明徳義塾vs松山聖陵
延長11回裏、一死三塁から途中出場の6番・佐々木 仁(3年・右翼手・右投右打・178センチ64キロ・福南ボーイズ<福岡>出身)による左犠飛で生還した4番・谷合 悠斗(2年・左翼手・右投右打・179センチ81キロ・岡山メッツ<岡山・ヤングリーグ>出身)は渾身の笑顔。終了後の挨拶にベンチを飛び出す選手たちも笑顔、笑顔。秋春連続四国大会優勝に「負けるより、勝つに越したことはないからね」と話す馬淵 史郎監督にも安堵の笑顔があふれる。
が、しかし。それは明徳義塾を古くから知る人間にとっては「違和感」を禁じ得ないものであった。
前回、秋春連続四国大会を制した2015年春決勝は絶対エース・岸 潤一郎(現:拓殖大3年)の一発などで松田 知希(現:JR四国)―多田 大輔(現:広島東洋カープ)のバッテリーや遊撃手・平間 隼人(現:徳島インディゴソックス)などタレント集団だった鳴門渦潮に快勝。それでも、けん制死の2人はすぐにベンチに下げられ、選手たちには閉会式が終わってもひとかけらの笑顔もなかった。
それから3年、記録に残るだけでも失策2つ、走塁ミス2つ。他にも「内野のみんなにはあらかじめ守備位置の取り方については話をしていたが……。攻撃も選球していても最後にボール球を振ってしまっていた」と、この日は遊撃手に入った近本 攻生(3年・右投右打・175センチ67キロ・生光学園中<徳島・ヤングリーグ>出身)も分析したように、記録に残らないミスも多数。彼らの試合内容は今井 涼介(3年・右投右打・171センチ66キロ・八尾ボーイズ<大阪>出身)の負傷欠場を差し引いたとしても、当時よりはるかに「らしくない」ものだったと言わざるをえない。
これに対し、実力は明らかに明徳義塾に劣っていても、攻守にチームとして攻略する意図が随所に見えた松山聖陵。9回裏、自らのミスで目前で勝ちを逃し、号泣する選手たちを見やりながら「投手陣は球数を考慮して継投にしたし、違和感のあった野手2人もすぐに交代させた」(荷川取 秀明監督)夏を見据えた健康管理も考慮に入れた采配も含め、敗れてなお評価できるものを魅せた。
ということは彼らが喜んだ要因は、そんな松山聖陵に3回から北本 佑斗(3年・左投左打・170センチ68キロ・大阪泉北ボーイズ<大阪>出身)を投入してまで勝ちにこだわった結果、北本の9回173球14安打5失点(自責点2)力投が実ったからなのか?それとも、主力の今井を1人を欠いてもサブ組の奮起によって勝利につなげたことなのか?それとも、その他の要因があるのか?
この20年、四国の高校野球を全国レベルに引き上げるべく先頭に立ってけん引してきた明徳義塾が、来る夏までにその要因をもし見つけられず、改善できないとしたならば……。「危機的」が近年叫ばれる四国の高校野球は、別の言葉によって針を進めなければいけなくなる。
(取材・写真=寺下 友徳)
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