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 全国的に増加が問題となっている空き家。総務省が行った直近の調査によると、全国の空き家は848万9千戸、空き家率は過去最高の13.6%となっている(『住宅・土地統計調査』より)。同じ“使われていない家”でも、近年、“空き別荘”が増えているという。

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「空き別荘が増加したのは、所有者が亡くなったなど、空き家の増加とほぼ同じですが、祖父母が購入した別荘を息子世代・孫世代がまったく利用せず、訪れることがなくなったからという理由が多いです。利用しなくても固定資産税などのコストはかかります。修繕までして利用するつもりはないし、そもそも別荘に行くことに魅力を感じていない。そのため空き家状態となった別荘を格安でもいいから売りたいという人は増えており、最近耳にすることの多くなっている“0円物件”も珍しくありません」(不動産関係者) 

 都内在住の会社員・Aさんは、数年前、山梨県の別荘地にある物件を友人の紹介で0円で取得した。窓からは富士山が望める。

「子どもも大きくなり、一緒に出かけることもなくなったので、週末をひとりで過ごせる別荘があったらいいなと思っていたところ、最近増えている0円物件の話を耳にして購入するに至りました」(Aさん、以下同)

 結果的にAさんはこの“0円物件”を、2年後に250万円で売却することに成功した。なぜそのような“別荘わらしべ”ができたのか。

格安物件は“それなり”の物件

「自分は友人の紹介でしたが、空き家の増加もあって0円物件を紹介するサイトはたくさんあります。別荘地であれば管理費もかかり、固定資産税などのコストがかかる。また、規約で別荘の使用方法が規制されていることもあるので、物件を早く手放したいと考える人も少なくない。なので案外、伊豆や熱海、軽井沢、那須といったいわゆる有名別荘地でも格安物件はあるようです」

 有名な避暑地の別荘を購入するなど夢のまた夢。それは大金持ちにしか叶えられないもの……では、なくなったのかもしれない。

「ただ、0円でも数万円でもいわゆる格安物件というのは、“それなり”で、修理が必要な状態のものが多い。ちゃんときれいに維持された物件であれば、ある程度の値が付きますし、売れます。自分が購入した0円物件は、ずっと使われていなかったのでゴミ屋敷のような状態でした。それを掃除し、直せるところは直していきました」

 Aさんは最低限の泊まれる環境を整えた以降は、週末に0円別荘に泊まりながら徐々に過ごしやすいように直していったという。

「ウッドデッキを作ったり、外壁を塗り直したりしましたが、やり方は全部ネットで調べました。建築関係の仕事をしている友人に手伝ってもらったりはしましたが。一気に理想の姿にしようとはせず、週末に作業がてら泊まって、徐々に徐々にという感じです」

 当然ながら修繕にはお金がかかる。とはいえ、かかった費用は30万円ほどだったという。

「とにかくやれることは自分でやりました。廃材なども業者に頼めば数万円かかるようなところを、軽トラを借りてすべて自分で処分しました。週末に別荘を訪れて、直していくことを楽しく感じていたからできたのだと思います」

リフォームした別荘を売却した理由

 別荘を所有するに至っては、たとえ0円物件だとしても諸経費が必要となり、厳密には“0円”では済まない。取得時には登記費用や固定資産税、0円物件は“贈与”とみなされるので贈与税が発生、その後も火災保険料や、光熱費などがかかる。

「正直、そのあたりの費用はそれほどかかりませんでした。物件としての評価額が低いからです。たとえば贈与税であれば、110万円の基礎控除があるので、物件の評価額が110万円以下の場合は課せられません」

 自らの手で直したお気に入りの別荘をなぜ売りに出したのか。

「ある程度、納得できるところまで直したら、この物件に“飽きて”しまって(笑)。また似たようなことをしたいなと思って、ネットで売りに出しました。今はそういったサイトもたくさんあり、数人の方に内見してもらい、250万円で売れました。それで近隣に別の別荘を購入しました。今はまた1軒目と同様に楽しみながら直しています。またこれもある程度のところで売却したり、民泊用物件として利用できたら嬉しいのですが(笑)」

 趣味的に楽しみながら、お金の持ち出しを抑えて別荘を入手できることは非常に魅力的だが……。

「空き家の増加に伴って紹介サイトなども増え、そういったところでは“セカンドハウス”だの“田舎暮し”だの、”“DIY”、“リノベーション”だったり一見楽しそうで魅力的な言葉で喧伝されています。しかし、そんな華やかなものではありません。たとえば初めのころは、ストーブなどの暖房器具が何台必要なのかわからなかったので、凍えそうになりながら夜を過ごしました。ゴミ出しも何往復したかわかりません。ホコリもすごかったですし、虫も……。出費以上に重要なのは、そういったことも含めて“楽しめるのか”だと思います。自分は直す工程の単純作業なども好きですが、“豊かな自然の中で週末を過ごしたい”くらいに思っている人にはできないと思います。もちろん、多額の費用をかけられるなら問題はないのですが」

“理由なき別荘”はいずれ空き家になる

 別荘地は当然ながら地方である。あえて悪い表現をすれば田舎だ。

「別荘を所有するうえで大事なのは、“本当に行くのか?”ということです。まずメインの住居からどの程度の距離なのか。数時間かかるようなところに自分は頻繁に行くのか。新幹線である程度近くても、別荘地では車がなければ身動きが取れません。シーズンに1回利用する程度では、建物はどんどん傷んでいくでしょう。

 また、別荘に行って“することはあるのか”。これも年1回程度であれば“何もしない”ことが癒やしになるかもしれませんが、それは本当のお金持ちの使い方でしょう。年1回のために数十万円ほどの維持費をかけるわけですから。自然の中で焚き火をしたり、食事をすることが好きだったり、海沿いの別荘であればマリンスポーツが好きだったり、“理由”のない人は別荘を所有しても絶対に行かなくなります。断言しますが、“この格安物件、海沿いでテラスもあって、ここで過ごすの気持ち良さそう”くらいに思っている人はいずれ飽きて行かなくなりますし、そもそも過ごせるほどに直すことにも飽きるでしょう。暑すぎたり寒すぎたり、別荘地は環境として通年気持ちいい場所ではありませんし。

 格安物件は“使われなくなった”から格安なわけです。それを購入して使わないのであれば本末転倒で、結果また同じ“空き物件”となってしまうと思います」

 人にとっては負の遺産でも、“物件”はある。それがときに利益を生む可能性もある。それを生かすか再度殺すかは所有者次第……。