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安全性未認証の中国製チャイルドシート 日本では流通できないはずの商品

text:Kumiko Kato(加藤久美子)

筆者が2015年に取材用としてアマゾンで購入した中国製チャイルドシートに関して、本日(1月17日)16時半頃、アマゾンから「[重要]過去にご注文された商品についてのお知らせ」と題したメールが届いた。

「過去に販売事業者が出品し、お客様がご注文された下記商品について、必要となる基準(ECE基準)を満たしておらず安全性に懸念があるため、ご購入時の商品代金等の全額をアマゾンギフト券にて返金させていただきました」

本日(1月17日)16時半頃、アマゾンは中国製未認証チャイルドシートについて、購入時の商品代金等の全額をアマゾンギフト券にて返金。返品を促すメッセージを購入者へ送った。

という一文から始まるもので、要するに、筆者が購入したチャイルドシートは安全基準を満たしておらず危険性が懸念されるので返金した。ということである。

今、確認してみたところ、本当に1月17日付で3299円がギフト券として入っていた。

今回、購入代金が全額返金されたチャイルドシートは写真のピンク色のもの。そして、その横の「ネイビーボーダー」は、2017年にリコール&返金の案内があった。

リコールの理由は今回と同様だが、その時は今回のように、アマゾンから直接ギフトカードで返金されるのではなく、出品者にメッセージを送り、返答がなければアマゾンが対応するという方法だった。

返送方法は「注文番号」と「返品理由:リコール商品のため」を記載したメモを、商品と同梱し、市川市のアマゾン返品係に返送するという方法だ。

ちなみに筆者はその時は返品しておらず、現在も2商品ともに手元に残っている。

英国でも「殺人チャイルドシート」として州の検査機関が危険性を指摘

実はこれらの未認証シートが販売されているのは、日本だけではない。英国でもかつて、アマゾン、イーベイなどの大手ECサイトにおいて、1000円以下の安価な値段で販売されていた。

しかし、「Sully Trading Standard:サリー州議会の消費者保護テスト機関」にて約50km/hで布製チャイルドシートのテストを行った結果、シートを固定するストラップは破断し、3歳の子どもを想定した衝突試験用ダミーはフロントガラスに投げ込まれた。

国土交通省も未認証チャイルドシートに関するテストをおこなっている。写真は未認証シートを使用し、子どもが前方に大きく飛び出した際のもの。 出典:国土交通省

まさに「killer carseat」(殺人チャイルドシート)である。

テスト結果を踏まえて、アマゾンやイーベイでは該当の布製チャイルドシートの販売を中止している。

日本においても国交省が2017年6月に以下の警告を行っている。

「国土交通省ではインターネット通販において、国の安全基準に適合している事を示すマークが表示されていないチャイルドシート(未認証チャイルドシート)が販売されている事を受け、実際に販売されている7製品を購入して、検証を行ったところ、国の安全基準に適合していないことを確認しました」

「お子さまを安全に乗車させるため、自動車ユーザーに対してチャイルドシート重要性や安全を脅かす未認証チャイルドシートの危険性を啓発するため、啓発ビデオを公開しました」

アマゾンが2017年に最初のリコールを行った際は、国土交通省からの指導を受けて実施したものと思われる。

危険な布製チャイルドシート、どんなもの?

現在、日本で新規に販売が認められているチャイルドシートは以下のいずれかの安全基準を満たしていることがマストだ。

「UN(ECE) R44」UN(ECE)とは、国連欧州経済委員会のこと。日本は欧州の安全基準を採用している。

ECE R44

アマゾンが購入者全員に返金対応した中国製の安全未認証チャイルドシートは、これらの基準を満たしていない。

2012年7月以降、この基準を満たしていないチャイルドシートはメーカーが新規出荷できない。

ECE R129

新しい安全基準であるR129には3つのフェーズがあり、現在は第1フェーズとなる「i-Size」基準を満たしたチャイルドシートの普及が始まっている。R44が体重基準なのに対してR129i-Sizeは身長を基準に体に合ったチャイルドシートを選ぶ。

今回、アマゾンが購入者全員に返金対応した中国製の安全未認証チャイルドシートは、これらの基準を満たしていない。

日本でもかつてチャイルドシートが法制化された2000年頃、着衣型(ベスト型)チャイルドシートが国の認可を受けて販売されていたことがあったが、ECE R44基準を満たすことができず、現在は販売されていない。

なお、ネイビーの方には全く何もないが、ピンクの方には一枚の説明書(?)が入っている。

説明書と言えるものはこれだけ。「0〜10歳に適合」とあるが、0歳からこんなシートが使えるはずはなく、とんでもなく危険である。

アマゾンでチャイルドシートを販売する際には「安全証明書」の提出がマスト

国内大手チャイルドシートメーカーによると、「アマゾンで販売をする際には、必ず安全性に関する証明書を出さないといけません。それは新製品が出るたびに求められます」

「登録書以外に安全証明書(どの国でどんな安全基準に適合しているのかなど)をセットにして提出しなければ、アマゾンで扱っていただくことはできません」とのこと。

返品対象になった、未認証チャイルドシートの装着例。

複数のチャイルドシートメーカーに確認したが、どこも同様に新製品販売の際には「安全証明書」を提出しているという回答だった。

そして、2017年の最初のリコールの後も、マーケットプレイスでは安全性未認証のチャイルドシートが再び、アマゾンで販売されていたため、広報担当者に確認した際の回答はこちら

「アマゾンは安全を重要視しており、お客様が安心してアマゾンでお買い物を楽しんでいただけるよう努めています」

「アマゾンに出品している販売事業者は、商品を販売する際、関連するすべての法律および規約を遵守する必要があります」

「販売事業者がアマゾンの規約に準拠していない場合、アマゾンはお客様のために迅速に適切な措置を講じています」

アマゾンとしても安全性の確認はしっかり行っており、アマゾンが管理する通常の販売サイトでは問題なくても、販売事業者が出品しているマーケットプレイスの商品まで手が回らないのかもしれない。