「核武装論者」と「9条論者」が非常に似ている理由
ロシアによるウクライナ侵攻は、日本にも大きな影響を与えている(写真:clear_eye/PIXTA)
中野剛志(評論家)、佐藤健志(評論家・作家)、施光恒(九州大学大学院教授)、古川雄嗣(北海道教育大学旭川校准教授)など、気鋭の論客の各氏が読み解き、議論する「令和の新教養」シリーズ。
前編ではウクライナ情勢をめぐって、「ナショナリズム」の視点から論じた。後編ではロシアのウクライナ侵攻以後の日本の言説をめぐって徹底討議する。
自己矛盾に陥る保守派たち
中野:ロシアのウクライナ侵攻は日本にも大きな影響を与えています。メディアの世論調査を見ると、「東アジアで同じようなことが起きたとき、どうするのか」という不安がかなり強くなっていることが読み取れます。
これから世界で起きること、すでに起こっているにもかかわらず日本ではまだ認識が薄いテーマを、気鋭の論客が読み解き、議論します。この連載の記事一覧はこちら
「憲法9条があるから大丈夫だ」という声は今回ばかりはさすがにあまり出ていません。一部の軽率なタレントがウクライナは降伏すべきだなどと言っていましたが、視聴者からは、日本で有事が起こったときも同じことを言うのかと、大変な顰蹙を買いました。一昔前なら「降伏する勇気を持とう」などと主張する連中がもっと出てきたはずなのですが、日本の雰囲気もだいぶ変わったなと思います。
日本政府の対応も結構踏み込んでいて、ウクライナに防弾チョッキを送ったり、NATO(北大西洋条約機構)の外相会合に林外務大臣が出席したりするなど、昔ならもっと大きな問題になったようなことを立て続けに行っています。ロシアに対する経済制裁も、サハリンの問題があるにせよ、躊躇なくやっている印象を受けます。戦後の秩序が壊れつつあると言うか、風穴が開いた感じがします。
佐藤:戦争とは「力による現状(=既存の秩序)への挑戦」です。したがって戦争が世界に与えるインパクトの強さは、どんな秩序に挑戦しているかに左右される。今回の事態について「世界では他にも紛争が多々あるのに、なぜウクライナばかり大騒ぎするのか」という声がありますが、こう考えれば何も不思議なことはない。
現在、ロシアが挑戦している秩序は、まずアメリカの覇権であり、さらには自由民主主義体制の優越です。第2次大戦後、わけても冷戦終結後の基本的な枠組みをくつがえそうとしている。ついでに世界的なエネルギー不足や、食料危機が生じる恐れまであるのですから、大騒ぎにならないほうがおかしい。日本国内の反応に見られる特徴も、これと無縁ではないでしょう。つまりは自分たちの存立の基盤が揺るがされているのです。
保守派の人たちの言説への違和感
施:そこで私が気になるのは、保守派の人たちの言説です。日本では保守派もロシアを厳しく批判していますよね。リベラル派の人たちがロシアを批判し、「ロシアが戦後の国際秩序を力によって破壊しようとしている。我々はロシアを批判し、戦後秩序を守らなければならない」と主張するのはよくわかります。彼らはリベラルな戦後秩序を重視しているわけですからね。
施 光恒(せ てるひさ)/政治学者、九州大学大学院比較社会文化研究院教授。1971年福岡県生まれ。英国シェフィールド大学大学院政治学研究科哲学修士(M.Phil)課程修了。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程修了。博士(法学)。著書に『リベラリズムの再生』(慶應義塾大学出版会)、『英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちる』 (集英社新書)、『本当に日本人は流されやすいのか』(角川新書)など(写真:施 光恒)
しかし、保守派が何の留保もつけずに戦後体制や戦後の国際秩序を守る側に立っているのを見ると、現実的に考えればそういう立場をとらざるをえないということなのかもしれませんが、違和感を覚えます。
