散らかった家が成長を妨げる! 子どもの力を引き出す「正しいお片づけ」とは

写真拡大

子どもと一緒に快適な空間をつくっていく

 リビングに宿題のプリントが散乱している、いくら片づけても、またすぐに子どもが散らかしてしまう……。子どもにとってはうれしい夏休みも、ママにとっては、ときに苦行のような時間に感じられることも。

「家の中の片づけは、お母さんだけの役割ではないですよ」

 そう話すのは、片づけ&掃除のプロの佐和田久美さん。

「お母さんが心の余裕をなくしてしまう大きな要因のひとつが、家の中が散らかっていること。そう、私は確信しています。イライラしながらひとりで片づけるより、親子で取り組むことで、家の中がキレイになるだけでなく、子どもの成長にもつながります」

 そこで重要なのは、お母さんも正しいお片づけ方法を理解することだと佐和田さん。

 家をキレイにする=掃除と思いがちですが、いくつかのステップを踏んで初めてキレイなおうちになるのだそう。

「まずはものを“整理収納”し、それから“片づけ”をし、さらに“日々の掃除”をすることで初めて快適な住空間を保つことができるんです。私の経験上、8割の家は整理収納ができておらず、片づいていません。なぜかというと、ものが多いからです。使っているものと使えるけれどいらないものの差が曖昧だと、ものは増える一方なんです」

 つまり、“使っているもの”と“使えるけれどいらないもの”の区別を明確にすることがキレイなおうちへの第一歩ということ。

「例えば、子どものおもちゃのうち、現在も遊んでいるものは“使っているもの”です。一方でいくら使える状態だったとしても、小学生ともなれば、でんでん太鼓は使いませんよね。この“いる”“いらない”ものを一緒に判断していくことも子どもの成長につながります。夏休みは、お子さんと一緒にじっくりお片づけができる絶好の機会だと思います」

 お片づけの工程だけでなく、スッキリと片づいた環境は、子どもの能力もグングン伸ばします。今年の夏休みは、子どもと一緒にお片づけを楽しみましょう!

部屋が片づくと子どもの表情がみるみる変わる!

 これまで3000件の家庭を訪問し、キレイで快適な空間に導いてきた佐和田さん。家の中が片づくことで、子どもが変わっていく様子を何度も目の当たりにしているそう。

「お客様の中には、5〜6年のお付き合いになるお宅も少なくないんです。かなり散らかった家の場合は、時間をかけて少しずつ片づけていくのですが、家の中がキレイになるにつれて、はじめは無表情だった子が明るくなったり、きちんとあいさつができるようになったりと、お子さんがどんどんいい方向に変わっていきます。そうした変化を肌で感じるたびに、住環境が子どもに与える影響の大きさを痛感しています」

 また、子どもの将来につながるような変化もみられるといいます。

「きちんと片づけグセがついているお子さんは、目標とする学校に中学受験で合格したり、勉強はもちろんスポーツでもいい結果を残していたりと、しっかりとしたビジョンを持っていると感じます。おそらく、片づけを通して自分のやりたいことを明確にする精神が培われているのでしょう。エネルギーの注ぎ方が自分でわかっているからこそ、目標に向かってまっすぐに進むことができているのだと思います」

 持ち前の才能や好奇心を着実に伸ばしていくためにも、親がしっかりと子どもに片づけを教えることはとても大切なことなのです。

家の環境で子どもは変わる

■片づけをすると「判断力が養える」

 使うものと使わないものがごちゃまぜになった環境で暮らしていると、自分にとって大切なものがわからなくなってしまいます。今、必要なものは何か? 今、大事なものは何か? この判断は簡単そうでとても難しいもの。必要なものや大切なものを日々考え、把握することは、判断力を育てるよい訓練になります。

■片づけをすると「行動力が育つ」

 必要なものといらないものを日々選別し、自分の手で捨てる。この繰り返しによって、行動力が身につきます。「今やるべきこと」と「今、必要なもの」など、明確なビジョンが見えていれば次の行動に移りやすくなるのです。「判断力」や「行動力」を小さいうちから育てれば、将来、社会に出たときに強力な武器になるはずです。

■片づけをすると「自立心が育つ」

 日々、片づけるクセをつけることによって、子どもは次第に「後回しでいいこと」、「今の自分のためにやるべきこと」、「未来の自分のためにやるべきこと」など、自分で物事の優先順位を考えられるようになり、自立心が育ちます。また、よく使うものや大事なものがわかれば、子どもはそれらの置き場を自発的に考えるようになり、思考も効率的になるのです。

■片づいた家なら「勉強する機会が増える」

 ものの収納場所を決めて家の中をいつもキレイに保っていれば、子どもはいつでもどこでも、始めたいときに勉強することができます。自室よりもリビングのテーブルのほうが勉強に集中できるのであれば、リビングに学習道具の一時置き場を用意してあげて、いつでも取り組める環境を用意してあげましょう。

 ただし、勉強するたびに部屋が散らかっては本末転倒です。小さな箱などでもかまいませんから、簡単に自分で片づけることができる一時置き場を必ずつくってあげましょう。

■片づいた家なら「集中力がつく」

 例えば、子どもが絵を描きたいと思ったとき、キレイに片づいている環境なら目の前の紙に集中して絵を描くことができます。

 一方、家の中が散らかっていると、絵を描いている途中でおもちゃに目がいき、絵を放り出しておもちゃ遊びを始めてしまうといった事態にもなりかねません。これはご飯を食べているときもしかり。目の前に別のものが現れれば、意識が向いてしまうのは当然。子どもの集中力を高めるためにもスッキリとした空間を維持することは大切です。

<教えてくれたひと>
佐和田久美さん◎子どもたちとママに笑顔になってもらいたいという願いから2010年に株式会社ワンズコピーを設立。これまでのべ3000件の家庭をキレイにしてきた片づけ&掃除のプロ。著書に『部屋を片づけるだけで子どもはぐんぐん伸びる!』など。