1/12塩と泥でできた道。2017年、更新世にボンネヴィル湖があったユタ州ウェンドヴァー上空から、北西に向かって撮影。PHOTOGRAPH BY MICHAEL LIGHT 2/122018年6月のブラックロックシティ(バーニングマンでつくられる人工都市)。更新世にラホンタン湖があったネヴァダ州ガーラック上空から、北東に向かって撮影。PHOTOGRAPH BY MICHAEL LIGHT 3/122017年10月のブラックロックシティ。更新世にラホンタン湖があったネヴァダ州ガーラック上空から、南西に向かって撮影。PHOTOGRAPH BY MICHAEL LIGHT 4/12塩の道。2017年、更新世にボンネヴィル湖があったユタ州ウェンドヴァー上空から、北東に向かって撮影。PHOTOGRAPH BY MICHAEL LIGHT 5/12塩の道。2017年、更新世にボンネヴィル湖があったユタ州ウェンドヴァー上空から、北に向かって撮影。PHOTOGRAPH BY MICHAEL LIGHT 6/12ブラックロック砂漠にあるフロッグポンドの付近。2017年、更新世にラホンタン湖があったネヴァダ州ガーラック上空から、西に向かって撮影。PHOTOGRAPH BY MICHAEL LIGHT 7/12リシェルピークの斜面から流れ出る塩。2017年、更新世にボンネヴィル湖があったユタ州ウェンドヴァー上空から撮影。PHOTOGRAPH BY MICHAEL LIGHT 8/12更新世に存在したラホンタン湖の面影が残る、ラホンタン貯水池の付近。2018年にネヴァダ州シルヴァースプリングス上空から、南に向かって撮影。PHOTOGRAPH BY MICHAEL LIGHT 9/12塩の道と泥の盆地。2018年、更新世にボンネヴィル湖があったユタ州ウェンドヴァー上空から、東に向かって撮影。PHOTOGRAPH BY MICHAEL LIGHT 10/12塩の道。2017年、更新世にボンネヴィル湖があったユタ州ウェンドヴァー上空から、東に向かって撮影。PHOTOGRAPH BY MICHAEL LIGHT 11/12幾重にも重なる塩の道。2018年、更新世にボンネヴィル湖があったユタ州ウェンドヴァー上空から、西に向かって撮影。PHOTOGRAPH BY MICHAEL LIGHT 12/12更新世に存在したラホンタン湖の面影が残る、ラホンタン貯水池の外れ。2018年にネヴァダ州シルヴァースプリングス上空から、南西に向かって撮影。PHOTOGRAPH BY MICHAEL LIGHT

ネヴァダ州のブラックロック砂漠で毎年7日間にわたって開催される大規模なアートイヴェント「バーニングマン」は、世界最大の“Leave No Trace“(痕跡を残さない)なイヴェントであると自称している。

「「バーニングマン」が砂漠に残した、美しくも不思議な巨大模様の数々:“あるはずのない痕跡”を空から捉えた14の風景」の写真・リンク付きの記事はこちら

つまり、ネヴァダの砂漠に現れる仮設都市を形成するジオデシックドームや巨大なアヒル、スチームパンクな船などを解体したあとに、参加者たちが四つんばいになり、たばこの吸い殻や衣服のスパンコールが落ちていないか、アルカリ性の白い砂の上をくまなく探し回るということだ。

それでもやはり、ここに集った80,000人の痕跡はそこに残っている。「確かに10月の時点では、ブラックロック砂漠の表面にゴミは残っていません。けれども、実はそこには多くの“痕跡”が残されているのです」と、写真家のマイケル・ライトは語る。

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ライトが長きにわたって制作している航空写真シリーズ「Some Dry Space:An Inhabited West」の最新作『Lake Lahontan/Lake Bonneville』では、それらの痕跡がはっきりととらえられている。砂漠に彫られた巨大な仮設都市のグリッドや、ユタ州の塩原に刻まれたらせん状の車両の轍などが見てとれるのだ。

