都内の電動キックボード違反状況を公表 警視庁の懸念 新モビリティのマナーに厳しい目
警視庁が都内における電動キックボードの違反状況を公表しました。同庁は販売事業者やシェアリングサービスの事業者にさらなる交通安全教育を求めるとともに、一般から寄せられる意見も重視。事故の増加に警戒を強めています。
警視庁 販売者やシェアリング事業者に利用者への安全教育求める
警視庁交通部は2022年1月24日(金)、都内で2021年中に発生した電動キックボードを当事者とする交通事故や交通違反などの発生状況を公表、電動キックボード事業者などが集まる「電動キックボード等の交通安全に関する連絡協議会」で関係者にさらなる安全対策を求めました。
都内の道路情報板では、電動キックボードへの注意喚起が表示されている(中島みなみ撮影)。
電動キックボードを当事者とする2021年の都内の交通事故は68件でした。そのうち人身事故は18件、物損事故は50件でした。
同年の都内人身事故発生件数は約2万8000件。電動キックボードが当事者となった事故は、その18件なので数としては多くありません。ただ、都内の死亡事故は減少傾向ですが、人身事故は前年比7.8%増加している状況で、警視庁は今までなかったパーソナルモビリティの事故増加を警戒しています。
人身事故18件のうち、電動キックボードの運転者が負傷した事故は11件。そのうち1人は重傷です。また、歩行者を負傷させた事故が3件、自転車の運転者を負傷させるなどの事故も4件ありました。
特に、6月2日に新宿区のJR新宿駅近くで発生した、赤信号を無視して直進しタクシーと衝突した人身事故、8月26日に渋谷区内の明治通りで発生した、酒気帯び状態でスマートフォンを操作しながら救急車に追突した物損事故は、電動キックボードが重大な事故につながる車両として認識されていなかった事故ではないか、と警視庁は重視しています。前者は無免許危険運転致死傷で、後者は酒気帯び及び安全運転義務違反で、ともに送致されています。
新宿区内の人身事故は個人所有の電動キックボードで原動機付自転車の届出がありませんでした。渋谷区内での物損事故はシェアリング事業者の車両を利用中でした。
電動キックボードの交通事故を、個人所有とシェアリング車両に分けてみると、人身18件のうち16対2件、物損事故では37対13件でした。
摘発のほとんどは通行区分違反、個人所有では無免許、整備不良も
電動キックボードなどの交通ルールをテーマとした警察庁の有識者検討会は、販売やシェアリング事業者に対して「利用者への交通安全教育を行うことを求めるべき」との報告書をまとめています。報告書の内容は今年の道路交通法改正案に反映される見込みですが、警視庁は関係者を集めた連絡協議会にて先取した形で、交通安全教育の大切さを周知しています。
人身事故ではない電動キックボードの交通違反取扱い件数についても、警視庁交通部は公表しました。2021年中は207件。そのうち55件はシェアリング車両の利用者、152件は個人所有の利用者でした。違反の内容のほとんどは、歩道を通行するなどの通行区分違反でした。
また、個人所有の車両では通行区分違反に加えて、無免許、無届出で必要な保安部品を取り付けてないなどの整備不良が目立ちました。
現在の道路交通法では、電動キックボードは原付バイクと同じ原動機付自転車です。また、道交法特例でシェアリング事業者が提供する車両は小型特殊です。車両区分は違いますが、ともに歩道走行は違反です。
シェアリング車両は道路交通法の特例が適応されているので、ヘルメットを装着していなくても違反ではない(中島みなみ撮影)。
交通部では同庁に寄せられる交通の意見も重視しています。電動キックボードでは次のような意見が寄せられていると指摘しました。
・交通法規無視、マナーの悪さが問題。
・歩行者を押しのけて歩道通行など、法律もマナーも守っていない。
・歩行者に当たっても停止せず逃げる。
・信号を守らない。
・指導取締りを強化してほしい。
道路交通では、利用者が少ない乗り物や新しい乗り物に厳しい目が向けられる傾向があります。交通社会に受け入れられるための努力が、利用者や事業者に求められています。