エアバス最小機「ベビーバス」A318とは? 爆売れ一族なのに生産80機に終わった理由
エアバス社でもっとも小さい旅客機「A318」は、ベストセラー旅客機「A320」シリーズのひとつ。「ベビーバス」「ミニバス」といった愛称をもちます。どのような旅客機なのでしょうか。
初飛行から20年の「ベビーバス」
いまから20年前の2002年1月、ヨーロッパの航空機メーカー、エアバス社の旅客機ラインナップのなかで最も小さいモデル「A318」が初飛行しました。
エールフランス航空のエアバスA318(乗りものニュース編集部撮影)。
A318は、エアバス社のベストセラー旅客機「A320」シリーズの胴体短縮派生型のひとつです。ベースデザインは基本形のA320とほとんど同じながら、標準座席数は90〜110席です。胴体はA320より約6m短い約31.4mで、それまでA320の短縮型と位置づけられてきたA319から、さらに胴体を約2.5m短くなっています。
そのためA318は、エアバス機としては著しくコンパクトなサイズ感から、「ベビーバス」「ミニバス」といった愛称をもちます。
当初エアバス社は1990年代後半に、中国とシンガポールとパートナーシップを結び、100席クラスの新設計機の開発を計画していました。この計画はとん挫したものの、既存機A319のさらなる短縮――という形でそのコンセプトが引き継がれました。この機は“A319からマイナス5フレーム短縮したモデル”ということで、「A319M5」の仮モデル名が与えられました。これがのちの「ベビーバス」A318です。
ただ、A319は製造機数1000機以上のメガヒットとなっているのに対し、「ベビーバス」の製造機数はわずか80機に留まりました。
なぜ「ベビーバス」がヒット機とならなかったのか?
「ベビーバス」「ミニバス」の愛称を持つA318が、ヒット機とならなかった要因のひとつがキャパシティとされています。1990年代から2000年代には、地方間輸送を担う100席以下のジェット旅客機「リージョナル・ジェット」が次々と出現しました。カナダ・ボンバルディアのCRJシリーズやブラジル・エンブラエルのE-Jetなどがこれです。
J-AIRのエンブラエル190(乗りものニュース編集部撮影)。
こういった「リージョナル・ジェット」は時代に即した新設計が採用されたゆえ、既存設計で大型の旅客機を縮めた「ベビーバス」よりも機体価格や運航コスト、重量などを抑えることができました。
たとえばA318よりわずかに少ない標準座席数をもつエンブラエル190の最大着陸重量は44t。これはA318より13tも軽い値です。重量が軽ければ着陸料も少なくて済み、航空会社側からすると、コスパの良い旅客機ということになります。
そういったところから「ベビーバス」は需要をライバル機にとられてしまったのです。
このように商業的には成功作といえずに終わってしまった「ベビーバス」は、現在ではエールフランス航空などで残るのみ。ただ一方で、「ベビーバス」から始まった“エアバスのリージョナル・ジェット”は近年になって大きな動きを見せています。
2018年、ボンバルディアが開発した小型ジェット旅客機の調達や販売、マーケティングなどを行うCSALP(C Series Aircraft Limited Partnership)の株式をエアバスが過半数取得。ボンバルディアで「Cシリーズ」として開発されていたモデルが「エアバスA220」となりました。
このA220は2021年に50機が航空会社に納入されるなど、堅調な滑り出しを見せています。先述のエールフランス航空も「ベビーバス」の後継としてA220を導入。現在も更新を進めているところです。