古川:私も同感です。ウクライナが表明している歴史観に立つなら、今回のロシアの侵攻はアメリカを中心とするリベラルな国際秩序に対する挑戦ですから、ゼレンスキーが真珠湾や昭和天皇をもち出して、ロシアを戦前の日本になぞらえるプロパガンダを発信するのは当然です。
そのウクライナを支持するということは、要するにいわゆる東京裁判史観を受け入れることになってしまいますから、本来、保守派はそう安易に全面的なウクライナ支持は表明できないはずです。せめて苦々しい思いくらいはもっていないとおかしいと思うのですが、昭和天皇の写真が出て慌てている人たちなんかをみていると、どうもそのへんのことがわかっていないんじゃないかという気がしましたね。
佐藤:国のあり方について、どちらも真剣に考えてこなかったことが露呈されたと見るべきでしょう。左派が信奉する平和主義とは「アメリカの覇権に依存しながら、自立したつもりになってダダをこねる」というもの。だからロシアが当の覇権に正面切って挑戦し、武力なしには秩序が守れない現実に直面させられると、アイデンティティが破綻してしまう。できることと言えば、戦時下では守られるはずのない「人道」に執着し、「今すぐウクライナに平和を!」と叫ぶくらい。
ならば保守はどうか。彼らは国際秩序に挑戦した戦前の日本を評価している。にもかかわらず日米同盟重視で、アメリカの覇権に支えられた戦後の国際秩序を肯定することにもこだわっている。となれば「プーチンにはプーチンの正義があるのではないか」などと主張できるはずがない。冷戦の勝ち組という、自分たちの足場まで揺らぎますからね。
けれども国際秩序への挑戦を全否定してしまうと、戦前の日本も肯定できなくなってしまう。この点を頰被りしてすませることができればいいのですが、ゼレンスキーがアメリカ議会の演説で、ロシアの侵攻を真珠湾攻撃と重ねてみたり、ウクライナ政府が昭和天皇をヒトラーやムッソリーニと同列に扱ったりして、矛盾を突きつけてくる。するとこちらもアイデンティティが破綻してしまい、感情的に反発する。
左派が「理想主義を装った御都合主義」なら、保守は「現実主義を装った御都合主義」だったのです。危機の前にはどちらも無力、そういうことではないでしょうか。
アメリカは日本を守るのか
中野:今回の戦争で明らかになったように、アメリカは海外に自国の軍隊を送ることに後ろ向きになっています。彼らはウクライナに武器は供与していますが、当初から軍隊を直接送ることは明確に否定していました。そのため、仮に台湾や日本で有事が起こった際、アメリカがどこまで関与するのかが見通せなくなっています。
古川 雄嗣(ふるかわ ゆうじ)/教育学者、北海道教育大学旭川校准教授。1978年三重県生まれ。京都大学文学部および教育学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。専門は、教育哲学、道徳教育。著書に『偶然と運命――九鬼周造の倫理学』(ナカニシヤ出版、2015年)、『大人の道徳 西洋近代思想を問い直す』(東洋経済新報社、2018年)、共編に『反「大学改革」論――若手からの問題提起』(ナカニシヤ出版、2017年)がある(写真:古川雄嗣)
施:日本にとって喫緊の課題は、中国が尖閣諸島に攻め込んできたときにどうするかです。日本は総理大臣が新しくなるたびにアメリカの大統領に対して「尖閣が攻められたとき、日本を守ってください」とお願いし、「守ってやる」と言われて喜ぶというやり取りを繰り返しています。日本はウクライナと違ってアメリカの同盟国ですから、中国が日本に攻めてきた場合、アメリカがそう簡単に見捨てることはないと思います。しかし、日本が自ら戦う意思を見せない限り、アメリカが日本のために戦うことはないでしょう。
他方、台湾有事に関しては、アメリカが軍隊を送ることは難しいと思います。ウクライナと同様、武器の供与や後方支援が中心になるのではないでしょうか。
古川:一般論というか、そもそも常識の問題として、一国の国民が、まずは自分の国は自分で守るという気概を示さない限り、いくら同盟関係にあるからといって、その国を守るために他国の国民が進んで犠牲になるなんてことはありえないでしょう。仮に軍隊を送ったとしても、「自分たちは死にたくないから、代わりにアメリカ人が死んでください」なんて平気で言う国民を守るために、アメリカ軍の士気が上がるとは到底思えません。早々に撤退するのがオチじゃないでしょうか。
