昭和の痛快ラブコメディー『悦っちゃん』でユースケがバディと認める“天才子役”
ユースケ・サンタマリアがNHK連ドラ初主演。土曜時代ドラマ『悦ちゃん』(NHK総合 土曜夜6時5分〜)で、妻を亡くし、しみったれた“男やもめ”を演じている。原作は、獅子文六の同名小説。過去に何度か映像化されているが現在、視聴できるものは少ない。今作では主人公の年齢を変更するなど、現代にふさわしいアレンジを加えている。
「ユースケさんは、いつも“演じていて気持ちいい”と言っています。サスペンスなどで、ショッキングな役が続いていたので“こんなに気持ちのいい男の役は久しぶり”と。現場も和やかで、本当に楽しそうに演じています」
と話すのは、朝ドラ『ゲゲゲの女房』『とと姉ちゃん』などを手がけた落合将チーフプロデューサー。
物語の舞台は、昭和10年の東京。売れない作詞家の“碌(ろく)さん”こと柳碌太郎(ユースケ)は、妻と死別した後、しみったれた暮らしをしていた。ひとり娘の“悦ちゃん”こと悦子(平尾菜々花)は、そんな碌さんにピリッとしてほしく、自分も新しいママが欲しい。そこで、おしゃまな悦ちゃんは、碌さんの嫁探しに奔走する。
「災害が頻繁に起き、ネットでは何か起こると、すぐ犯人探しをするような息苦しい時代です。だからこそ、気持ちのいい人たちが、気持ちよく恋をしたり、生きたりする作品を見たいと思ったのです。
昭和初期というと、戦争に向かっていくだけの時代と思われがちですが、映画や盛り場もにぎわっていました。ラジオはあるし、庶民はパンを食べ、コーヒーも飲む。現代と地続きに考えることのできる時代でもあります」(落合CP、以下同じ)
碌さんは、悦ちゃんのアイデアもあって、デパートガールの鏡子(門脇麦)と出会い、姉(峯村リエ)にすすめられた美人令嬢・カオル(石田ニコル)との見合いをすることに。鏡子とカオルの恋のさやあてに、昔なじみのウグイス芸者(安藤玉恵)も加わって、碌さんの嫁探しはどうなる?
碌さんのキャスティングについては、
「映画『男はつらいよ』の寅さん的な存在感があって、コメディーも得意、イケメン全盛の時代にものすごいイケメンではない(笑)ということで、ユースケさんだと考えました。もともとコメディーの才能のある方なので、アドリブをたくさん入れてくださり、現場も助けられています」
ユースケがバディと認める“天才子役”
悦ちゃん役の平尾は、『ぼんくら2』などに出演し、天才子役として話題に。子役は、大人よりもNGが多いといわれるが、大人がNGを出しても平尾は出さないという。
「非常に安定感があります。大人がアドリブを仕掛けて毎回、違ったお芝居になっても、同じ演技をしています」
平尾の落ち着きぶりに太鼓判を押す、家富未央プロデューサーは、
「ふだんは子どもっぽいところもありますが、スタジオに入ると頼りがいがあります。ユースケさんも“悦ちゃんをとても頼りにしている。娘というかバディとして完全に信頼しています”と、言っていました。
そして、碌さん親子と住み込みのばあや(大島蓉子)との絶妙なかけ合い芝居にもご注目ください!」
令嬢・カオルの豪華衣装も必見だ。碌さんの見合い相手のカオルは超絶美人。大富豪のご令嬢だから、衣装もとってもビューティフルなのだ。
「当初、用意した衣装が地味な感じだったので、監督の意向もあり、すべて仕立てることにしました。1話の中でも3着くらい出てきますし、同じ服は2度と着せていません。石田ニコルさんだからこそ着こなせる華やかな衣装もお楽しみください」(落合CP)
主題歌が物語の小道具になっている
高齢者にとっては、ちょっと懐かしく、若い世代にはレトロ感がシックな今作。ジャズっぽいBGMもおしゃれ感を醸し出しているが、注目ポイントは、ラストにかかる、オリジナルの主題歌『パパママソング』。出演者がみんなで歌うミュージカル調になっている。
「原作同様、この曲がドラマ全編にフィーチャーされていきます。『パパママソング』をめぐって泣いたり笑ったり。今後は、碌さんがこの曲を作りだしていく物語、この曲から生まれていく物語を描いています。エンディングの曲が小道具になっているというのが今作の醍醐味といえます」
昭和のドタバタ感が楽しく、携帯電話のない時代の恋は、懐かしかったり、新鮮だったりする。
「みんなが、それぞれ恋をしていく今作は、恋愛讃歌になっています。揉め事や自分が傷つくことを恐れ、直接しゃべらずにメールでノックする現代ですが、碌さんの時代は、手紙くらいしか通信手段がない。だから、会いに行くんです。直接的な人間の触れ合い、特に恋愛は裸と裸のぶつかり合いがいいところです。ご覧になって、心の中にある恋をする気持ちをかきたてていただけたらいいですね」