これまでの研究により、コーヒーには認知症予防や前立腺がんのリスク低減などがあることや、コーヒーを飲む人は長生きすることが分かっていることから、一般的に「コーヒーを飲むのは健康にいい」と言われています。しかし、コーヒーには健康に影響を与えるさまざまな成分が入っており、その含有量は豆の焙煎方法や飲み方によって異なるほか、中には健康に悪影響を与える物質もあります。そこで、コーヒーの飲み方と健康の関係について分かっていることを、栄養学の専門家が解説しました。

Coffee's health benefits aren’t as straightforward as they seem - here’s why

https://theconversation.com/coffees-health-benefits-arent-as-straightforward-as-they-seem-heres-why-172907

イギリス・レディング大学でコーヒーと健康について研究をしている博士課程のアシュリー・フッキング氏と、同校の栄養学講師であるシャーロット・ミルズ氏によると、コーヒーにはカフェイン以外にも健康に影響を与えるさまざまな成分が含まれているとのこと。その中でも代表的なものは以下の4種類の物質です。



◆1:アルカロイド

カフェインもアルカロイドの一種ですが、コーヒーにはカフェインとは別に「トリゴネリン」と呼ばれるアルカロイドが含まれています。トリゴネリンはカフェインほど注目を集めていませんが、過去の研究により2型糖尿病予防に効果がある可能性が示されました。

◆2:ポリフェノール

ココアやブルーベリーに入っていることで有名なポリフェノールは、心臓や血管を保護したり、アルツハイマー病などの神経変性疾患を予防したりする効果があります。コーヒーに入っているポリフェノールのクロロゲン酸類にも、動脈の機能を改善して心血管系疾患のリスクを低減したり、食後の血糖値の上昇を抑えて2型糖尿病の予防をしたりする可能性があることが判明しているとのこと。

◆3:メラノイジン

メラノイジンとは、メイラード反応によって生まれる物質で、焙煎したコーヒーの風味と香りの元となる成分のことです。メラノイジンには、腸内の善玉菌を増やすプレバイオティクス効果があることが分かっています。

◆4:ジテルペン

ジテルペンとは、植物などによって合成される炭化水素であるテルペンの一種で、コーヒーにはカフェストールとカーウェオールという2種類のジテルペン類が含まれています。コーヒーを抽出する際に放出される天然の脂肪質であるジテルペンには、基本的に健康にいい物質である前述の3つとは逆に、コレステロール値を上げて心臓血管系疾患のリスクを高める可能性があるとされています。



これらの「コーヒーに含まれている健康に影響を与える成分」の量は、コーヒーの種類や抽出方法、飲み方によって異なります。まず栽培条件では、高地で栽培されたコーヒー豆ほど、カフェインとクロロゲン酸の含有量が低くなる傾向があるとのこと。

また、コーヒーはカフェインレスコーヒーとして飲まれることがありますが、デカフェをするとカフェインと一緒に少量のクロロゲン酸も失われます。さらに、コーヒー豆の焙煎も重要なポイントで、深煎りすればするほどメラノイジンが多く生成される代わりに、クロロゲン酸やトリゴネリンは減少していきます。

コーヒーの成分は、入れ方によっても左右されます。例えば、コーヒーを抽出する際にフィルターを使うと、フィルターを使わずにそのまま熱湯で煮出す飲み方よりジテルペンが少なくなります。

とはいえ、これらの成分についての研究は小規模なものが多く、健康への影響については限定的にしか分かっていません。しかし、コーヒーにクリームや砂糖をたっぷり入れるとカロリーや脂肪の摂取量が増えて糖尿病や心臓疾患のリスクが増加し、コーヒーのメリットを打ち消してしまうのは確かです。



こうした点から、フッキング氏らは「コーヒーを飲む際は砂糖とクリームをできるだけ控えめにして、可能な限りフィルターを使って入れたものを選びましょう。特に、体調を崩している人や妊娠している人は飲み過ぎに十分注意してください」と結論づけました。