ウクライナ戦争が泥沼化し、西側諸国がロシアへの締め付けを強化する中、仮想通貨が経済制裁の抜け穴になるのではと危惧する声が上がっています。ロシアの仮想通貨マイニング企業を制裁対象に追加するなど、ブロックチェーンの分野でも対ロシアへの圧力を強めているアメリカ政府が、日本政府にロシア包囲網強化を要請したとFinancial Timesが報じました。

US urges Japan to step up pressure on crypto miners with links to Russia | Financial Times

https://www.ft.com/content/639be0d5-04a2-4b3a-90eb-a18139f6e769

Financial Timesは2022年7月8日に、日本政府に認可されロシアで営業を続けている31の仮想通貨マイニング業者の一部を停止させるよう、アメリカが日本に要請したと報じました。同紙に情報を寄せた2人の関係者によると、アメリカの外交官はシベリアのイルーツク州にあるマイニング業者の閉鎖に特に注力するよう求めたとのこと。この地域は、寒冷な気候により冷却に有利で安価な水力発電も利用できるため、マイニングに適しているとされています。



by Marco Verch Professional Photographer

要請を受けて、日本の金融庁は同庁が監督している仮想通貨取引所にロシアとの関係を終わらせるよう改めて要求したと、3つの仮想通貨取引所の関係者がFinancial Timesに証言しました。日本の仮想通貨マイニング業者がロシアで活動していることをアメリカが指摘したのは、プーチン大統領への圧力を維持するための取り組みの一環であると指摘されています。

今回の要請についてコメントを求められた金融庁と在日アメリカ大使館は回答を控えましたが、アメリカの国務省は「アメリカとその同盟国はウクライナに対する戦争についてロシアに責任を取らせるという決意を共にしています。我々は我々の措置の影響を吟味し続けており、さらなる措置を取る用意もあります」と述べました。

国内にある仮想通貨取引所の取り締まりを所管している金融庁は、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻を受けて迅速に対応しており、3月14日には制裁対象者の口座を凍結させるよう求める通達を出しています。

この通達は直接ロシアでの事業を停止させることを指示したものではありませんが、一部の企業はそのように解釈し、速やかにロシアでの操業を停止しました。日本の仮想通貨取引所であるDeCurretもその1つとのこと。



by Marco Verch

Financial Timesが接触した仮想通貨マイニング業者の多くは、ロシアでは営業を行っていないと話しました。また、ある仮想通貨取引所の幹部は、アメリカによる要請を受けてロシアとの関係を断ったマイニング業者が最低でも1つあると述べています。

しかし、いくつかの仮想通貨取引所やマイニング業者は、子会社の複雑なネットワークを発達させてロシアでの営業を維持しているとされています。匿名を条件に取材に応じたある取引所の元責任者は、「ある仮想通貨取引所が最近、あらゆるマイニングとバックオフィス業務をロシアから移転させるよう圧力をかけられました」と話しました。

その情報提供者はFinancial Timesに対し、「シンガポールにペーパーカンパニーを作り、その会社を経由して支払いを行うことで規制を回避してロシアとのつながりを保っている取引所を1つ知っています」と証言しているとのことです。