試合を決めた久保建英と堂安律。明暗が分かれたヨーロッパリーグの日本代表選手たち
ヨーロッパのカップ戦では、日本人選手はかつてないほど多くのチームで存在感を見せている。
チャンピオンズリーグ(CL)では旗手怜央、古橋亨梧、前田大然(セルティック)、鎌田大地(フランクフルト)、守田英正(スポルティング)が奮闘。第2節のマルセイユ戦では、フランクフルトのバックラインを司った長谷部誠のクレバーさは堂に入っていた。すでに代表を引退しているが、頭を下げて戻ってもらうことも考えるべきではないか。
ヨーロッパリーグ(EL)でも、日本人選手の進撃は続いた。第2節は、エリザベス女王の逝去によりアーセナルのPSV戦が延期になり、冨安健洋の出場はなかった。一方で、久保建英(レアル・ソシエダ)、堂安律(フライブルク)は破格の活躍を見せた。両チームはともに大会2連勝目で、ふたりは試合を決めるプレーをした。
森保一監督は、その躍動を代表に還元できるか?
オモニア・ニコシア戦に後半16分から出場した久保建英(レアル・ソシエダ)
今シーズンの久保はレアル・ソシエダで、イマノル・アルグアシル監督の采配によって我が世の春を謳歌している。
アルグアシル監督は、久保の長所を評価している。それは、高速プレーのなかのひらめきと技術の高さと言えるだろう。「守備が足りない」「フィジカルコンタクトが弱い」などと短所を列挙することはせず、攻撃的才能を最大限に引き出している。ダビド・シルバ、ブライス・メンデス、ミケル・メリーノ、アレクサンダー・セルロートなど左利きを多く集めた布陣も特徴的だ。
EL第2節のオモニア・ニコシア戦は、マンチェスター・ユナイテッドに敵地で劇的勝利を収めた第1節に比べれば、力が落ちる相手だったこともあるだろう。ダビド・シルバなどは温存。1軍半の陣容だった。
久保も後半16分、モハメド・アリ・チョと交代で途中出場になっている。4−3−1−2のトップの一角に入ると、すかさずフィットした。中盤まで落ちてプレーを展開させ、フリーランニングで味方の走るコースを与え、ワンツーからゴールにも突っ込むなど、クレバーさとゴールへの迫力を見せた。
右サイドを支配していた堂安律ただし、ヨーロッパの舞台に出てくるチームは曲者ばかりで、1−0のリードから一度は追いつかれてしまう。そこからが久保の真骨頂だった。
80分、ハイラインの相手との攻防から裏に走り出してパスを呼び込む。猛然とゴールへ向かうと、最後は迫ってきた相手ディフェンスの股を抜くラストパス。華麗な一撃で、セルロートの決勝ゴールをアシストした。アイデア、判断力、そして技術と完璧だった。
その後、久保は4−3−3の右サイドでプレーしている。相手のサイドからの攻撃をしっかり防ぎながら、自陣からのドリブルで敵陣を駆け抜け、ミドルで脅かすなど、老獪さ、剛胆さを感じさせるプレーだった。アディショナルタイムに、ブライス・メンデスが左から折り返したパスを左足でシュートするも右に逸れた場面は、彼の技術ならゴールに流し込みたかったが......。
「久保のすばらしいアシストをセルロートが決め、黄金の勝ち点3をもたらした」
大手スポーツ紙『アス』は、2−1での勝利の殊勲者に久保を挙げている。
「追いつかれたあと、最悪の事態も考えられたが、久保が偉大なパスでセルロートのゴールをお膳立てした」
また大手スポーツ紙『マルカ』も、セルロートと並び久保にチーム最高の二つ星(0−3の4段階評価)をつけた。
一方、堂安のプレーも質が高かった。
ギリシャのオリンピアコス戦、堂安は先発で出場すると右サイドに入った。開始早々、相手を置き去りにした後、背後からファウルを受けると、そこで得たFKから先制に成功。その後もワンツーからドリブルで割って入ったり、ドリブルでふたりを外したあとに強烈な左足シュートを放ったり、右で幅を作って攻撃を促したり、右サイドを中心に試合を支配した。
プレー強度の高さは、攻撃だけでなく守備でも顕著だった。
敵のカウンターの場面ではいち早く帰陣し、攻め手を封じた。また、味方と連携して挟み込み、何度もボールを奪い返していた。相手にほとんど手を出させず、3−0と勝利を飾ることができたのは、エネルギッシュだった彼の貢献が大きいだろう。69分にはベンチに下がっている(その後、負傷したとの情報があり、心配される)。
ふたりに比べてやや苦戦したのが、ウニオン・ベルリンの原口元気だろう。ポルトガルのブラガとの敵地戦では、68分から5−3−2の右ボランチで出場した。しかし、終盤に失点を喫し、チームは1−0と敗北した。CKのこぼれ球を身体を投げ出してマイボールにするなど、原口のプレーは献身性は際立った。局面でのコンタクトプレーの強さも特筆に値した。ファウルになってしまう場面も多かったが。
心配なのがモナコの南野拓実か。ハンガリーのフェレンツバロシュとの一戦は、メンバー入りしたものの試合出場はなかった。チームがホームで0−1と敗戦したにもかかわらず、だ。フランスリーグは、激しいコンタクトやひとりでやりきるようなプレーが求められるだけに、適応に戸惑っているのかもしれない。
ともあれ、これだけ日本人選手が欧州の舞台に立っていることは、「朗報」と言えるだろう。久保、堂安のふたりは、このところ森保ジャパンでは冷や飯を食わされてきたが、起用法次第で世界と互角にやり合える。それがELの舞台で示された。
久保、堂安をどう使うか。同じ左利きで相性もよく、ふたりを一緒にピッチに立たせることで、思った以上の効果もあるだろう。もし彼らを有効利用することができないとすれば――それは指揮官の器の問題だ。