成田空港でのピーチアビエーションのエアバスA320型機 撮影:北島幸司

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◆夢のチケットはどこの航空会社か?

 旅好きにとって「乗り放題」ほどインパクトがあり、旅ごころをくすぐる言葉はない。時間さえあれば、行きたい場所に行ける夢のチケットだ。鉄道業界ではよく聞く言葉だが、航空業界になると、ほとんど知られることのない商品だ。昨年末、国内LCCのピーチアビエーションから「乗り放題航空券」が売り出されると複数メディアで報道があった。航空業界の乗り放題チケットについて航空ジャーナリストの北島幸司が解説する。

 では、過去にこうした飛行機に乗り放題できる航空券はあったのだろうか、振り返ってみよう。2008年に、ANAは「プレミアムパス」という名の航空券を売り出した。一年間、国内線上級クラスであるプレミアムクラスに乗り放題となり、マイルも貯まるという商品だ。100枚という限定商品で、300万円の販売価格には消費税と空港施設利用料も含まれていた。

 さらに飛行機に乗ることができるだけでなく、ANAラウンジが使うことができ、機内でも食事ができたことから利用者の中にはマイル取得のために東京から最長路線となる沖縄を一日二往復するような「機上生活者」がいたという“いわくつき”の商品だ。

 このような航空券が売り出されたのには、もちろんワケがある。大きく影響を与えたのはその時代背景。2007年に発生したリーマンショックで、ビジネスマンの出張需要が落ち込んだ時期だ。2000年以降の米国同時多発テロやSARSなどのイベントリスクによってライバルのJALが大きく輸送量を落としていた。国内航空会社2位のANAはがむしゃらにJALを追い抜こうと動いており、話題性で需要喚起しようとしたことも理由の1つとされる。

◆海外では古い歴史のある乗り放題航空券

 こうした乗り放題航空券は海外のエアラインでも売り出されており、その歴史は古い。過去、最大の話題となったのは、アメリカン航空が1981年に売り出した乗り放題チケット「AAirpass」だ。この商品は、25万ドル(※当時の換算レートで約5,500万円)を支払えば、同社の全路線フライトのファーストクラスに“生涯”乗り放題になるというもの。

 当時、アメリカン航空は財政的に厳しく、早急に現金が必要な状況だったことが背景にある。しかし、利用者と航空会社で裁判沙汰になるなどの話題を残し、1994年に販売は終了となった。大幅に内容は改定されているが、現在でも「Airpass」の名前で商品は残っている。

◆コロナ禍で乗り放題航空券が再燃

 現在、新型コロナウィルスの影響は全世界に広がり、世界のエアラインは特に国際線で壊滅的な打撃を受けている。財政的に厳しい時に、同様の航空券が出てくるのは前述の通り。在庫の効かない商品である航空座席を空にして飛んでいる航空機を何とかして埋めようと、エアラインはあの手この手でキャンペーンを展開する。

 世界で最初に動いたのはアジアで最大のLCCエアアジアだ。1年間有効な「Unlimited Pass=無制限パス」として売り出した。長距離便を運航するエアアジアX便も含めて一日2路線までの制限はあるが、499マレーシアリンギット(約1.3万円)という格安で投げ売りしたのは2020年2月29日からという素早さだった。

◆中国では15万人が利用する人気商品に……

 世界で航空需要が最初に回復傾向となったのは中国だ。コロナの発生国ではあるが、早期に抑え込んだとされる中国は国内線から需要が回復。この需要を大きくしようと手を付けたのは中国三大航空会社のひとつ中国東方航空だ。 2020年6月18日に年内までの週末に国内線を乗り放題で利用できる「Fly at Will(気ままに飛ぶ)」という商品を3,322元(約5万円)で売り出すと、即人気となり15万人が利用するまでの商品となった。