規制線がはられた現場(写真・酒井よし彦)

「12時半ごろに現場を通りかかると、吉原の揚屋町通りにあるソープランド『Y』から向こう3軒くらいまでが封鎖されていたんです。最初は『ガサ入れ(風営法違反などの摘発)かな』と思いました。

 しかし、パトカーが2台、覆面パトカーが4〜5台停まり、鑑識らしき人が3人、制服の警官が4人くらいいる大掛かりなものだったので、何があったのか警察の方に聞いたんです。『捜査中だから』と詳細は教えてくれませんでしたが、やはり重大事件でしたね」

 事件直後の現場を目撃したカメラマンの酒井よし彦氏はこう振り返る。

 5月5日午前11時20分ごろ、東京都台東区千束にあるソープランドの従業員から「女性が男性客に刺された」と119番通報があった。

「報道によると、個室内の風呂場で30代の女性従業員が首と腹から血を流して倒れていて、搬送先の病院で約1時間半後に死亡が確認されました。

 女性と個室内にいた30代の男も自ら腹を刺し、廊下で倒れていたところを男子従業員が発見したと報じられています。命に別状はないようですが、男が常連客だったかどうかはわかっていません」(事件担当記者)

 警視庁浅草署の発表によると、女性は左首と右腹の計2カ所を刺され、腹部の刺し傷は内臓まで達していたという。凶器とみられるサバイバルナイフはベッドの横に残されていたそうだ。

 酒井氏によると、『Y』は吉原でも一、二を争う歴史のある店だという。風俗専門誌の編集者も「店は『高級』を売りにしています。料金は110分2万7500円です」と説明する。

 ショッキングな個室内殺人事件だが、古くから吉原を知る事情通はこのニュースを聞き「また『Y』なの?」と驚いた表情をした。聞くと「実は20年前の2003年にもここで殺人事件が起きていたんです」と語る。

 確かに事件はあった。当時の報道によると、8月20日午前0時15分ごろ、同店の客の男性から「人を殺した」と110番通報があった。警察が駆けつけたところ、女性従業員(当時32)がネクタイで首を絞められ、全裸で床に倒れていたという。容疑者の客は、近所に住む別のソープランド従業員だった。

「ソープランドは個室なので、女性従業員が安心するように男子従業員がさり気なく廊下を行き来しています。フロントでは薬物はもちろん、泥酔などの状況をチェックしていて、お断りすることもあります。

 また、大きなカバンを持っているときは念のためフロントで預かるなどもしています。しかし、常連客や指名客には無理を言えないのが実情です」(元ソープランド従業員)

 最近はカバンに仕込んだビデオカメラでの盗撮、レコーダーでの盗聴などがたまにあるというが、まさか殺人事件が起きるとは――。女性従業員の恐怖を想像すると言葉もない。