歩きスマホ禁止条例が神奈川県大和市で施行! 罰則なしのルールを定着させる方法とは?

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2020年7月1日から「レジ袋有料化」がスタートしたが、同じ日に神奈川県大和市において「大和市歩きスマホの防止に関する条例」も施行された。

国内では初となるであろう「歩きスマホ」を禁止する条例だ。


●意識啓発を図るルール作り
大和市のホームページ上では、「歩きスマホは禁止です」と記載されている。

まずはこの条例の概要をみていこう。

「誰もが安心して快適に通行・利用できる公共の場所を確保すること」
これが条例の目的とされている。

条例の内容は以下の通り。
・市内の道路、駅前広場、公園などの公共の場所(室内などを除く)で歩きスマホ(画面を注視しながら歩行すること)を禁止します。
・スマホ等を使用するときは、通行の妨げにならない場所で、立ち止まった状態で行わなければなりません。
・スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、これらに類する物(ゲーム機やカメラなど画面を注視して使用する機器類)が対象です。
・罰則はありませんが、市民等及び事業者は歩きスマホ防止の意識啓発など、市の施策に協力するよう努める責務があります。


大和市のホームページでも公開されているチラシ


注目する点は、
・公共の場での禁止
・操作する場合は立ち止まること
・罰則はない
これらだろう。

主に道路や駅周辺の広場や公園といった公共の場所のみが対象となっており、建物内や駅は対象外となっている。また、意識啓発を図ることを重要としているため、罰則は設けられていない。

こうした点から本条例は、
「歩きスマホの事故防止マナー」
これをルール化したものだと解釈したほうがよさそうだ。

「歩きスマホ」を控えるのは、個人の意識や行動に任せる。
「歩きスマホ」の自粛要請ともいえる、いかにも日本的な条例だ。

では条例に沿って「歩きスマホ」を減少させるためにはどうしたらいいのだろうか。


●徹底したアナウンスで周知
かつて電車内での通話を原則禁止にするマナールールがあった。
このルールは、携帯電話の電磁波などが心臓ペースメーカーに影響を及ぼすことに配慮したものだったが、現在は携帯電話の電磁波の影響は無いということが周知され、車内での通話がほかの乗客への迷惑行為にならないようというマナールールに変更されている。
また、電車内に限らず図書館や映画館、コンサートなどの公共の場では、マナーモードや電源を切るなどのマナーは定着している。

ここで鉄道会社がマナー定着できた理由を再検証してみたい。
鉄道各社は、1990年台から携帯電話のマナー対策を開始した。
2003年9月には、JR東日本や関東大手私鉄など17社が電車内では、
「原則、通話は禁止し、優先席付近は電源をオフにする」
このルールで統一し、車内や駅構内で定期的にアナウンスを流した。
それから20年近く、現在に至るまで電車内や駅構内などでアナウンスされ続けている。

その結果、
現在の日本人にとって電車内での通話は、周囲から白い目で見られてしまうほどのマナー違反として多くの人に認知されている。


大和駅前にのぼりは立てられているが、どこまで周知を図れるかがカギだ


●人通りや交通量が多い場所に限定して実施
携帯電話の利用マナーの定着では、電車内とくに満員電車であったり、静かな場所であったりと、マナーを守る場所は限定されていた。

「歩きスマホ」を減少させるには、マナーを守る場所を限定することが重要といえる。

なぜなら混雑していない場所であれば、
「歩きスマホ」は大きな問題とはならないからだ。

混雑していない状況では、
「歩きスマホ」をしていても、人とぶつかることはなく、事故も発生しない。

つまり「歩きスマホ」は、人が密集した環境だから迷惑行為となるのである。

「歩きスマホ」を禁止、制限するマナーは、人が集まる場所や時間帯、交通事故が多い場所に限定して実施することが重要だ。ちなみに今回の条例を施行した大和市は、神奈川県内で2番目に人口密度が高い地域でもある。


小田急江ノ島線の大和駅。駅構内は条例の対象外だが、混雑時の「歩きスマホ」は危険だ


●ほかの地域や民間施設にも広げる
先の鉄道各社における携帯電話利用時のルールについても同様だが、各社や各地域でバラバラの施策をやっていてはなかなか広まらないし、守ってもらうことは困難だ。

ルールを統一した上で、様々な場所で適用されれば、市民側も受け入れやすくなり、守りやすくもなる。

ルール化することで「ルールを守ることが目的」となる人々も増え、同調圧力も高まる。
同調圧力を促すことは弊害もあるが、マナーを定着させるには有効な手段でもある。

・徹底したアナウンスで周知させる
・ルール適用は限定的な場所や時間帯にする
・ほかの地域や民間施設にも広げる

こうしたことが実現できれば、数年後に「歩きスマホ」は激減できるかもしれない。


大和市/歩きスマホは禁止です


執筆:S-MAX編集部 2106bpm