「テレビをつけると必ず芦田愛菜が出ている」って本当? 民放各局1日での「芦田愛菜」遭遇状況を調べてみたら…
ドラマでもバラエティでもニュースでも…。見たい番組を見ようとしてテレビをつけると、なぜか芦田愛菜がいる時ってありませんか? 学業優先でレギュラー番組も多数抱えてないはずの彼女とテレビで遭遇してしまうのはなぜか? テレビ番組に関する記事を多数執筆するライターの前川ヤスタカが、遭遇する理由と民放各局で「1日芦田愛菜を見ない生活」ができるかどうかを検証する。
学業優先のはずなのになぜテレビで芦田愛菜を見てしまうのか?
近時、地上波テレビをある程度の頻度で見ている人なら、みんなが思っているであろうことがある。
“芦田愛菜をテレビで見ない日はない”
これである。テレビをつけると必ず芦田愛菜が出ている。そんな気がするのだ。
しかし、本コラムを執筆中の2023年3月頭現在、芦田愛菜の地上波テレビのレギュラー番組は実は1本しかない。『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』(テレビ朝日系列)のみである。
高校生で学業優先の芦田愛菜は、拘束時間の長いテレビドラマなどは避けており、ごく一部の例外を除いて基本的に連ドラには出ていない。
では、なぜ芦田愛菜をテレビでよく見るかというと、CMにたくさん出ているからである。
ニホンモニター調べの「2022タレントCM起用社数ランキング」では17社で堂々の1位。ビデオリサーチ調べの「2022年の年間タレント別テレビCM出稿量およびテレビCM起用社数(関東地区)」では、出稿量が斎藤工に次ぐ2位である。
ちょっと話がブレるが、これを聞くと逆に斎藤工そんなに出てたんかいとも思う。まあこれは出稿量ランキングなので、オンエア回数が多いCMに出続けている人が優位なランキングではあるけれども。そうなると必然的にすごいのはIndeedということになってしまうが。
仕事はCMが中心。その理由は拘束時間だけではなくて…
話を戻そう。
芦田愛菜がこれだけ多くのCMに出ているのは、拘束時間の短いCMを仕事の中心にしているという事情だけではなく、彼女の好感度がとにかく高いというのもある。
子役時代の芦田愛菜といえば、年齢に似合わぬ演技力や隙のない大人びた仕草で「芦田プロ」などと言われ、やしろ優の「あのね、芦田愛菜だよ!」のモノマネのように少し揶揄される向きもあった。
しかし、学業専念休業期間を経て芸能界に戻ってきた芦田愛菜は、勉強ができて、よく本を読み博識で、演技が上手で、性格も良く、そして時に天然ボケなところを見せるスーパータレントとなっていた(この「時に天然」は大変に重要な要素である)。
そんな芦田愛菜だからして多くの企業が使いたがるのもよくわかる。しばしの間、この地位は安泰であろう。
そこで私は思ったのだ。逆にこの状況下「芦田愛菜を見ない生活」はできるのだろうか、と。
全部TVerで見ろよとか、NHKだけ見てろよとか、テレビ消せよとかいうことではなく、普通に民放テレビをだらだらつけていて、芦田愛菜に出会わないことなど不可能ではないのかという意味である。
今回はそれを検証してみた。
1日2時間のブロック毎に、民放各局で
芦田愛菜CMがオンエアされているかを調べてみた
ずっと24時間ザッピングして、出会いましたとか出会いませんでしたとか言うのは、私のチャンネルさばき次第になってしまうので、1日を2時間ずつくらいのブロックに分け、民放各局でブロック毎に芦田愛菜CMがオンエアされるかを確認するという手法で検証をした。
その結果がこれである。
06-08時 日テレ◯ TBS◯ フジ× テレ朝◯ テレ東×