佐藤:日本の場合、軍隊を送るまでもなく、すでに在日米軍がいる。ついでに安保条約は軍事同盟です。その点で、NATOに加盟していなかったウクライナとは違うものの、じつはウクライナもアメリカやNATOとの軍事的な結びつきを強めていた。
2020年6月、ウクライナはNATOの高次機会パートナー(Enhanced Opportunities Partner、EOP)になっています。これにより、NATOの作戦立案への参加や、全訓練へのアクセス、NATO本部や指揮機構でのポスト就任などが可能になった。つまり「準会員」にはなっていたのです。
さらに2021年11月には、アメリカとの「戦略的パートナーシップ憲章」がアップデートされています。ここではクリミア併合や、ウクライナ東部の内戦にたいするロシアの関与が批判され、ウクライナの主権と独立、および領土の一体性を維持するために断固として取り組むことが謳われました。NATOとの連携能力の強化についても、支援すると明記されている。
ところが、そのウクライナにロシアが武力侵攻し、核兵器の使用までちらつかせているのに、アメリカは軍隊を送ろうとしない。NATOも同様です。ゼレンスキーはウクライナ上空を飛行禁止区域に設定し、ロシア空軍の侵入を阻止するように求めていますが、NATOは拒んだまま。こうした状況を踏まえれば、日米安保条約があるからと言って、アメリカが日本のためにどこまで戦ってくれるかは疑問でしょう。
むろん在日米軍が攻撃を受けたら、反撃しないわけにはゆきません。そうでなくとも、日本が攻撃されているのに在日米軍は傍観を決め込むとなったら、アメリカの国際的信頼は丸つぶれ。しかし日本本土ならともかく、尖閣諸島となると微妙と言わざるをえない。戦後日本の保守は「アングロサクソン至上主義」を決め込み、アメリカと組んでさえいれば大丈夫と構えてきましたが、もはやその考えは通用しないと思います。
中野 剛志(なかの たけし)/評論家。1971年、神奈川県生まれ。元・京都大学工学研究科大学院准教授。専門は政治経済思想。1996年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。2001年に同大学院より優等修士号、2005年に博士号を取得。2003年、論文‘Theorising Economic Nationalism’ (Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に山本七平賞奨励賞を受賞した『日本思想史新論』(ちくま新書)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『富国と強兵』(東洋経済新報社)、『小林秀雄の政治学』(文春新書)などがある(撮影:尾形文繁)
中野:アメリカが日本にために何かやるとすれば、ウクライナと同様、せいぜい武器の供与や経済制裁くらいでしょう。しかし、武器供与とは要するにドローンなどを日本に送って、「自分たちは戦わないが、お前らはこれを使って自分たちで戦って国を守れ」ということですからね。経済制裁にしても、ロシアと中国では経済規模が全然違うから、中国に厳しい経済制裁を科せば自分たちも大変なダメージを受けることになります。だから、より穏当な制裁になる可能性がある。
それから、中国は別に東京を陥落させようとしているのではなく、尖閣や台湾をはじめとするいわゆる「第一列島線」を押さえ、いざとなったらシーレーンを押さえることで、日本をいつでも干上がらせることができる状態に置こうとしているのです。彼らは最初から米軍基地のあるところを攻めようなんて思っていないのです。
