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価格は高騰する一方

チーフテン戦車を停車位置に戻して、ミードのオフロード仕様に改造したベントレーGTに乗り換えることにした。

このクルマの周りには多数の戦車やアボット自走榴弾砲、装甲兵員輸送車両、さらにはFor saleとなっているリアがキャンパー仕様に改造された巨大なウラル4320 6×6ディーゼルなどが置かれている。

チーフテン戦車が気になったなら、1万8000ポンド(254万円)から手に入れることが出来る。

さらに北アイルランドで仕入れたアルヴィス社製ストーマ―装甲車には、スターストリーク近距離防空ミサイルシステムが残されたままだ。

ミードが戦車を集め始めたのは、2台の戦車をそれぞれ3600ポンドで購入した30年前のことだと言う。

当時、食肉解体業を生業にしていたミードだが、新車当時数百万ポンドもしたほとんど未使用の戦車を、わずか数千ポンドで購入できるという点が彼の興味を誘ったのだ。

彼が予想したとおり価格は高騰する一方であり、その結果、いまでは世界中の個人コレクターたちがこの市場へと殺到している。

「ここにはもう1台チーフテン戦車がありますが、現時点での価格は4万ポンド(565万円)です。ですが、来年には4万5000ポンド(636万円)、再来年には5万ポンド(707万円)に達するでしょう」と、ミードは言う。

彼は所有する40万平方メートルの土地に180台の戦車を集めているが、そのほとんどが英国製だという。

英国陸軍も顧客

そのうち4台がチーフテンであり、その販売価格は1万8000ポンド(254万円)から5万ポンド(707万円)となっている。

戦車の購入そのものは非常に簡単だが、ミードは買い手が誰かを注意深く調べる必要があるという。「もし、誤った買い手に売ってしまった場合には捕まる可能性もあります」と、彼は教えてくれた。

コレクションにはさまざまなミリタリーグッズが含まれている。

ミードの戦車に興味を持つのはコレクターだけではない。彼は所有する車両の一部を英国陸軍が毎年行う公開訓練のために貸し出してきたばかりだ。

そのなかにはロシア製戦車や、ミード自ら反体制派が使用する移動式ロケットランチャーへと改造した三菱L200ピックアップトラックも含まれていた。

「戦場で敵味方の車両を見分ける訓練になるよう、敵が保有するモデルに需要があるのです」と、彼は言う。

では、英国陸軍はミードのベントレーGT W12をどう判断するだろう?

この「ダカール・ラリーにインスパイアされたオフローダー」は、英国ナショナルジオグラフィックが放送している番組「スーパーカー大改造」のチームが創り上げたものだ。

強化したサスペンションのストロークを伸ばすとともにホイールアーチを拡大し、クラッシュバーとリアウインドウ上にスペアタイヤを設置して、ミリタリーグリーンでペイントされている。

ベントレーGTオフロード仕様

2017年のオークションで売却されたこの車両はいまTanks-Alotが所有しており、ルーフにはハッキリ言ってあまり見栄えのしない広告が設置されている。

その驚くべきエクステリアとは対照的に、キャビンはまごうこと無きGTそのものであり、淡いピンク色をしたレザーもそのままだ。

趣味良くモディファイが施されたコンチネンタルGT W12には、ベントレーが思いつきもしなかったような方法が採用されている。

エンジンを始動しても、すぐに滑らかなアイドリング状態へと落ち着くが、この荒地を走り廻るためにはアクセルを思い切り踏み込む必要がある。

さらに、もともとのタイトなフィールは失われており、ダッシュボードのインストゥルメントパネルに設置された警告灯がひっきりなしに点灯している。

つまり、このクルマはベンテイガのライバルというよりも、明らかに宣伝用だ。

ウェリントンブーツにたっぷりと泥が付いたところで、そろそろこの兵隊ごっこを終える時間だ。

いずれにせよ、ミードには売り物のT54と76mm砲を使えなくしたアルヴィス製装輪走行車、サラディンが残っている。

帰り際、ついさっき存在に気付いたばかりの34羽のオウムたちの鳴き声が空に響き渡っていた。

「飼い主を失ったオウムたちです」と、ミードが教えてくれたが、そのうちの1羽は二度とここへ来るなと言っているようだ。

ふたたびわたしがチーフテンを操縦することの無いよう、念には念を入れているに違いない。

チーフテンMK10のスペック

価格:1万8000〜5万ポンド(254万〜707万円)
エンジン:ロールス・ロイス 13アルファ 19Lディーゼル12気筒水平対向2ストローク
パワー:964ps
トルク:201.9kg-m
ギアボックス:トリプルディフェレンシャル・セミオートマティック
重量:55t(ワイルド・スピードEURO MISSION仕様の場合70t)
最高速:48km/h(道路)、14km/h(クロスカントリー)
航続可能距離:499km/h
ライバル:T-54及びT-64(ソ連)、T69及びM60パットン(米国)、 ポルシェ・レオパルト1(西独)

何台かは売り物だが、買い手を見誤った場合、ミードは刑務所行きとなる。

番外編:隠された財宝

2017年、湾岸戦争で英国陸軍が鹵獲したイラク軍の戦車をレストアしていたニック・ミードとTanks-A lotのチーフメカニック、トッド・チェンバレンは、燃料タンクの中から1本あたり5kgもある金の延棒を発見している。

「燃料を廃棄したにもかかわらず、持ち上げることが出来なかったのでおかしいと思ったのです」と、ミードは言う。

キャビンはベントレーそのままの高級さを感じさせるが、スペアタイヤやジェリー缶は空力的にはまったく褒められたものではない。

「結局、この金の延棒の重量のせいだと分かりました。テコを使ってタンクを持ち上げてみると、下側に空間が設けられているのを発見したのです」

この金の延棒の価値は約250万ポンドにも上ると推計されたが、ミードにとって為すべきことは明白だった。正直に警察へと届け出たのだ。

いま彼はその正直さが報われる瞬間を心待ちにしている。