08-10時 日テレ◯ TBS◯ フジ× テレ朝◯ テレ東×
10-12時 日テレ◯ TBS◯ フジ◯ テレ朝× テレ東◯
12-14時 日テレ◯ TBS◯ フジ◯ テレ朝◯ テレ東×
14-17時 日テレ◯ TBS× フジ× テレ朝◯ テレ東×
17-19時 日テレ◯ TBS◯ フジ◯ テレ朝◯ テレ東×
19-21時 日テレ◯ TBS× フジ× テレ朝◯ テレ東◯
21-23時 日テレ◯ TBS◯ フジ× テレ朝× テレ東×
23-01時 日テレ◯ TBS◯ フジ◯ テレ朝◯ テレ東◯
01-03時 日テレ× TBS◯ フジ× テレ朝× テレ東×
今回は2月11日(土・祝)の民放のCMを全録で確認している。
夜中3時~6時は各局通販でCMがなくなるので対象とせず、スポーツ中継などで提供スポンサーが変わらないことが多い14時からのブロックは3時間とした。それ以外は2時間区切りである。
検証の結果「全局で芦田愛菜を見ない時間帯というのはない」
結論としてまず「全局で芦田愛菜を見ない時間帯というのはない」というのがわかった。
すべての時間帯にどこかしらの局で必ず芦田愛菜は見られる。ド深夜の1時~3時だけ少し危うかったが、2時過ぎにTBSでワイモバのCMが流れて、本説立証。
もう少しCMの中身を見ていくと、本検証時に多かった芦田愛菜CMは、日立、SBI損保、ワイモバイルであり、この3社で約9割を占めた。
季節にもよるが、今、テレビCMの量が多い業界は、携帯電話・ネット保険・転職サイト・自動車・家電・宝くじといったあたりである。
芦田愛菜の強みはこれらの業界ほぼ全部でCM起用されているというところだ。
ただ、この週は「転職サイト」のタウンワーク(木村拓哉との共演)、「自動車」のスズキ スペーシアがシリーズの切り替え期でオンエアがほとんどなかった。いわば芦田愛菜閑散期であったにもかかわらず、これだけ各時間帯でCMが流れているのだからすごい。もし週をずらして検証すれば、全局◯というブロックが複数あったかもしれない。
ちなみに今回唯一の全局◯となったブロックは意外にも23時~1時であった。そこでも日テレは日立、TBS・テレ朝はSBI損保、フジ・テレ東はワイモバと見事にばらけていて、1社頼みではない芦田愛菜の強みがよくわかる。
芦田愛菜率でも我が道をいくテレビ東京
局による芦田愛菜率の違いも気になった。
やはり目を引くのはテレビ東京の芦田愛菜率の低さである。
テレビCMには「タイムCM」と「スポットCM」という種別があり、前者は特定の番組にのみCMが流れるようなパターンで、後者は契約している時間帯の(たとえば土日全日・平日ゴールデンタイムみたいな)どこかで流れるようなパターンだ。
芦田愛菜が出ているのは比較的スポットCMで流すような企業広告だが、テレビ東京は釣り番組の釣具メーカーや、アニメ・特撮のおもちゃメーカーなどタイムCM率が高い。そういった事情もあり、芦田愛菜率が比較的低かったと思われる。
あとはさすが唯一のレギュラー番組『博士ちゃん』放送時のCMは芦田愛菜祭り。スズキ スペーシアの芦田愛菜バージョンCMはここだけで流れていた。
この4月に名門大学への進学が決まったと噂される芦田愛菜。
進学後の仕事のペースをどうするかはまだわからない。
しかし今の好感度からすれば、引き続き多くの企業が彼女をイメージキャラクターとしたいと考えるだろう。世間の優等生イメージを一身に背負う苦労は並大抵ではないだろうが、小さい頃から表舞台に立ってきた彼女なら、きっと涼やかな笑顔でこなしていくだろう。
「芦田愛菜をテレビで見ない日」は、たぶんしばらく訪れない。
文/前川ヤスタカ イラスト/Rica 編集協力/萩原圭太