不適切な動画を投稿してしまうのはなぜ?

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 飲食店での迷惑行為を撮影した動画など、不適切な内容の動画がネット上に投稿されることがあります。世間からバッシングを受けるだけでなく、法的責任を問われる可能性があるにもかかわらず、なぜ投稿する人がいるのでしょうか。

 不適切な内容の動画を投稿する人の心理状態について、カウンセリング事業などを手掛ける、コレット(広島市西区)の代表、田中よしこさんに聞きました。

孤独感が強い

Q.ネット上に動画や文章などを投稿したとします。その後、他のユーザーから何らかの反応があった場合、投稿者はどのような心理状態になるのでしょうか。

田中さん「投稿者は『反応があってうれしい』という心理状態になりますが、深層心理では、『自分の存在をもっと認めてもらいたい』という欲求があります。そのため、投稿を続けるうちに、たとえネガティブな反応でも、その数が多ければ多いほど快楽を感じるという状態になっていきます」

Q.では、飲食店での迷惑行為を撮影した動画など、ネット上に不適切な内容の動画を投稿する人の心理状態について、教えてください。法的責任を問われる可能性があるにもかかわらず、なぜ投稿してしまうのでしょうか。

田中さん「先述のように、投稿者には『自分の存在をもっと知ってもらいたい』という深層心理があります。インターネットは『すぐに反応がある』『拡散されやすい』という特徴があることから、手っ取り早く自分を知ってもらうというゆがんだ解釈で不適切な動画を投稿してしまうのです。

そもそも注目を集めて、自分の存在を認めてもらえることが目的なので、人に迷惑がかかるのかどうかは二の次になってしまいます。これは、良いことよりも、迷惑行為の方が注目されやすいというSNSの特性も影響しています。

心理学の研究によると、孤独を感じている人は逸脱行動を起こしやすくなり、共感性も低いことが分かっています。誰かに迷惑をかけてしまうことより、『周りの仲間に認められる』『目立つ』『面白いと思ってもらえる』といったことに関心が強いのです」

Q.ネット上に不適切な投稿をしている人がそうした投稿をやめるには、どのような対策が必要なのでしょうか。また、家族はどのようなサポートが可能なのでしょうか。

田中さん「困ったことに、逸脱行為をする人は自制が難しくなっています。なぜこの状態になってしまったのかというと、何年も孤独を抱えていたからです。家族なりに一生懸命接していても愛情の行き違いがあり、『自分は愛されている』という実感が持てないまま年月が経ってしまうと、相手の思いや気持ちをくめない人になります。

多くの人はスマホを持っているので、毎日がつまらないと、ネットに依存しやすくなります。すると、ネット上で情報を検索し、『他の人もやっている』『自分もこれなら簡単に目立てる』という安易な思考で行動してしまいます。

共感力や自制心を育てるには、家族の愛情が必須です。人は、家族から健全な愛情を受け取ると、『自分は大切にされている、だから他人も大切にしたい』と、自然に思えるようになります。

迷惑行動をしたいと思ったら、まずは『自分の存在を認められたい欲求が出ている』と自覚できるようになることが大切です。その上で気持ちを切り替えるための時間を取り、『好きな場所を散歩する』『お茶を飲む』といった自分が楽しめる行動をしましょう。そうすることで、日常の行動も一緒に切り替えられるようになります。さらに、そうした行動を家族や知人に報告できるようになり、互いにコミュニケーションができるようになると理想的です。

家族にとって大切なのは、本人が本当の気持ちが出し合える癒やしの場を見つけ、人に喜んでもらえる活躍の場を一緒に考えてあげることです」