日本生命保険 東京中央総合支社 青山通り営業部 営業部長 中山 卓氏

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爽やかな笑顔が印象的な中山卓氏は、全国に約1500人いる日本生命の営業部長の中でもトップ営業として表彰され、社内にその名を轟かせる凄腕営業マンだ。中山氏は大手企業向けの保険や年金などを扱う法人営業担当として10年以上活躍後、6年前からは生命保険の個人営業部の部長として営業社員を統括。自らも中小企業経営者らの大口保険契約を次々と獲得してきた。

初めて企業訪問する際は、事前に先方の会社情報をチェックするのはもちろん、玄関から応接室に通される間も情報収集を怠らない。受付や通路の雰囲気や、掲示物など現場で感じる情報を大事にする。第一声は、「あの賞状は何のときのものなんですか?」と、そこで印象に残ったことから相手に話させる機会をつくる。

中山氏は、保険営業の仕事をするうえで一番重要なことは、「対面での信頼関係を築くこと」だと話す。いきなり商品説明や営業トークに入ることは絶対にしない。定番フレーズは「勉強させてください」「お話を伺わせてください」。「どんな社長さんも経験豊富。基本的には話を聞くより語りたい人が多い」。まずは相手の話を徹底的に聞くことから始める。

話題に困ったときの鉄板ネタは、創業の話、会社の沿革を尋ねること。「どの会社にも歴史あり。社長ともなればそこへの思い入れは一層強い」。とはいえ、あまりに話が長くなりそうな場合は、「10分だけお仕事させてください」と話を遮り、商品説明を最後に付け加える。

社長の話を聞きながら考えることは、「自分がどうやったらこの人の役に立てるか」の一点。どんな要望でも、聞き出したら、全力で役に立てるように行動する。金融知識を駆使した経営面の相談はもちろん、キャラクター企画から不動産活用まで、社内の情報や自身のネットワークを駆使して、尽力する。

さらに中山氏の極意は、一回の訪問で必ず次につながる「宿題」をつくること。その内容は、保険資料からお店のリストまで様々。それをネタに次回訪問のアポをとる。しかもその宿題を、相手の期待を上回るスピード感とクオリティで仕上げる。「資料だったら、相手がそのまま社内文書として使ってもらえるレベルまでに仕上げます」。手土産も、「社長ともなればお菓子やお酒はもらい慣れているから」あえて酒の肴や高級茶づけなど相手の好みに合わせて、少し珍しいものを選ぶことで印象付ける。

契約につなげるには、もちろん決定権を誰が握っているかを探っておき、キーパーソンを押さえておくことも重要だ。そのためには話の中に出てくる小さな情報も逃さない。こうした行動の積み重ねが、顧客との信頼関係を築き、契約につながっていく。ゴルフやテニスを一緒にする仲になった数年後に契約に至ることもあるという。相手の信頼を勝ち取るため、常に一段上を行くこまやかな心配りを欠かさない中山氏。仕事を超えて、人との出会いが楽しいと屈託なく話すその笑顔こそが最大の武器なのだろう。

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▼交渉テク
・相手が欲しがる“ネタ”を宿題にする
・“何でも屋”になって要望を解決する

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(ライター 井上 佐保子 撮影=菅原ヒロシ)