船をチャーターするJR東海…なぜ? フグ・タコ・海鼠腸を結ぶ船
JR東海がいま愛知県で、EX会員向けに船をチャーターしています。その目的、背景を、実際にその船に乗って取材してきました。
名鉄の船とあわせて利用可能
いまJR東海が同社のEX会員向けに、愛知県で船をチャーターしています。
運航区間は、三河湾に浮かぶ日間賀島(愛知県南知多町)と佐久島(愛知県西尾市)のあいだです。
JR東海がチャーターしている海上タクシー「オルカ」(2021年12月、恵 知仁撮影)。
コロナ禍を受けJR東海は、「定番からずらす」ことで密を避けつつ、新たな発見を楽しもうという旅のスタイル「ずらし旅」を提案しています。
そうしたなかJR東海は、それぞれに魅力を持ち名古屋周辺では有名ながら、全国的に知名度が高いとは言いづらい、三河湾に浮かぶ愛知県の離島3島――日間賀島、篠島、佐久島に注目。2021年11月に、様々な宿や観光プランなどをEX会員向けに用意する「EX 旅のコンテンツポータル」にて、「日間賀島・篠島・佐久島 愛知の離島めぐり」を発売しました。
日間賀島はフグやタコで知られ、篠島(愛知県南知多町)は伊勢神宮とのつながりが深い場所。佐久島は近年、「アートの島」として人気になっています。
これらの島を結ぶ船(知多半島の河和港〜日間賀島〜篠島を結ぶ名鉄海上観光船の定期船、日間賀島〜佐久島を結ぶ先述のチャーター船)に乗り放題で、各島でグルメやレンタサイクルがお得に楽しめるクーポンが付属。2日間有効で、価格は大人4300円から4900円というものです。
名鉄電車に接続する河和港と日間賀島、篠島を結ぶ名鉄の定期船(2021年12月、恵 知仁撮影)。
さて、なぜそこでJR東海が船をチャーターしているのかというと、理由があります。
これら3島は近距離にあるうえ、それぞれに別の魅力を持っており、周遊して楽める観光地なのですが、佐久島だけは西尾市。南知多町の日間賀島、篠島とは直線距離で5km程度しか離れていないものの、定期航路が存在しません。
そこでJR東海が、日間賀島と佐久島のあいだで船をチャーター。周遊できる観光地として成立させて今回、「日間賀島・篠島・佐久島 愛知の離島めぐり」を発売した形です。同プランの発売は、単なる新たな「ずらし旅」プラン、新たなお得周遊プランの登場というだけでなく、JR東海による沿線観光開発の一環でもあります。
JR東海のチャーター船で到着した島
実際に2021年12月、JR東海のチャーター船に乗って、人口わずか250人ほどの離島、佐久島を旅してみました。
日間賀島からのJR東海チャーター船は、佐久島の東港に到着。まずその前にある民宿「市兵衛」で、「佐久島産このわた3種盛り(小鉢)」をいただきます。
先述したJR東海EX会員向けのプラン「日間賀島・篠島・佐久島 愛知の離島めぐり」でもらえる「島たびパス」に、民宿「市兵衛」で定食を注文すると、「日本三大珍味」に数えられる「海鼠腸(このわた)」も用意されるクーポンが付いているのです。
民宿「市兵衛」の定食と「このわた」。ごはんはたこ飯(2021年12月、恵 知仁撮影)。
佐久島の「このわた」は江戸幕府への献上品だったそうで、100gで4000円など、結構な高級品とのこと。お味も濃厚で、激しく身体が日本酒を求めてきました。
が、誠に無念ながらこのあと、レンタサイクルで島内を取材するため、断腸の思いで気持ちを切り替えます。
レンタサイクルも「島たびパス」に、2時間使用できるクーポンが付いてきます。それで向かうのは、「おひるねハウス」です。
佐久島の「おひるねハウス」(2021年12月、恵 知仁撮影)。
佐久島では近年、現代アートに関するプロジェクトが展開されており、「おひるねハウス」もそのひとつ。海岸に置かれた、9つの“寝床”に分かれた立方体はフォトスポットしても人気で、日によっては撮影に2時間待ちなこともあるとか。
このほかにも佐久島には現代アート作品が点在しており、サイクリングがてらアートを楽しむことができます。
時間がゆっくり流れていた佐久島(2021年12月、恵 知仁撮影)。
「島たびパス」が付いてくるJR東海EX会員向けプラン「日間賀島・篠島・佐久島 愛知の離島めぐり」の設定期間は、2022年3月27日(日)までの土日、2月11日(金・祝)、3月21日(月・祝)。JR東海のチャーター船(海上タクシー「オルカ」)の運航も、その土日と祝日のみです。
新型コロナウイルスの感染拡大状況によっては、このプランの内容が変更されたり、旅行自体が難しかったりする場合もあるかと思いますが、遠くない未来に、十分な配慮をして再び旅を満喫できる日が来ることを願うばかりです。