「福島でひ孫を」野田首相が高校生の台詞を賞賛 - BLOGOS編集部

2022年3月30日 0時0分

※この記事は2011年09月13日にBLOGOSで公開されたものです

13日午後、衆議院本会議で野田佳彦首相が所信表明演説を行った。

冒頭、野田首相は「正心誠意の4文字があるのみ」と述べ、震災・福島第一原子力発電所事故からの復興への固い決意を表明した。「福島で子どもを産んで、福島でひ孫を見る」という福島県の高校生の創作劇の台詞を紹介し、「明日に向かって一歩を踏み出す力強さがあふれている」と激賞した。

ただし、鉢呂吉雄・前経済産業相の辞任について、「被災者の心情に配慮を欠いた不適切な言動によって辞任した閣僚が出たことは、まことに残念でなりません」と遺憾の意を示すと、野党からは「そうだ！そうだ！」と大声で野次が飛び交う場面もあった。

野田首相の発言要旨は以下の通り。

遠藤未希さんに見た「日本人の気高き精神」

第178回国会の開会にあたり、東日本大震災とそのあと相次いだ集中豪雨や台風の災害によって亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。

また。被害に遭われ、不自由な暮らしを余儀なくされている被災者の皆様に改めてお見舞い申し上げます。

このたび、私は内閣総理大臣に任命されました。政治に求められるのは、いつの世も「正心誠意」の4文字があるのみです。意をまことにして心をただす……国民の皆様の声に耳を傾けながら、自らの心を正し、政治家としての良心に忠実に大震災がもたらした国難に立ち向かう重責を全力で果たしていく決意です。

まずは連立与党である国民新党を初め、各党各会派そして国民の皆様のご協力をせつにお願い申し上げます。

あの3月11日から、はや半年の歳月を経ました。多くの命と穏やかな故郷での暮らしを奪った大震災の傷跡は、未だ深く、被災地に刻まれたままです。大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故は、被災地のみならず日本全国に甚大な影響を与えています。

日本の経済社会が長年抱えてきた課題は残されたまま、大震災により新たに解決が迫られる課題が重くのしかかっています。この国難の只中を生きる私達が決して忘れてはならないものがあります。

それは大震災の絶望の中で示された日本人の気高き精神です。

南三陸町の防災職員として、住民に高台への避難を呼びかけ続けた遠藤未希さん。防災庁舎の無線機から流れる彼女の声に勇気付けられ、救われた命が数多くありました。恐怖に声を震わせながらも、最後まで呼びかけをやめなかった彼女は、津波に飲まれ、帰らぬ人になりました。生きておられれば、今月、結婚式を迎えるはずでした。

被災地のいたるところで、自らの命さえ顧みず、使命感を貫き、他者を労わる人間同士の深い絆がありました。彼女達が身をもって示した“危機の中で公に尽くす覚悟”。そして、互いに助け合いながら寡黙に困難耐えた数多くの被災者の方々。日本人として生きていく誇りと明日への希望がここに見出せるのではないでしょうか。

福島の高校生が教えてくれた

忘れてはならないものがあります。それは、被災者とりわけ福島の方々の故郷への思いです。多くの被災地が復興に向けた歩みを始める中、依然として先行きが見えず、見えない放射線の不安と格闘している原発周辺地域の方々の思いを、福島の高校生が教えてくれています。

「福島に生まれて、福島に育って、福島で働く、福島で結婚して、福島で子どもを産んで、福島で子どもを育てる。福島で孫を見て、福島でひ孫を見て、福島で最期を過ごす。それが私の夢です」

これは先月、福島で開催された全国総合文化祭で、福島の高校生達が演じた創作劇の中の言葉です。悲しみや怒り、不安や苛立ち、諦めや無力感といった感情を乗り越え、明日に向かって一歩を踏み出す力強さがあふれています。こうした若い情熱の中に、被災地と福島の復興を確信できるのではないでしょうか。