堂安律の決勝弾で首位奪取。スター選手がいないチームの強さの秘密を語る
ブンデスリーガ第5節、レバークーゼン対フライブルク。2−2で迎えた71分、この日の決勝点を決めたのは堂安律の左足だった。
マティアス・ギンターの右CKを、ニアのニコラス・ヘフラーがヘディングでファーに流すと、堂安は相手DFに寄せられながら、左足で合わせポストのぎりぎり内側にシュートを決めた。堂安は今季これでリーグ戦2ゴール目。第5節にして今季初めて先発を外れ、この日は46分からの出場となった。理由はここまでのパフォーマンスの影響か、それとも木曜日に控えるヨーロッパリーグ(EL)カラバグ(アゼルバイジャン)戦のためかはわからないが、少なくとも発奮材料にはなったようだ。
チームは第5節終了時点で首位に立った。バイエルンが2節連続で引き分けたこともあり、暫定でもなんでもなく、1週間はこのまま首位の期間が続く。
レバークーゼン戦で決勝ゴールを決めた堂安律(フライブルク)
フライブルクは昨季6位でフィニッシュしてEL出場権を獲得したが、現状ではドイツ代表はゼロ。6月の代表期間にドイツ代表に選出されたニコ・シュロッターベックはこの夏ドルトムントに移籍している。同時期に活動していたU−21ドイツ代表にもフライブルクの選手はいない。
スター選手の爆発力ではなく、いかに集団として戦うかが求められるチームだ。クリスティアン・シュトライヒ監督のもと、選手には真面目に走り、守備をする規律がまず求められる。そんなチームに、どちらかといえば異端児キャラの堂安は、最初からフィットしているように見える。堂安はフライブルクのサッカーに関してこう言う。
「それ(サボらないサッカー)がたぶんフライブルクの持ち味だと思いますし、ホントにしぶといチームだと思う。ひとりひとりが球ぎわで戦って(いるから)、やれてるチームなので。逆にそれがなければ、足元のクオリティだと他のチームのほうが良い時はもちろんあるので、そうではなく、1対1のところとか、メンタル的なところは強いし、なにせひとつになっているチームだと思います」
その言葉どおり、フライブルクで見る堂安は、献身的でありながら、なおかつゴール前での脅威になろうと懸命だ。
監督といい関係を築けたただ、現状にはまだ満足してはいないと言う。特に、攻撃面でまだまだ周囲との相互理解が必要なのだとか。1−0で勝利した先週のボーフム戦後には、次のように話していた。
「(チームとの関係は)まだまだですね。ほしい時にボールは出てきてないですし、特に前半なんかはボールに関与する時間は少なくて、後半はよかったですけど、もっと自分のよさを理解してもらわないといけないですし、まだまだほど遠いです。監督が信頼して使ってくれてるのはすごく感じているので、そこにしっかり応えられるように頑張りたいです」
ゴール前に走り込み、必死で存在をアピールするシーンが何度も見られたが、「体がちっちゃいんで(笑)、それくらいやらないと」と、笑いながら説明する。チームとの関係だけでなく、自身のボールタッチ、フィーリングもまだまだなのだという。
「完璧にはほど遠いです、まだ。ほど遠いですけど、勝っているというのが気持ち的にはやっぱりでかくて、それで自信も大きくなります。これでもし、完璧じゃないなと思いながらチームが負けてると気持ち的にしんどいので、そこで勝ちきれているというのは大きいなと思います」
チームの勝利に加えて、自身の得点という結果が出ているからこそ、うまくいかなくても苦しまずにすんでいる、というのが現状認識だった。
堂安の入団にあたって、シュトライヒ監督が獲得を熱望し、入団前から起用法やシステムについて堂安とち密なコミュニケーションをとったということは、ドイツメディアでも話題になった。獲得に際してフライブルクが前所属のPSVに払った移籍金は800万ユーロ(約11億円)と言われており、これはクラブ史上最高額だ。その数字に期待の大きさが表れている。
「シュトライヒ監督は熱い監督ですね。想像どおりです。ベンチを見てたらわかると思います(笑)。入団前からかなりコミュニケーションを取りましたし、その時だけじゃなくて、今もコミュニケーションを取ってます。僕の発言をすごく聞いてくれる監督なので。こうしたいとか。すごくいい関係を築けていると思います」
W杯と逆になったELの組分け指揮官の要求は、規律と自由との線引きが明確なのだそうだ。
「攻撃に関しては『自由にしてくれ』と言われてるんで、今日(ボーフム戦)みたいにアクション起こしたのなんかは監督が求めていることですし。うちのオフェンス陣は、なかなか個人で打開できる選手が少ない。どちらかというと走れる選手とか、パスがうまい選手はいますけど、1対1で打開できる選手がいないので、『それをやってくれ』というのは言われてます。
あとは守備ですね、守備のところではかなり言われます。ビーレフェルト時代に想像したとおりでしたけど、これほどとは(思わなかった)。1メートル、2メートルの立ち位置に厳しい、細かい監督で、本当にミーティングはそれくらいこだわってやるので、そこは想像以上でした」
木曜日には堂安にとっては3度目の、クラブにとっては2013年以来となるEL本戦が始まる。
「ポジティブにとれば、いいグループ(カラバク、オリンピアコス、ナント)ですけど、悪くとれば楽しくないなって(笑)、どちらも言えるな、と。ただ、チームとして上に行きたいので、クジ運がよかった。W杯の(日本の)クジ運と逆ですね。W杯は相手が強くて嬉しい、楽しみだなっていう気持ち、難易度は上がるけど。ヨーロッパリーグはウチも勝てそうな雰囲気はあるので、強いチームとやりたいというのもあるけど、サッカー選手として気持ちは半々。(昨季は)フランクフルトが優勝したんで、可能性は全然あると思います」
早くも決勝トーナメントに思いをはせるが、フライブルクの国内での好調ぶりを見ればそれも無理からぬ話だろう。堂安はいま、チームに献身的でありながら、生き生きとサッカーをしている。