 

餃子や麻婆豆腐といったド定番中華に合わせるなら「サントリー生ビール」です。ほかにシュウマイや春巻き、ユーリンチーやキクラゲ卵炒めなどでもいいでしょう。味が辛めだったり濃厚だったりしても、「サントリー生ビール」のシャープな味が調和しながら余韻でリセット。次の料理のひと口をおいしくさせてくれます。

↑スタンダードビールといえる「サントリー生ビール」。ペアリングにも万能さを感じました。晩酌にはこれでしょう

 

「PSB」を選ぶ人は、料理もヘルシーなものを合わせることが多いはず。そこでチョイスしたのはあっさり系のおつまみ。春雨サラダ、ピリ辛蒸し鶏、ザーサイを合わせましたが、「PSB」のほどよい麦のうまみやキリッとした飲み口が、しっかりと調和します。

↑糖質が気になる人は、ビールもおつまみもともにヘルシーなタイプを

 

初夏から夏へと、キンキンに冷えたビールがますますおいしくなるシーズン。スーパーなどでこれらのビールを見かけたら、ぜひこのペアリング例も参考にしてみてください。

↑10月には酒税改正があり、ますますビールが注目されるでしょう。ペアリングはもちろん、ビールの飲み比べもお試しください