再利用可能なカプセル型宇宙船の開発を進める欧州のスタートアップ企業が資金調達を実施
欧州のスタートアップ企業「The Exploration Company(ザ・エクスプロレーション・カンパニー)」は2023年2月1日、シリーズAの資金調達を行ったと発表しました。資金調達金額は約4400万ドルです。
【▲ The Exploration Companyが開発を進める再利用可能なカプセル型宇宙船「Nyx(ニュクス)」の想像図(Credit: The Exploration Company)】
同社は地球低軌道の宇宙ステーションへ物資や実験機器などを輸送することを目的とした、再利用可能なカプセル型宇宙船「Nyx(ニュクス)」の開発を進めています。また、将来的には宇宙飛行士が乗り込む有人型宇宙船の開発も視野に入れています。
シリーズAの資金調達は、2023年後半に打ち上げが予定されている同社の再突入実験機「Bikini」の試験へ向けて大きな一歩となりました。Bikini は2023年に打ち上げが予定されている欧州宇宙機関(ESA)が開発した新型ロケット「アリアン6」に搭載されます。
【▲ 欧州の新型ロケット「アリアン6」の想像図(Credit: ESA - D. Ducros)】
The Exploration Company社の共同設立者兼CEOであるHélène Huby氏は、プレスリリースで開発計画について説明をしています。
まず、前述のBikiniは重量40kg・直径60cmという小型の実験機で、ミッションでは温度保護の試験や、今後さらに大きな形のカプセルを開発するための検証が実施されます。
2024年には、より大きな重量1600kg・直径2.5mのカプセル型の試験機が打ち上げられる予定です。この試験機にはより制御された再突入を行うための推進システムやパラシュートが搭載され、ESAをはじめとする顧客のペイロードを積み込んで地球低軌道を飛行する予定となっています。宇宙開発メディアSpaceNewsによると、同社は既にスペースX社・ファルコン9ロケットの打ち上げを予約しているということです。
そして2026年には、さらに大きなNyxの実物大試験機の打ち上げが予定されています。Nyxの重量は8000kg・直径は4mで、4000kgのペイロードを搭載して最大半年間軌道上に滞在でき、2600kgのペイロードを1kgあたり20000ユーロのコストで地球へ帰還させることが計画されています。
Huby氏はSpaceNewsの取材に対して、2027年にNyxを国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングさせる計画に先立ち、正確な運用ができる能力を実証するために、実物大試験機は軌道上に数か月間滞在できるように設計されるということです。
同社はISSのみならず、今後建造される民間宇宙ステーションへの輸送に対するヨーロッパの需要を見込んでいます。既に欧州では、ルクセンブルクに拠点を置く民間企業Space Cargo Unlimited(スペース・カーゴ・アンリミティッド)がタレス・アレニア・スペース社との間で無人宇宙船「REV1」の設計と製造に関する初期契約を結んでおり、地球低軌道への物資輸送の需要は今後も高まりそうです。
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Image Credit: The Exploration Company, ESA - D. DucrosSpace News - European startup gets $44 million for space station transportation vehiclesLinkedIn - The Exploration CompanyESA - ESA selects payloads for Ariane 6 first flight
文/出口隼詩