社vs明石商
ここまで6試合で平均得点9.6得点を奪っている社。しかも投手力が高い関西学院に8点、神港学園に15得点なのだから、相当打撃力は高い。その打撃力の高さを明石商相手にも発揮した。
まず2回裏、一死三塁から6番佐竹一摩の犠飛で先制すると、7番宮内竜聖(3年)が安打で出塁すると、8番藤原佑真(3年)が右中間を真っ二つに破る適時二塁打で2点目を奪う。
さらに5回表には今大会打撃好調の高田快飛が代わった明石商の近藤から二塁打を打ち、4番中戸の適時打で3対0と追加点を奪った。
社のエース・佐名川拓臣(3年)は、右スリークォーターから常時120キロ後半〜130キロ前半の速球、スライダー、カーブを巧みに投げ分ける好右腕。中背のため、あまり角度がなく、被安打を打たれることも多い。だが良いのは、ピンチになってからの粘り強さで、じっくりと間合いを取って投げることができる投手。要所で、切れのある変化球が低めに集まり、明石商打線を抑えることができていた。
3対0で持ちこたえた9回表、社は二死満塁のチャンスを作り先制の犠飛を打った佐竹が走者一掃の適時二塁打を打ち、6対0。試合を決定付けた。佐名川は7安打を打たれながらも、要所を締めて完封勝利。決勝進出を決めた。
今年の社はとにかく打者陣の能力が高い。その中でも3番高田快飛の潜在能力の高さは必見だ。スクエアスタンスで構え、仕掛けはやや遅く、ボールを手元まで引き付けて打つスタイル。ややスイングが外回りだが、それでも抜群のヘッドスピードでボールを捉え、鋭い打球を連発する。身体能力も非常に高い選手で、次のステージでも活躍が期待できる選手だ。
4番を打つ中戸啓悟(3年)も4打数3安打を打つ活躍。スクエアスタンスで構える姿は雰囲気があり、しっかりと自分の間合いでボールを打つことができる選手で、そしてスイングの鋭さ、打球の鋭さもハイレベルで、右投手、左投手問わずに打ち返すことができる。また一塁守備を見ると巧みなグラブ捌きが光る。攻守ともにレベルが高い一塁手だ。
これで2年ぶりの決勝進出。報徳学園相手にどんな戦いを見せるのか、注目が集まる。
敗れた明石商だが、選手のレベルは高い。まず先発の福谷航太(2年・右投げ左打ち)は兵庫飾磨クラブの2年生右腕。昨年卒業した山崎 伊織を思い出す長身右腕で、素質は抜群。長身ながら上半身、下半身のバランスがとれており、内回りのテイクバックから繰り出すストレートは常時130キロ〜135キロ前後を計測。ただストレートは強さ、110キロ前後のスライダーも切れが欠けており、社クラスの打線となるとまだまだ厳しい。そのためにはもう少し強い腕の振りができるようになりたいところ。肉体的な強化、さらに体の使い方を覚え込んでいけば、140キロも十分に到達可能な投手で、ぜひドラフト候補と注目されるぐらいになってほしい。
エース左腕の近藤聖哉(3年)は、130キロ前後の速球、切れのあるスライダー、カーブを小気味よく投げる投手で、完成度は高く、全体的にまとまっているので、安定したピッチングが期待できる。夏へ向けてボールの強さを求めていきたいところ。
9回に3失点を喫した奥西 勇太(3年)は、コンスタントに135キロ前後を計測しているように馬力がある投手ではあるが、100キロ前後のカーブのみで、投球の幅が狭い。ストレートとカーブ以外で、決め球となる変化球を習得し、ストレートも、さらにスピードアップを実現したい。
野手では1番ライトの後藤 壮人(3年・右投げ左打ち)に注目。バットコントロールが秀でた左打者で、当てる能力が高い。そして俊足で、ライトから強肩を披露しており、常にバックホームではワンバウンド送球だ。ただ器用が故に、軸がぶれてしまい、当てる打撃になることが多い。しっかりとトップを形成してから、体の軸がぶれることなくレベルスイングを徹底させて、その上で、パワーが身につくと、より注目を浴びる存在となりそうだ。
(文・写真=河嶋 宗一)
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