高速連写でも瞳AFで人物のピントを外さない!ソニーの「α7R III」は弱点を克服した真のスタンダードカメラだ

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ソニーは10月25日、デジタル一眼カメラ「α7R III(ILCE-7RM3)」を11月25日に発売することを発表した。

α7R IIIは、有効画素数約4240万画素の高画素モデル「α7R II(ILCE-7RM2)」と同じ画素数ながら、AF/AE追従最高秒間10コマの高速連写を可能にしたハイエンドモデルだ。

ソニーと言えば今年5月に電子シャッターでAF/AE追従最高秒間20コマの「α9(ILCE-9)」を発売したばかり。
ブラックアウトフリーのEVF(電子ビューファインダー)とトリミング耐性もある有効画素数約2420万画素により、ハイアマチュアやプロ用途としても高い評価を得ている。

ソニーは、今年に入って矢継ぎ早にハイエンドモデルを投入したことになる。
同じくハイエンドモデルであるニコン「D850」の需要が多く製造が追いつかないほどの品不足が続いてことからも市場ニーズが高まっており、そこに商機を見いだしているようだ。

と言うのも、現在はデジタルカメラの製品サイクルが2〜3年以上と長くなっている。
このことで他社のハイエンドモデルの動きが鈍化しているため、新製品の発売で買い替え需要を促進するのが狙いなのだ。

とは言え、α7R IIIは前モデルと同じ画素数、位相差AFセンサーの数やサイズも変わらない。このため、”デジタルカメラ”としてのスペックだけを見ると目新しい要素はない。

ではα7R IIIでは何が新しくなっているのだろうか?

まずは価格だ。
2015年発売のα7R IIは市場想定価格44万円前後だったが、α7R IIIは様々な新機能を盛り込んだ上で市場想定価格37万円前後としている。

前モデルより機能アップで価格はワンランクダウンしているのだ。
この価格設定は、9月発売のニコンD850よりも安く設定した戦略的な価格でもある。

製品特徴としては、
約4240万画素でありながら、秒間10コマの連写に対応している点だ。
秒間10コマといえば、一昔前のスポーツ向けのデジタル一眼レフカメラの連写速度にも相当する。
現行機種では、
・ニコン「D5」が秒間12コマ
・キヤノン「EOS-1D X Mark II」が秒間14コマ
でありそれに肉薄する連写速度となる。

とはいえ、α7R IIIの連写スポーツ撮影に特化した機能か? といえばそういうわけでもない。

秒間10コマで連写した場合、約7秒でバッファが一杯となり書き込み待ちで連写速度が極端に遅くなってしまうためシャッターチャンスを逃してしまうこともあるだろう。

この理由は、画素数が多すぎるためである。
α7R IIIが持つ大容量メモリーだけではなく、書き込み側のメディア速度次第となる。

しかしながら、前モデルよりも連写用のバッファが増えていることで、高画素でありながらストレスなく連続撮影が可能となったことは大きな進歩だ。
さらにSDカードのハイスピード規格「UHS-II」に対応したことで、書き込みの待ち時間を軽減できることも大きいプラス要素だ。




α7R IIIは、高画素でストレスなく撮影できる。
例えば演出として躍動感のある動きを見せる広告撮影や、ライブでの撮影も難なくこなすカメラとなったことは間違いない。

そして最新のα9のUI(ユーザーインターフェース)がα7R IIIにも採用されたことで、カメラとしての使い勝手も向上している。

とくに、「フレキシブルスポットAF」や動体を追従できる「拡張フレキシブルスポットAF」の位置指定がジョイスティックやタッチパネル操作で行えるようになった。
これまで抱えてきたAF設定に関するストレスがこれで解消されると言うわけだ。

ソニーがデジタルカメラで注力している「瞳AF」機能も、認識性能と追従性が向上している。
人物撮影はDMF(ダイレクトマニュアルフォーカス)によるAFでピント合わせしたのち、MFでピントを追い込むことで正確なピント合わせができる。
前述した動きのある人物撮影を行う場合は、AFに頼らざるを得ない。
そこで人物撮影では、瞳にピントを合わせる続けることが重要なポイントになる。

ここで瞳AF機能が役立つのだ。
手前に位置する瞳を検出し、動きに追従しながらピントを追い続けるこの機能は、人物撮影においてα7R IIIやα9を選ぶ最大の理由と言って良いだろう。

ハード的には、リレー記録および同時記録を可能とするデュアルスロットの採用や、外部フラッシュを利用するためのシンクロターミナル、USB 3.1 Gen 1対応のUSB Type-C端子、大容量バッテリーの採用など、コンパクトなボディに必要な機能が凝縮されている。

まだまだ歴史の浅いフルサイズミラーレス一眼だが、α7R IIIは道具としてカメラを捉え,
弱点を克服し、真のスタンダードカメラとなった。ソニーはスタンダードの次にどんな個性を持たせるのか、期待が高まる。


執筆  mi2_303