尖閣にしても台湾にしても、ウクライナのように面積が大きくないから、中国が占領しようと思えばあっという間でしょう。違いがあるとすれば、ウクライナはロシアと陸続きですが、尖閣や台湾は海に囲まれているという点くらいでしょう。しかも、台湾はまだしも尖閣は人が住んでいないから、尖閣を占領したって人道上の危機は生じません。だから中国が尖閣に攻め込んでも、どれだけ国際的な非難があるかわかりません。それほど日本は不利な状況に置かれているということです。
日本は核武装すべきか
施:こうした国際情勢を受けて、日本では核兵器をめぐる議論が行われるようになっています。安倍元総理がアメリカとの核シェアリングについて議論すべきだという問題提起を行ったことが話題になりました。
しかし、ただでさえアメリカに依存しているのに、核兵器まで共有するようになれば、さらにアメリカ依存が強まってしまう恐れがあります。核兵器について議論するなら、核共有にとどまらず、核武装にまで踏み込むべきです。現に、フランスのエマニュエル・トッドは、日本は核武装すべきだと提言しています。日本が国際情勢の荒波に引きずられず、自律性を保つためにも、核武装の是非について大いに議論すべきだと思います。
佐藤 健志(さとう けんじ)/評論家・作家。1966年、東京都生まれ。東京大学教養学部卒業。1990年代以来、多角的な視点に基づく独自の評論活動を展開。『感染の令和』(KKベストセラーズ)、『平和主義は貧困への道』(同)をはじめ、著書・訳書多数。さらに2019 年より、経営科学出版でオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻を経て、現在『2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却』全3巻が制作されている。オンライン読書会もシリーズで開催(写真・佐藤健志)
佐藤:憲法9条は自衛権を否定しないと解釈されている以上、核兵器を持つこと自体はべつに違憲ではない。先制使用は無理ですが、あとは民意次第でしょう。時代の風向き次第では、日本が核武装に踏み切ることはありうると思います。
ただ、ウクライナ戦争を見ればわかるように、いま起きていることは核兵器の通常兵器化です。核兵器を使用することのハードルが低くなっており、事と次第によっては使っても構わないという雰囲気が広がりつつある。こちらが核兵器を持ったからといって、相手が(核を含めた)攻撃を仕掛けてこないとは言い切れません。
核兵器は大した抑止力にならない恐れがあるのです。エネルギーや食料の自給体制を強化したり、ハイブリッド戦に備えて、防衛省の「サイバー防衛隊」を拡充したりするほうが、すぐできるし、安全保障への貢献も大きいのではないでしょうか。
核兵器が抑止力にならない理由
中野:私も核兵器は抑止力にならないと思っています。特に相手が中国の場合、核武装をしたところで日本を守れるとは思えません。
これには3つの理由があります。第1に、日本と中国では国土面積が全然違うということです。核武装さえしていれば外国からの核攻撃を抑止できると言われていますが、それでも中国が核の使用を決断した場合、どうするのか。お互いに核兵器を撃ち合うことになれば、先にギブアップするのは面積の狭い日本です。しかも、日本は今からどんなに急いだって中国ほど多くの核兵器を持つことはできないので、その点でも中国に劣ります。
第2に、核兵器では尖閣諸島を守れないということです。先ほど言ったように、中国に尖閣諸島を占領され、シーレーンを押さえられることになると、日本は干上がってしまいます。もし中国が尖閣に攻め込んでくるとしたら、武装漁民などによるハイブリッド戦か、あるいは通常兵器を使用するでしょう。それでは、それを防ぐために日本は核兵器を中国に撃ち込むのか。ありえません。そんなことをすれば国際社会から非難されて孤立するのはわが国です。だから核兵器を持ったところで、尖閣防衛にはつながらないのです。
第3に、日本が核武装すること自体が、中国が日本を攻撃する口実になるということです。今回ロシアがウクライナに軍事侵攻した理由の1つとしてあげていたのが、ウクライナが核開発を秘密裏に進めているということでした。また、2003年にアメリカがイラク侵攻に踏み切ったときも、イラクが大量破壊兵器を持っていることを口実にしていました。2つとも、単なる「口実」で、本当に核兵器が準備されていたわけではないのでしょうが、ともあれ、核兵器が攻撃を正当化する口実にされたのは間違いない。
