カージナルスのラーズ・ヌートバー【写真:ロイター】

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自身初の開幕戦スタメンを掴んで3出塁と持ち味を十分に発揮

 野球日本代表「侍ジャパン」の一員として第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の世界一制覇に貢献した日系メジャーリーガーのラーズ・ヌートバー外野手が30日(日本時間31日)、本拠地セントルイスでのブルージェイズ戦で自身初の開幕戦スタメン出場を果たした。「2番・左翼」で4打数1安打2四球の内容で3度出塁。チームは逆転負けを喫したが、持ち味を十分に発揮し、外野の定位置獲りを目指すメジャー3年目のシーズに好スタートを切った。【木崎英夫】

 メジャー3年目でつかんだ初の開幕スタメンで、ヒットを放ったのは6回2死一塁の場面で迎えた第4打席だった。左腕メイザが投じた外角低めのスライダーを右手1本で拾うと、打球は遊撃左横をライナーで抜きレフト前に転がった。巧打で決めた今季初安打。日本で大人気となった“ペッパーミル・パフォーマンス”が注目されたが、塁上でヌートバーがそれをすることはなかった。

 静まりかえる敗戦後のクラブハウス。日米の報道陣に囲まれたヌートバーはその理由を淡々と話した。

「アンドリュー・キズナーが新しいのを考えているんだ。それできょうはやらなかった。次はやる? もしかしたらね」

 コショウを挽く際の両手の動きを真似たお馴染みのパフォーマンスはWBCの大会期間中に日本のファンの間で大流行。マイアミから日本に帰国後、侍ジャパンが首相官邸を表敬訪問した際に岸田文雄首相が両手の拳を絞るようなしぐさでペッパーミル・パフォーマンスのポーズで記念写真に収まるほどの浸透度である。

母・久美子さんも感謝「チームメートに恵まれていると思います」

 地元記者に聞くと、そもそもペッパーミル・パフォーマンスは、キズナーが音頭を取り始めたもので、昨年の夏場に失速した頃、チームにコショウなどを挽くという動詞「grind」が持つ別の意味「コツコツと粘り強くやる」とをマッチングさせた動きだという。チーム一丸となって勝利を目指そうというメッセージが込められたパフォーマンスの発案者が次なるものを考えているとなれば、ヌートバーが“新型”を待つ気持ちになるのも自然なことである。

 この日、ヌートバーの母・久美子さんと父・チャーリーさんが観戦に訪れていた。試合前に取材に応じてくれた久美子さんは、我が子を温かく迎え入れてくれた栗山英樹監督以下侍ジャパンのチームメートたちとの話にずっと興味が尽きなかったと明かす。一方で、レギュラー定着を目指すカージナルスでの3年目についても明るく紡いだ。

「侍ジャパンでもみんな仲がよかったけれど、カージナルスもみんな仲がいいので。チームメートに本当に恵まれていると思います。それはありがたいです」

 WBC全7試合でリードオフマンを務め守備でのガッツあふれるプレーで日本中のファンの心をつかんだヌートバーのお馴染みのパフォーマンスが今後も続くのかどうかは現時点でわからない。しかし、侍ジャパンと同じように、勝利に向けチーム一丸となる雰囲気に満ちあふれているカージナルスでラーズ・テイラー=タツジ・ヌートバーの”grind”する姿勢がブレないのは確なこと。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)