コロナ禍の2020年2月、3人制バスケットボールのグローバルリーグ「3x3.EXE PREMIER」と新たにオフィシャルパートナー契約を始める決意をしたのが、全国に薬局事業を展開するクオールホールディングス株式会社です。

コロナにより厳しい経営環境の中でなぜスポーツを支援しようと考えたのでしょうか。そこには、事業にも託された地域への思いがありました。クオールホールディングス株式会社 広報部部長の白国宏基(しらくに・ひろもと)氏にお伺いしました。

クオールホールディングス株式会社 ×「3x3.EXE  PREMIER」公式スマートフォンアプリをリリース!

(聞き手・文:市川紀珠)

 

「コロナ禍だからこそ」地域に寄り添う活動を

クオールでは、スローガンを「あなたの、いちばん近くにある安心」と掲げています。患者さまをはじめとした地域の方々を薬局という立場から支え、心のよりどころになれればという思いが込められています。

スポーツも、心のよりどころになりうるものだと思うんです。誰かを勇気づけたり、励ましたり。当社の理念と強い親和性を感じており何らかの形でスポーツを応援したいと思っているところ、3x3の話を聞いて、「ぜひ」と今回のパートナーシップに至りました。

 

スポンサーを決めたのが2020年4月。コロナが猛威を振るい始め、当社も例年に比べて経営環境が大変厳しかったです。スポーツ協賛を始めることは簡単ではありませんでしたが、社内で「つらい時期だからこそ、地域と向き合っていくべきなのでは」という話になって。ひとつ継続的にスポーツを支援する試みとして、3x3.EXE公式スマートフォンアプリを含めたリーグのパートナーになろうと決意しました。

 

「われわれの思いに沿った取り組みであるならやってみよう」と、社内ではスムーズに承認されました。もちろんケースバイケースですが、当社は新しい取り組みを「意義があるなら積極的に取り入れていく」風潮があると感じています。

3x3に目を向けた理由は、全国にチームがあり、地域に偏りなくアプローチできると考えたからです。当社は全国に800店舗以上展開しているので、どこかひとつのチームのパートナーになるというより、より多くの地域に寄り添っていきたいなと。

幅広い地域と接点ができる一方で、各地域との“近さ”も大切にできるのが3x3だと思っています。試合はショッピングモールなどにある広場で行なわれることが多く、物理的にも身近に感じやすいスポーツです。日本では少ないかもしれませんが、アメリカなどでは街中でするスポーツというイメージがありますよね。

 

スポーツを通じて、地域に“薬局+α”を届けたい

「地域に偏りなく寄り添える」という話の続きになりますが、3x3のパートナーシップを通じて具体的にやっていきたいことはまさに各地域内でのアクティベーションです。薬局として薬をお渡しするだけでなく、プラスアルファの価値を提供していけたらと思っています。

 

クオールでは、店舗で管理栄養士の方に栄養相談ができたり、「健康フェア」にて自己血糖測定や血圧測定を行なえます。でも、薬局でそういったことができるとはあまり知られていないんです。

3x3を通じて、普段薬局に来る機会が少ない方々へもアプローチできる場だと思っています。試合会場で栄養相談ができるようにしたり、薬の安全な飲み方についての啓蒙活動を行なったりしたいです。薬の正しい飲み方や組み合わせ、薬剤師の視点から見たドラッグの危険性について、例えば試合を観にきた子供たちに伝えられると思います。

医療とスポーツはいずれも健康に寄与するものとして切っても切り離せない関係にあると思っているので、現場レベルでの地域との繋がりを活かして貢献していきたいです。薬がない場でも地域との接点を持てるパートナー活動を通じて、「クオールって、スポーツも応援しているんだ」と知っていただけると嬉しいですね。

 

また、クオールには「スポーツファーマシスト」と呼ばれる方々が全国で50名程度いらっしゃいます。最新のアンチ・ドーピング規則に関する知識を持っている薬剤師のことで、公益財団法人 日本アンチ・ドーピング機構が定めている課程終了後に認定される資格を保有しています。

障害者スポーツのひとつであるデフサッカーでは、選手の方々に対してスポーツファーマシストによる講演会を実施しています。例えば「試合前に風邪を引いてしまったら、どのような薬には注意が必要か」など服薬サポートが中心です。栄養士の方に参加いただいて、パフォーマンス向上に良い食品を提示するといった栄養指導も行ないました。もちろん、全て手話で。3x3でも、選手に向けての活動もできればと考えています。

 

クオールならではの特色を。採用における強み

今回のパートナーシップをリリース後、「社会貢献活動の一種なのでしょうか?」などと社外からいくつか問い合わせをいただくこともありました。社外からの注目、特に採用における影響は、パートナーメリットのひとつとして重要視しているところです。

3x3は東京オリンピックの正式種目にもなりましたし、今後若い世代からも注目されていく競技だと感じています。NBAで八村塁選手や渡邊雄太選手が活躍していたりと、バスケ界全体が盛り上がってきていますよね。

この盛り上がりをうまく活用していきたいと思っています。薬剤師の中には、それこそスポーツファーマシストとしてなど、スポーツにも何らかの形で関わりたいと考えている方々もいると思います。患者さまとして接するだけでなく、地域との繋がりを活かして貢献したいと考えている志高い方々もいるはずです。われわれがさまざまな活動をしていることをもっと発信していって、より多くの方に興味を持っていただきたいです。

 

特に、薬局業界は採用における差別化が難しいと感じています。例えばビールの製造メーカーであれば、アサヒビールさん、サントリーさん、サッポロビールさんそれぞれで特徴やカラーがあって比較的わかりやすいですよね。でも薬局は、「ここの会社はこういうイメージだ」というものがほとんどないと思うんです。

その中で、パートナーシップを通じて幅広い活動をしていることは、ひとつ強みになるのではないかと。これまで話してきた地域との繋がりや地域に向けた教育が、就職を考えている方へのアピールポイントになればいいなと思っています。

SDGs(持続可能な開発目標)における取り組みも、最近注目されていますよね。3番の「すべての人に健康と福祉を」に関して3x3を通じて貢献できると思います。他にも、12番にあたる「つくる責任 つかう責任」でも、無駄なお薬を出さないという観点から取り組んでいます。高齢者の方だとお薬の飲み忘れも多いので、飲み忘れしやすいポイントを説明したり、1日3回の薬を2回の薬に変更する提案を医師にしたりしています。各会社がどのように取り組んでいるのか、学生さんも見ているので、ここも意識していきたいです。

 

コロナ禍におけるパートナーシップは、会社の状況によっては「一番最初にやめなければならなくなるもの」にもなり得ます。いつどうなるかわからない中で始めてみて感じることは、自社との理念をしっかり繋げてやっていくことが大切だということです。「自分たちは、こういう思いを持ってパートナーとしてやっていくんだ」と。

根底にある思いが繋がっていないと、長続きしないと思います。パートナーシップを通じて当社の思いを伝えていきたいと思いますし、今後パートナーシップを考えられている企業さんには、思いを明確にして、取り組んでいただきたいですね。