「巨大な空白」に現れる人間の痕跡

このような痕跡は、人類がここ数世紀にわたって地上に引いてきたさまざまな「線」を思い起こさせる。北米の大草原に切り開かれた馬車道や、アポロ計画のローバーが月のほこりかき分けて進んでできた道などだ。「空から見ると、とても生き生きとして美しい風景です」とライトは言う。

こうした風景は、シエラネヴァダ山脈とロッキー山脈西部の間に約20万平方マイル(約51万8,000平方キロメートル)にわたって広がる地域「グレートベースン」に広がっている。作家のウィリアム・L・フォックスは、そこを「わたしたちの大陸的な想像力をうがつ巨大な空白」と呼んでいる。

グレートベースンは大昔、渓流が更新世の多雨期湖(いちばん大きかったのがラホンタン湖とボンネヴィル湖)に流れ込んだときに形成された、唯一無二の環境だ。やがてこれらの湖は消え、干潟やヤマヨモギが生い茂る丘、そして奇妙な地形を遺した。

1800年代後期にグレートベースンを訪れたナチュラリストのジョン・ミューアは、「湖のように滑らかな大地がどこまでも広がり、輝く太陽の光のなかでさらに薄暗さを増していく」と、この土地を表現した。そこには「音を立てて流れる水も、緑の草原も、ひと休みできる日陰もない」ことを彼は知ったのだ。

ミューアは当時、銅の採掘作業によってその風景がすでに変えられていたことを嘆いていたが、当時の採掘規模はその後に行われる規模感とは比べれば大したものではなかった。現在、ユタ州のビンガム銅山には幅2.5マイル(約4km)、深さが山の高さほどある巨大な穴があけられている。さらにネヴァダ州の核実験場には、異次元の穴のような巨大なクレーターがあちこちにできている。

カーソンシンクの外れ。2018年、更新世にラホンタン湖があったネヴァダ州ファロン上空から、南西に向かって撮影。PHOTOGRAPH BY MICHAEL LIGHT

単独飛行で撮影される作品たち

鉱山の巨大な穴も、核実験場のクレーターも、ライトの以前の作品に登場している。それらに比べれば、『Lake Lahontan/Lake Bonneville』に収められている人間の痕跡は、凍った湖に刻まれたスケート靴の跡のように気まぐれで陽気な雰囲気だ。

ライトは2017〜18年にかけて8回グレートベースンへ飛び、自身が所有する単発の飛行機の操縦席から、これらの風景を撮影した。危険な行為に思えるが、心配はいらない。彼の大おじである外科医のリチャード・ライトは、かつて水上飛行機で世界の空を29,000マイル(約46,670km)飛んだことがあるし、彼の父も第二次世界大戦中にA-24爆撃機でヨーロッパ上空を舞っていた。

彼らの影響を受けて、ライトも14歳でグライダーによる単独飛行を開始した。この経験が空気の動きを学ぶうえで役立ったと、ライトは信じている。「エンジンのない航空機で飛び方を学ぶと、飛び方がしっかりと身につきます」と彼は語る。「機体がどうなるのか、ならないのかに対する理解が深まるんです」

ライトは早朝か夕方に飛び立つのが好きだという。低くて気だるい太陽が、風景に味わい深い起伏を与えてくれるからだ。とはいえ、その光が強烈であることには変わりない。湖底にある塩とアルカリ性の堆積物による光の反射率は高く、表面の模様の違いがわからないほどだ。

しかしそのうち、はっきりと刻まれた奇妙な模様やかたちが必然的に見えてくる。すると、ライトは左へ旋回を開始し、高度をゆっくりと下げる。フットボール場2個分よりも低い高度になることもしばしばだ。操縦席の窓のないほうに向けられていたハッセルブラッドのデジタルカメラを使うと、2時間のフライトで最大600枚の写真を撮影できる。ライトはその後、コントラストをデジタル処理で強調し、かすかな跡や線までも浮き彫りにしてみせるのだ。

それらの人間の活動が無意識のうちに生み出した魅惑的な副産物は、近年地球上で最も難攻不落だといえる風景にさえも進出している。ライトはこのように語っている。「本当に何もない場所にも、わたしたちの痕跡が残されているのです」

『Lake Lahontan/Lake Bonneville』は、Radius Booksから発売されている。

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