アスレチックス戦に先発したメッツ・千賀滉大【写真:ロイター】

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石井一久以来のデビュー3戦3勝ならず…寒さと敵地に慣れる必要

■メッツ 17ー6 アスレチックス(日本時間15日・オークランド)

 メッツの千賀滉大投手が14日(日本時間15日)、敵地オークランドでのアスレチックス戦に先発。最多の96球を投げながらも、勝利投手の権利を手にするまであとアウト1つとなった5回2死で降板となった。2本塁打を含む4安打4失点7奪三振の内容で、02年にドジャースの石井一久(現楽天監督)が記録したデビューからの3戦3勝に並ぶことはできなかった。【オークランド(米カリフォルニア州)=木崎英夫】

 8点をリードした5回だった。2死から6番ディアズに左翼へソロ本塁打を許し、次打者に四球を出したところで、ショーウォルター監督は決断した。「イラついているのが分かった。多分制球だったと思う。それだけでない。(自軍の)長い攻撃で待つ時間が長かったりもした。その他にもいつもと違うことが彼の投球に影響を与えていたので、あれ以上投げさせるのは嫌だった」。

 名将は決して無理をさせなかった。千賀は、指揮官にボールを手渡すと険しい表情を浮かべ、ベンチに戻っても口をヘの字に曲げたまま戦況を見つめた。その右腕が、自身の不甲斐なさを冷静に振り返った。

「体を動かす場所がない球場なので、体が冷えるというところもありますし。でもいつものルーティンとかそのへんはできない球場であったにせよ、そこはちゃんと。ああいう試合だったからこそ、野球に集中して入れたらというふうに思います」

 ベイエリア特有の冷たい夜風が吹き、試合開始時刻の約13度から気温は時間とともに低下。敵地にはダグアウト裏に体を動かせる室内練習場もなく、千賀は5回のマウンドに上がる前に、右翼線のファウルゾーンにあるブルペンで投球練習を行う対策を取った。

 今季初の西海岸遠征3カード10連戦の初陣を切るマウンドに立った千賀に、3時間の時差を体をなじませる間はなかった。

決め球はお化けフォークという情報は“逆利用”できる

「初めてのことだったので、体がうまくコントロールできない部分もあったかなというふうに思いますけど、こういう経験を一つずつ乗り越えていきながら、この世界でしっかりやっていけるように準備したいなというふうに思いました」

 これまでの2試合と比べ、千賀は制球に苦しんだ。メジャー3試合目で最多の96球を要しながら、初めて5回を終えられず、4四球も最多だった。その背景には、初対戦の敵地での環境や時差など不利な要因があったが、過去2登板から生かした秀逸な投球術が光る場面もあった。

 3回2死一、三塁の場面だった。5番ピーターソンを直球3球で見逃し三振に仕留めたが、千賀は勝負球を投げる直前のサインに首を振っている。打者にとっては「フォークが来る」という強い意識を捨てられない0-2カウント。その警戒心を強める状況で首を振られれば迷いが出るのは当然だった。千賀は相手の心中を見透かしたかのような直球勝負で攻めた。

 前回登板後、千賀はこんな言葉を残している。

「何回も対戦が増えていけばいくほどフォークボールを振らないようになる。相手も考えてきていると思うので、幅広くやって今後も対策をしていく」

 フォークの割合を少なくして挑んだのが前回登板だが、この場面の見逃し三振には、「あるぞあるぞ」と思わせながら、結局、フォークを使うことなくねじ伏せるという魅力的な駆け引きがあった。

 予定通りであれば、次回登板もこの西海岸遠征中に予定される。時差にも慣れ、マウンドで躍動する千賀の姿に期待したい。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)