スギによる花粉症が重症化すると、どうなる?

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 スギ花粉の飛散により、鼻水や鼻詰まりなどの症状に悩まされている人も多いと思います。中には、「病院に行く暇がない」という理由で、市販薬を服用して対処する人もいるようです。

 ところで、スギによる花粉症が重症化すると、体にどのような影響があるのでしょうか。受診すべき目安はあるのでしょうか。わしお耳鼻咽喉科(兵庫県西宮市)の鷲尾有司(わしお・ゆうし)院長に聞きました。

睡眠の質低下で日常生活に影響

Q.そもそも、花粉症になると、どのような症状が出るのでしょうか。主な症状について、教えてください。

鷲尾さん「花粉症とは、花粉のようなアレルギーの原因物質、いわゆる『アレルゲン(抗原)』が鼻の粘膜に付着したときに生じるアレルギー反応のことを指します。つまり、花粉症は、花粉が付着しやすい部位で起こりやすく、主に4つの部位で症状が出ます。

一番花粉の影響を受けやすい部分は、目と鼻です。皆さんもよく知っているように、花粉症では主にサラサラの鼻水やくしゃみ、鼻詰まりなど鼻炎の症状のほか、目のかゆみといった結膜炎の症状が出ます。

さらに、花粉が喉に入って起こるせきや、皮膚に花粉が付着して起こる肌のかゆみなど、呼吸器症状や皮膚症状も現れることがあります。そして、それらの症状がひどくなると、気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎と呼ばれる状態となることがあります」

Q.では、花粉症が重症化すると、どうなるのでしょうか。重症化の基準も含めて、教えてください。

鷲尾さん「花粉症における『重症化』というのは、多くの場合、日常生活における支障度が強くなった場合を意味します。新型コロナウイルス感染症などで使われる重症化は入院や死亡といった意味で、花粉症のみの症状では、それらの心配はないでしょう。

日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会の『鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版』によると、症状の分類は『軽症』『中等症』『重症』『最重症』の4段階ありますが、これらはあくまでも鼻の症状に関しての分類となります。重症もしくは最重症の花粉症では、鼻詰まりなどの鼻症状や夜間のせきといった呼吸器症状によって、睡眠の質が低下するケースが多く見られます。

睡眠障害は、社会生活の質が低下することにつながります。そのため交通事故を起こしたり、仕事や学業の効率低下をきたしたりすることは、個人の問題だけでなく、社会全体の問題にもなります」

Q.花粉症の人の中には、「病院に行く暇がない」などの理由で医療機関を受診せずに市販薬を服用して対処する人もいるようですが、問題はないのでしょうか。受診の目安について、教えてください。

鷲尾さん「花粉症の治療にとって最も重要なのは、病院で自分の体の状態を正しく診断してもらうことです。そのためには、アレルギー専門病院でアレルゲンを見つけてもらうのが理想です。

『花粉症=花粉アレルギー』なので、スギ花粉のアレルゲンを持っている場合、スギ以外の花粉についてもアレルゲンがある可能性のほか、鼻炎や結膜炎以外のアレルギー症状が出る可能性も考えておく必要があります。可能であれば、耳鼻咽喉科でも内科でも、そのような診療方針の医療機関を受診するのが理想的です。

もちろん、花粉症に対処するには、副鼻腔(びくう)炎など、花粉症以外の鼻の病気の有無を診断してもらい、花粉症と区別することも大切です。そのためには耳鼻咽喉科の受診が適切と思われます。

医師からアレルギーに関する正しい診断を受けており、花粉による症状をうまくコントロールできていれば、市販薬でも問題ないといえます。診断を受けていない場合や、診断を受けていても症状をうまくコントロールできていない場合は、受診をお勧めします」

Q.花粉症が重症化しやすい人の主な特徴について、教えてください。

鷲尾さん「花粉症の重症化は、環境と人の2つの面から考えましょう。1つ目は『重症化しやすい状況』です。重症化しやすい状況はもちろん、花粉が多く飛散したときです。『アレルギー=過敏症』でもあるので、寒暖差や黄砂、PM2.5などの非特異的な刺激が加わると、重症化しやすいといえます。

もう1つは『重症化しやすい人』です。重症化しやすい人は、多くのアレルゲンを持っているケースが多いです。例えば、重症化している人の中には、スギ花粉だけではなく、ヒノキ花粉やイネ科、キク科の雑草などの花粉、ハウスダスト(特にダニ)、動物(犬、猫など)のアレルギーを持っているケースがよくあります。

このほか、アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎だけでなく、気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどのアレルギー疾患がある人、または過去に疾患があった人は、多くのアレルゲンを持っている可能性があります。

もちろん、睡眠不足などアレルギー反応が起こりやすい状況にある場合も重症化しやすい要素といえます」

 花粉症により鼻詰まりやせきがひどく、夜によく眠れない場合、耳鼻咽喉科を受診すると良いかもしれません。