ここで仮に日本が核武装を決断し、核開発の準備を始めたとしましょう。中国がそれを黙って見ていると思いますか? 中国は間違いなく、「日本が大量破壊兵器を持つことは中国の安全保障に対する直接的な脅威だから、それを取り除くために日本を攻撃する」と言ってくるでしょう。日本の核開発が終わる前に、一気に攻撃を仕掛けてくるはずです。
それから、日本の核開発によって日中が一触即発になり、東アジア情勢が緊張すれば、アメリカだって黙っているわけにはいかなくなります。きっとアメリカは日本に対して「核開発なんかしないで、おとなしくしていろ」と言ってくるはずです。国際社会も日本に核開発を断念するよう迫るでしょう。そのアメリカや国際社会の要求を撥ねつけ、日米関係を著しく悪化させ、国際的に孤立してまで、日本は核開発をやるのか。やったとして、何のメリットがあるのか。というわけで、核開発は何の解決にもならないと思います。
「日本のために死んでくれ」と説得できるか
中野:いま日本で一部の保守派が核保有の議論をしようとしているのは、むしろ本質的な問題について議論することを避けているからではないでしょうか。常識的に考えれば、核武装について議論するよりも通常兵器の増強について議論するほうが、ずっとハードルが低いはずです。核開発はヒステリックに反対する人も多いですが、通常兵器の増強ならばこれまでも行われてきたことですし、自衛権の範囲内として受け入れる人が多いと思います。
しかし、通常兵器について議論する際には、財政の問題が出てきます。もちろん日本が財政破綻することはありませんが、日本ではとにかく財政均衡が重視されていますから、どうやって軍事費を確保するかという議論をしなければなりません。それが面倒だから、核武装という高いボールを投げてごまかしているのではないかと思います。つまり、核武装という防衛論のタブーに切り込んで、いかにも国防を考えているといった感じを出していながら、実のところ、本気で考えてはいないというわけです。
施:核兵器は安上がりですからね。
中野:それから、核抑止力とは侵略を防ぐために核武装するということですから、戦争になることは想定されていません。実際の戦争について考えなくていいから、議論しやすいという面もあると思います。他方、通常兵器を用いた戦争の場合、間違いなく人が死にます。そのことを直視したくないから、あえて、一足飛びに核シェアリングや核武装まで議論が飛躍しているのではないかと思います。
古川:なるほど。「核兵器さえあれば戦争しなくていい」というのは、「憲法9条さえあれば戦争しなくていい」というのと、実はメンタリティが同じだということですね。
佐藤:何か1つお守りを持ってさえいれば大丈夫という発想です。それが憲法9条か、核兵器なのかが違うだけ。世界初の核実験は「トリニティ」(三位一体)と呼ばれたので、崇拝したくなるのもわかりますが、魔術的思考の域を出ていない。
中野:まさにその通りです。こんなことを言うと9条論者たちは怒り狂うかもしれませんが、核武装論者と9条論者は非常に似ています。
施:中野さんのおっしゃることはよくわかります。通常戦力で戦争するとなれば、「日本の国土や文化を守るために死んでくれ」と国民を説得しなければなりません。徴兵も必要になるでしょう。日本のために死ぬぞという国民をかなり集めなければならない。
中野:ウクライナは18〜60歳の男性の出国を禁じましたが、戦争になると、我々は出国させてもらえず、戦うしかない。
施:それぐらいの覚悟を国民に求めなければならない。それが大変だという意識はあると思います。
中野:戦争になれば、ウクライナと同じように目を背けたくなるような現実に直面する可能性があります。しかし、国を守るとはそういうことです。安全保障について考えるなら、この問題から目を背けるべきではないと思います。
(構成:中村友哉)
(「令和の新教養」研究会)